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5-77 二パーティー合同探索、第九階層

 九層の景色が視界に入り、床に足をつけたその瞬間──


「早速来たぞ!」


 近くの......いや、そこらじゅうの水溜まりが人の形へ変化し、私たちに敵意を向け始める。


 それに対応するために刀を抜くが......


「よし、走るぞ!」

「え?」


 予想外の命令が降りる。


「そりゃそうだろ?だってあいつらの体は水でできてる、つまりいくら攻撃してもすり抜けちまうんだ。この数とまともにやり合っても押し負ける。ってことで戦闘は最小限に抑える。ほら、グダグダしてっと蜂の巣にされるぞ」


 カイさんに背中を押され仕方なく走り出す。


「アーノルド!壁を頼む!」

「あまり得意ではないのですが......仕方ないですね。《小枝の障壁(ブランチスプリット)》」


 アーノルドさんが魔術を唱え、私たちを攻撃から守るように植物の壁が生成される。


 木属性の魔術なんて使えたんだ......魔法陣が見えなかったし多分先天属性なんだろう。

 ただあまり得意じゃないって言ってたしやっぱり本職は新生属性なんだろうな。


「私も手伝います!《氷の城壁(アイシクルキャッスル)》!」


 《空間把握(グラスプ)》で視えた攻撃魔術の発生に合わせて氷の壁を生成し、最小限の力で攻撃を防いでいく。


「おや、お上手ですね。任せてもいいですか?」

「はい!」

「では。《金剛体躯(ストレンジトランク)》!」


 アーノルドさんは防御を私に任せ、身体強化に集中する。

 強化した脚力で走り抜けるつもりなんだろう。


 ただ、この先も水、水精霊(ウンディーネ)で一杯だ。

 防げないことはないが長時間走り続けるとなると完璧に防げる自信はない。


 ただ、こんな戦い方を選んだ以上目的地があるはずだ。


「カイさん!これとこ目指してるんですか!?」

「そう急ぐなよ!この速度ならすぐに着く!」


 仕方ない、カイさんに従ってこのまま走るしかないか。


 《空間把握(グラスプ)》で攻撃の起こりを察知し、それを的確に氷で叩き落としていく。


 そうして走り続けること約十分──


「着いたぞ!」


 通路を走り抜け、大広間に出たところで足を止める。


「ここが目的地だ!とりあえず周りの水精霊(ウンディーネ)どもを片付けるぞ!レイチェル、左半分頼めるか?」

「はい!」


 ここに来るまでに水精霊(ウンディーネ)の対策は考えてある。十分戦えるはずだ。

 それに、ここが目的地だと言ってたし、真正面からの戦闘を選んだってことはここに何かあるってことだろう。


 なら、さっさと片付けてその何かを調べよう。


「マルク!あれやるよ!」

「ああ!」


 持ち場向かって走り出し、カイさん達から離れたのを確認してから大技の詠唱を始める。


「『それは霜獄の果て』『罪人を縛り凍えさせる冬の監獄』」

「『今創りだすは霧の都』『巡り巡る水の果て』」


 五年ぶりにこの詠唱を唱える。


 大技の代わりにその姿は無防備で、隙だらけ。

 けど、私達には仲間がいる。


「ハッ──!」

「《緋炎剣(レーヴァテイン)》!」


 降りかかる攻撃をベインが叩き落とし、ヒナが蒸発させて私達に届く前に止めてくれる。


 ぶっつけ本番なのに合わせてくれた。


 おかげで構築に集中できる。


「『罪人の終わりは』『共鳴する』!」

「『水の終着は』『共鳴する』!」


 ある種の懐かしさと、あの頃からの成長を感じながら、名前を告げる。


「「共術《霧霜の終着(フォグロフロスト)》!」」


 マルクと共に、《霜獄の領域フロストウィントフィールド》より何倍も濃密な冷気で場を満たす。


 一秒で床に満ちた水が凍り、二秒で精霊の体が凍り、三秒でその場の全ての動きが凍って静止する。


「二人とも合わせてくれてありがとう」

「これが俺の役割だからな」

「ここまで暇だったしこれくらいしないとね」

「ありがとう……よし、あとは砕くだけだね。手伝って」

「わかった」

「ああ」

「了解!」


 氷像と化した十数体の水精霊(ウンディーネ)を剣の鞘で突き壊していく。


「これで最後……っと」


 最後の一体を砕き、その魔石を回収する。


「カイさんの方は…、まだみたいだね。加勢しよう。たださっきみたいにやったらカイさん達巻き込むから自力で倒せる私と、水精霊(ウンディーネ)を自力で倒せる人……」

「無理」

「俺も」

「は〜い!」


 マルクとベインは拒否しヒナが手を挙げる。


「火と水って相性悪そうだけど大丈夫?」

「まっかせて!全部蒸発させるよ!」

「じゃあ大丈夫か。よし、行こう」

「了解!」


 二人で円状の大広間の逆側に走り出す。


「加勢します!」

「レイチェル!?早くねぇか!?」

「相性が良かったんです!《氷結(フリーズ)》!」


 説明を省くように近くにいた水精霊(ウンディーネ)を凍らせてみせる。


「凍らせて……なるほどな、そりゃ相性いいわ」

「このまま凍らせていきます!」

「助かる!」


 邪魔にならない程度に《霜獄の領域フロストウィントフィールド》を展開し、接触することで凍らせていく。


 凍らせたそばからナズナさんが射抜いて壊し、ベンさんとカイさんが凍らせる前の水精霊(ウンディーネ)

 押し留めつつ数を減らしていく。


「これで最後──おらぁッ!」


 最後の一匹をカイさんの槍が裂き、魔石に変える。


 あれ?最後のまだ凍らせてなかったはず……

 物理的な攻撃はすりぬけたうえ床の水を吸収して再生してたはずなんだけど……


「カイさん最後のどうやって倒したんですか?」

「ん?あああれはこの毒のおかげだな。魔力の動きを阻害するから武器に塗っとけばああいう奴にも効くようになる」

「そんなのあるんですね……」

「ちょっと珍しいやつでな。あんまり数がないから道中の敵とは戦いたくなかったんだ」

「そうだったんですね……」

「ま、んなことは置いといて、あれが今回の目的だ。あれが十層に繋がる階段の手がかりになるって言われてる」


 中央の台座を指差し、そう話す。


「ちょっと見てきます」

「おう」


 台座に近寄り、《空間把握(グラスプ)》をフル活用してその特徴を捉える。



 十五年かけて培ったこの世界の知識をもって、その謎と向き合う。

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