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5-69 再戦

「それじゃ、また明日ね」

「ああ、またまた明日」

「また明日」

「また明日ね〜」


 午後八時より少し前で解散する。

 必要な情報は渡せたし、作戦もしっかり決まった。だから長居しても邪魔なだけだしな。


 三人と別れ、部屋に戻る。

 そして体を軽く拭き、寝間着に着替えベッドに横になる。


 この世界は機械工業が発展しておらず夜は暗い。

 だから平均的な就寝時間は早く起床時間は早い。

 前世手はありえないくらい早い時間だがこの世界では当たり前なのだ。


 まあそんなこと関係なく明日は今日行けなかった分まで奥に進む。

 そのためにも英気を養うため、眠たくなかろうとさっさと寝ないといけないのだ。


 迷宮を攻略するというやる気と好奇心を込め、意識を暗闇の中に落としていく。



















「よし……準備はいい?」

「ああ」

「いつでも」

「バッチリだよ!」

「それじゃ、行こう」


 この光景ももう慣れたものだ。

 いつもと同じように覚悟を決め、暗闇の向こうに向けて第一歩を踏み出す。


 その足取りも的確かつ迅速に、初めて来たときとは比べ物にならないスピードを出し、まるで最速攻略(タイムアタック)をしているかのような手際で迷宮を駆け降りる。


 二歩分の歩幅を一歩で、三歩分を、四歩分を、五歩分の距離を一歩のうちに駆け、十年の歳月によって培われ鍛えられ、『ステータス』によって増幅されたその肉体は慣性を無視しているかのような挙動をとり、設定する前に術を構築し、構え、接敵するのと同時に放ち、足を止めることなく障害物を取り除きながら走り続ける。


 息を切らさず、余分な力を使わず、障害物に時間を取られることなく駆けること約一時間。


「とうちゃ〜く!」


 私たちがたどり着いた最深層である第七層の一歩手前、七層へ続く階段の前までたどり着く。


「はぁ……まあまあ速かったんじゃないか?」

「そうだね……探索開始から大体一時間くらいだから結構早く着いたね」

「そんなに早く着いたのか……」

「この消耗で探索時間を確保できるなら次からもやってみていいかもね」

「だね〜ってそれより早くこれ試してみようよ!」


 急かすように次のことを考える私たちの会話をヒナが遮り、手のひらの上で魔導榴弾(マジックグレネード)を転がす。


「ん〜……まあそうだね。今日は魔導榴弾(マジックグレネード)が効くのかどうかと七層の探索が目的だしね。考えるのはあとでもできるし進もっか」

「わかった」

「了解」

「了解!」


 装備を軽く整え、石段を下る。

 そして七層の床に足をつけたのと同時に──


「来たね……今回は二匹かな?」

「俺もそう感じてる」

「俺は相変わらず足音も何も聴き取れん」

「風属性の魔術か何かで足音消してるのかもね。......っと、来るよ!」


 私の号令と同時に二匹の天風狼(スコル)が現れ、咆哮が響き渡る。


 しかし──


「──《広域・破壊風砲ワイド・ワインドカノン》!」


 既に構築を終えていたベインが相殺する。


「行け!」

「ありがとう!《霜獄の領域フロストウィントフィールド》!」


 七層の空間を冷気で満たし、飛び回る翠緑の狼を凍えさせていく。

 体温を奪い、気温を下げ、毛先から凍らせ、機動力を奪う。

 その身体能力を補うために身につけた機動力を、その戦い方を無効化していく。


「グ、ルゥゥウウウウアァァァア!!」


 苦し紛れの咆哮と共に突撃してくるが──


「《広域・破壊風砲ワイド・ワインドカノン》!」

「《氷結拘束(フロストバインド)》」


 咆哮はベインが相殺し、やぶれかぶれの特攻は私が止める。

 速度の乗ってない特攻くらいなら簡単に止められる。


「《緋炎剣(レーヴァテイン)》!」


 縛り付けた一匹をヒナが焼き切り、首を落とす。


 そして時間差を付けて二匹目が突貫してくるが──


「《大地隆起(アースエッジ)》!」


 大地が狼の喉元を突き上げ、それをさらにヒナが焼き切る。


「臨機応変に対応出来てるね。ちょっと作戦から外れたから不安だったけど......」

「まあ役割が決まってる分動きやすいしな。それにレイの魔術のおかげでやりやすい……っと、来るぞ」

「うん。ここからが本番だね……構えて」

「ああ」

「了解」

「了解!いつでもいけるよ!」


 魔力を込めた魔導榴弾(マジックグレネード)を持ち、精霊が出てくるのを待ち構える。


 効くかどうかは分からない、効いたとして決め手になるほどの火力があるかも分からない。

 だからここからは命をかけての実験だ。



 自分の作品が効くかどうか、好奇心と共に魔力を込め、狼の死体を前に待ち構える。

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