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5-67 魔道具作成

「んぅ……もう十二時か……」


 あれからベッドで惰眠をむさぼること約七時間、とっくの昔にお日様は登ったどころか真上まで来ていた。


「……お腹減ったな」


 独白が零れる。

 思い返せば夜食に保存食をつまんだ以外何も口にしていない。


 なんて不健康な生活なんだと自分を心のなかで叱責しながらベッドから降り、立ち上がる。


 腕を頭より上に上げ伸びをし、血を全身に巡らせる。

 軽い貧血のような症状でて視界が端から狭まり、ふらつくが寝不足と何も食べてないせいだろう。


 そんな症状が収まってから拡張収納(マジックバッグ)を掴み、中から着替えと手鏡と櫛を取り出す。

 何をするにしても身だしなみを整えないとだからな。


 皺だらけの服から着替え、ボサボサの頭を梳かしていく。


「よし……」


 最低限人前に出ても大丈夫な見た目になったはずだ。


 今日は私のせいで迷宮に行けなかった。だからその償いってわけじゃないけど私にできることを全力でしよう。

 もちろん、無理をしない範囲で。


 そう決めた瞬間、腹からぐぅ〜と音が鳴る。

 ……第一歩目は腹ごしらえからかな。


















「はぁ〜……ごちそうさまでした」


 昼食を摂り終え、会計を済ませる。


 ちょっと食べすぎた気がしなくもないが……まあその分動けばいいだけか。


 とりあえず動けるだけの土台は整ったし本格的に動き始めるとしよう。


 酒場を出て歩き出す。


 まず初めに目指すのは鍛冶場、頼んでいたものを受け取りに向かう。


「失礼しま〜す!」


 一言かけてから分厚い扉を開ける。

 扉が開くのと同時に中に籠もっていた熱気が溢れ、熱風となって突風が吹く。


「おお、来たか」

「はい、昨日お願いしたものできてますか?」

「おうよ、バッチリできてるぜ!ほらよ」

「おお……ありがとうございます」

「お代はこれな。んで、こんなのどうやって使うんだ?」


 領収書と一緒に依頼していた品が手渡される。

 形状は前世のガチャガチャのカプセルに近く、金属製でありながらかなり軽い。


「ここからまた加工するんです。あ、お金です」

「おう、まいどあり。んで加工するって言うとまた魔道具にするのか?」

「はい」

「今度は何を入れるんだ?」

「魔力放出の術式ですね」

「魔力放出?お前の刀にも入ってるやつか?」

「はい」

「何に使うんだそれ」

「七層に出てくる精霊種の対策ですね」

「精霊?これが対策になるのか?」

「私の予想が正しければ」


 昨日確認したことが正しければ精霊種の体は魔力で構成されてる。

 なら、これから作る魔道具は特効になるはずだ。


「そうか、ならいつも通りそこらへんの机は自由に使っていいから好きにやれ」

「ありがとうございます」


 これまでと同じように机を借り、昨日死に物狂いで作り上げたノートと彫刻刀を広げ、作ってもらった金属球を手に取る。


 カプセルの内側に昨日書き上げた術式を魔力とともに刻み込んでいく。


 あえてカプセル状にしてもらったのは軽量化以外にも目的がある。

 内側と外側で違う術式を描き込みたいのだ。

 ちゃんと機能するかどうかは私の腕次第だが……そこは何とかするしかない。


 昨日の夜、四苦八苦しながら作り上げたノートと己の頭脳を頼りに彫刻刀の刃を奔らせる。


 道中滴り落ちた汗でノートの字が滲んで肝が冷えたり、うっかりカプセルを貫通しそうになってかなり危なっかしい作業になった。

 けど、作業を始めてから一時間ほどで最初の一つが完成する。


「ふぅ……」

「できたか?」

「はい、まだ一つだけですけど」

「見てもいいか?」

「はい」


 完成品を手渡す。

 彫りが刻まれた金属球をまじまじと見つめるが……


「駄目だな、俺にはよくわからん。こりゃどういう効果があるんだ?」

「試してみますか?」

「いいのか?戦いに使うものなら室内で使うとまずいんじゃないか?」

「多分大丈夫だと思います。込める属性は……そうですね、氷にしましょう。ちょっと近寄ってください」

「お、おう」


 何かあったとき守らないといけないので少し近寄ってもらう。

 それにこれは投擲(グレネード)型の魔道具、この狭いスペースだと近寄ってもらわないとダグラスさんに当てかねない。


 込める属性は氷、規模と威力は抑えめで、起爆するのは三秒後に設定。


「いきますよ」

「おう」


 金属球を転がし、三メートルほど離れたところで回転を止める。

 そして静止した直後に──


「っ──!」

「うおっ!?」


 大量の冷気が吹き出す。


「成功、ですね」

「今のがこいつの効果なのか?」

「はい、効果としては込めた属性の魔力を勢いよく、決められた時間の後に放出するだけです」

「なるほど……使い方によっちゃ色々できる爆弾みたいなもんか……」

「そんな感じですね」

「はぁ〜……こりゃまた凄いもん作ったな」

「ありがとうございます。あ、それじゃあそろそろ作業に戻りますね。あと四つ作らなきゃいけないので」

「あ、すまん邪魔したな。それじゃ、頑張れよ」

「はい!」


 効果の確認もできたしこれで心置きなく作業を進められる。



 あとはこれがしっかり効くことを祈るしかないな。

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