2-4 寮生活
私が時間を指摘したためか十分前には食堂に着いた。
「三人とも十分前行動ができて凄いですね!これからも続けましょう」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます?」
マルクはさすが貴族出身というべきか子供ながら堂に入った立ち振舞だ。
ヒナは…多分なんで褒められたのかも分かってないかもな。
「あそこにトレーと皿があります。バイキング形式なので好きな料理を取ってきてください。全員集まったらみんなで食べましょう」
ミシェルに促され三人とも料理を取りに行く。
結構種類多いな…何食べよう。
何を食べるか考えながら料理に目を通してるうちにいくつか懐かしい料理を見つけた。
白米、味噌汁、卵焼き、この世界ではあまり普及してない日本食だ。
郷愁を覚えながら皿に日本食を盛り付けていく。
五分ほどたった辺りで全員揃った。
「「「「いただきます」」」」
各々選んできたものを食べ始める。
マルクはバランスよく肉や野菜が盛り付けられた健康的な食事だ。
ミシェルは少食なのか食べる量自体が少ない。
しかし取ってきたもののバランスは良い。
マルクとミシェルは食べるものに気を使っているのだろう。
ヒナは…どこを見ても肉、肉、肉。好きなものだけ取ってきたって感じだ。
しかも量がおかしい。
しかし以外だったのは白米をチョイスしたことだ。
まあ聞いてみたら「こっちのほうがお肉と食べると美味しいから」と返ってきたのだが。
特に話すことも無いし、マナーも良くないので黙々と食べ進める。
最初に少食?なミシェルが食べ終え、次に私とマルクが同着ぐらいで食べ終える。
まあ予想できたが最後まで食べていたのはヒナだった。
しかしまあよく食べるな。
前世でも胸焼けしそうな量を子供の体でバクバク食べてる。よく喉に詰まらせないな。
そして美味そうに食べる。
「っぷはぁ!」
ヒナが食べ終わりコップの水を飲み干した。
「「「「ご馳走様でした」」」」
食べ終えたあとは各々解散の流れになったが……ミシェル以外は戻る場所が同じなのでミシェルと別れるだけになった。
三人揃って寮の部屋に戻る廊下を歩く。
「おいしかったね!」
「ああ、美味かった。というかレイチェルはなんだか不思議な料理を食べてたな。好きなのか?」
「うん。故郷の味なんだ」
「そうなのか。機会があったら俺も食べてみるか」
夕食の感想を言いながら歩く。
美味しいのは間違いないんだがやっぱり母さんは料理が上手かったんだなと思う。
「明日は確か8時10分には着席だったな」
「そうだね」
「どうする?部屋に戻ってから何かすることあるか?」
「うーん、お風呂に入る?」
「そうだな、シャワーが付いてたし戻ったら風呂に入ろう。じゃあ先に順番決めとこう」
「はいはい!一番最初に入りたい!」
「じゃあヒナが最初でいいか?」
「うん」
「じゃあどっちが先に入る?」
「どっちでも良いけど……じゃあ先に入って良い?」
「いいよ」
「ありがとう」
順番はどっちでも良かったけど髪を乾かすのに時間がかかるから先に入らせてもらえるのはありがたい。
話してるうちに部屋についた。
そして部屋につくなりすぐにヒナがカゴと着替えを持って風呂場に走っていった。
カゴに脱いだ服を入れて洗濯場の人に洗ってもらうのだ。
バタバタ音が聞こえる。大丈夫か?
さて、ヒナが出てくるまでに自分のカゴと着替えを準備しとくか。
「ねえマルク」
「なんだ?」
「課外、なに受けるか決まった?」
「まだ考えてるところだな。剣術と先天属性の授業は受けようと思ってるんだがあと一つ二つくらい受けないといけないからな」
「そうだね。私もおんなじような感じかな。そういえばマルクの先天属性って何?」
「地属性だな。レイチェルは?」
「私は氷属性だね。でも他の属性もある程度使えるから便利そうな属性の授業受けようかなって考えてる」
「氷属性か。じゃあ試験で氷の塊を落としたのはレイチェルか?」
「え、うん。そうだけど…なんかあった?」
「氷の塊が溶けなくて俺の時会場が変わった」
マジか。最大火力って言われたから全力でやったけどまずかったか?
「でたよ〜次レイチェルちゃん入っていいよ〜」
ヒナが出たらしく風呂場から呼ばれた。
「じゃあちょっと行ってくる」
着替えとカゴをもって風呂場に行く。
服を脱ぎ、カゴに畳んで入れて入る。
シャワーを掴み蛇口を捻ると水が出てきた。
あれ?じゃあこの魔法陣何?
あ、そうか。魔力通せば効果が発動するのか。
魔力を流すと予想通り水はすぐにお湯に変わった。
お湯で体を洗えるなんて久しぶりだ。
村ではずっと水浴びだったからな。
感動を覚えつつ体を丁寧に洗う。
長旅だったから体を洗える時間が無かったのもあるがスキンケアが習慣になっているのだ。
備え付けの石鹸で体を洗い流す。
ああ、さっぱりする。
やっぱり文明最高。
シャワーを浴び終え体を拭く。
特に髪は丁寧に。ロングにしてるから濡れたままだと風邪引いちゃうからね。
「《温風》」
この数年で作り出した魔術で髪を乾かす。
風属性と火属性の軽い複合魔術だ。
複合魔術といってもまだまだお遊びみたいなレベルだが。
「マルク、次良いよ」
「分かった」
「ああ、シャワーの魔法陣に魔力流さないとお湯にならないからね」
「そうなのか。分かった」
「あと、もう眠いから先に寝るね」
「ああ。明かりは消しても構わない。それにヒナはもう寝てる」
「分かった。ありがとう」
風呂場から出ると既に真ん中のベッドで寝てるヒナが居た。
風呂上がってすぐ髪が濡れたまま寝るとか絶対したくないと思ったのだが……ヒナの髪は濡れてなかった。
どうやったんだろ、温風は教えてないしな。
まあいい、眠たいし明日聞こう。
私は左の──自分のベッドに身を投げ出して深いまどろみの中に意識を落とした。