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5-49 看病

「──ってことなので予備の鍵を貸してくれませんか?」

「わかりました──はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


 スペアキーを受け取り、ヒナが借りてる部屋に足を運ぶ。


「……よし、開いた」


 申し訳ないが無許可で部屋に入る。いや、自業自得なんだけどね。


 部屋に入ってすぐにベッドに寝かす。


「ヒナ〜?」


 試しに呼びかけてみるが返事はない。まだ《精神睡降(アストラルフォール)》が聞いてるみたいだ。

 できたら魔術薬(ポーション)を飲んでおいてほしかったが……仕方ない。起きたら飲めるように机の上に置いとこう。


「ん……うぅ……うぷ……」

「起き……てはないか」


 魔術の効果が薄れてきたのかもしれない。

 てかなんか呻いたしもう頭痛とか吐き気とかあるのかも。


「いけるかな……《治癒(ヒーリング)》」


 暖かい光の粒子がヒナの体に染み込んでいく……がやっぱり結構弾かれるな。


 ヒナの体の魔力と反発して大半が弾かれる。

 これじゃ消耗の割に大して効果ないな……


「仕方ない、効果なさそうだし単純な痛みとか傷以外は治せないから起きてすぐに魔術薬(ポーション)飲んでもらうしかないか」


 とりあえずもし吐いても窒息しないように横向きにだけしとくか……


「あとはもうできることないかな……よし、それじゃおやすみ、ヒナ」


 明かりを消して部屋を出る。


 明日少しでも体調が良くなってるといいな……


















「お、おえっ……うっ──」

「あ〜あ……大丈夫?」


 トイレでヒナの背中をさする。


 朝イチで様子を見に来たが予想通り二日酔いで死にかけてた。

 私の魔術は体調不良とかの状態異常には効かないし魔術薬(ポーション)は飲んでもすぐに吐き戻しちゃうし……


 ……治療法が無いな。


「これは今日の迷宮探索行けそうにないな……」

「ご、ごめん……うっ──」


 ヒナの背中をさすりながら通声機(ボイスコネクター)を取り出しマルクとベインの二人の回線に呼びかける。


「聞こえてる?」

『ああ』

『俺も聞こえてる。どうしたんだ?』


 よし、複数の同時通話、グループ通話機能も正常に機能してるな。


「予想通りヒナが二日酔いで吐いてる。今日は動けそうにないし私も看病で離れられなさそうだから今日の迷宮探索は中止になりそう」

『そうか』

『わかった。ヒナのことは任せてもいいか?』

「うん。どっちみち人に見せられる格好してないから私でなんとかするよ」

『すまない。あとでお粥か何か持って行く』

「ありがとう。それじゃ今日は一日自由時間で」

『了解』

『了解』


 事情を伝え、通声機(ボイスコネクター)での通話を切る。


「おぇ……ゔっ……」

「もう全部吐ききったんじゃない?」

「た、ぶん……」

魔術薬(ポーション)飲めそう?」

「うん……」

「治癒魔術かけるからちょっと頑張って飲もっか」


 小さく頷き、合意が帰ってくる。


 それを見て液体の入った瓶を手渡す。


「《治癒(ヒーリング)》」


 ダメ元で腹部に集中して魔力を流し込む。

 光の粒子が染み込むのと同時に瓶の中身を一気に飲み干す。


「うぇっ……」

「頑張って堪えて」

「う……はぁ……」


 なんとか堪えて胃の中に留める。

 そして飲み込んでから数秒で効果が発揮され──


「どう?」

「ちょっと楽になった……」

「よかった、じゃあちょっと横になろっか。動ける?」

「うん……」


 ヒナに肩を貸し、長いこと籠もってたトイレからでてベッドで横になる。


「寝れそう?」

「無理かも……」

「う〜ん……じゃあ一回無理矢理寝たほうがいいかも。魔術で寝かしていい?」

「お願い……」

「わかった。《精神睡降(アストラルフォール)》」


 魔術が唱えられ、瞼が閉じられる。

 すぐにすーすーと寝息を立て、リラックスし眠りに落ちる。


「はぁ……これでちょっとでも良くなるといいんだけどなぁ……」


 ささやかな祈りが零れる。

 いやささやかどころか割とガチの願いだけど。


「はぁ……とりあえず寝たしあとは自然に治るのを待つしかないかな」


 独白が静寂に染み込む。

 この静かな空間に独り言が響き、一つのことに気づく。


「暇だ……」


 看病する相手は眠り、今日は一日フリーになった。

 となるとこの時間で何かしたいな……


「学院に報告書書くか。色々迷宮関連で発見もあったし喜んでくれるだろ」


 拡張収納(マジックバッグ)から紙とペンを取り出し筆先を奔らせる。



 私は私でできることをやろう。

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