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5-40 集団戦

「3、2、1──来るよ!」


 私の告知と同時にベインとマルクが走り出す。

 数が多いのはわかってるので出だしで何匹か制圧する予定だ。


「はぁっ──ぐっ!?」

「ハァッ──チッ」


 マルクの魔術と一筋の剣閃、ベインの二本の刀による斬撃が魔物に降りかかる。──がどの攻撃も通らない。


 いや、実際はベインの斬撃は効いている。しかし作戦通りベインが攻撃した相手は三層より強くなっているだろう黒死狼(ブラックウルフ)。その分厚い毛皮と筋肉に阻まれて浅くしか攻撃が入ってない。

 ベインの刀にも魔力放出の術式が刻まれてるしかなり硬いのだろう。


 マルクの方はただの剣ということもあって透光蜥蜴(インビジブルリザード)の分厚い皮膚に阻まれて肉まで刃が入らず弾かれてる。

 魔術に関しても同じようにしなる弾かれてる。


 ダメだ、シンプルに身体能力で負けてる。

 けど、それをなんとかするのが私たちの役目だ。


 前衛の攻撃は通らず、奇襲は失敗した。先手を取れてたから一匹くらい持っていきたかったが仕方ない。このあと私たちが決めればいい話だ。

 それに私たちだってただ見てただけじゃない。


「マルク!」

「ベイン!」


 私はマルクの名前を、ヒナはベインの名前を呼ぶ。

 魔術攻撃を仕掛けるときの合図だ。


 そして二人ともしっかりその合図に合わせ、魔物から一歩離れる。


 そしてその一歩分の隙間、二人が合わせて空けてくれたスペースに──


「《氷晶の槍(フロストジャベリン)》!」

「《緋炎剣(レーヴァテイン)》!」


 大技を叩き込む。


 私は魔力を込めた氷の槍を、ヒナは鞭のようにしなり、白色になるほどの高温の刃を放つ。


「ギィッ──」


 私が攻撃した透光蜥蜴(インビジブルリザード)は断末魔を叫び、肉の裂ける音と共に絶命する。

 ヒナの方は……肉が裂ける音すらしない。断末魔なんてもってのほか。

 叫び声一つ上げさせる間も与えず、肉が焼ける匂いとともに魔物を焼き切る。


 やっぱりヒナの方が火力高いな……


「次が来るぞ!」

「どうする!?今のは先手を取れたから被害が出なかったが次はまとめて来る!次は多分抑えられないぞ!」

「っ……!」


 どうする?この数は二人じゃ抑えられないだろうし武器の通りが悪く攻撃が通らない以上このまま戦っても前衛二人の負担が大きい。

 撤退するにしても足の速い透光蜥蜴(インビジブルリザード)がいる。逃げ切れないだろう。


 なら透光蜥蜴(インビジブルリザード)だけを引き離して……いや、黒死狼(ブラックウルフ)もかなり足が速いし引き離しは多分上手くいかない。


 けどこのまま戦っても──


「マルク!立ち位置代われ!俺がトカゲの方相手する!」

「っ!?わ、わかった!」

「ベイン!?」

「俺はトカゲの方なら斬れる!実際昨日はその役割だった!」


 昨日の会話が蘇る。

 確かベインはカイさんのフロアボス討伐に同行し、取り巻きの相手を担当していたと言っていた。

 そしてそのフロアボスは確か透光蜥蜴(インビジブルリザード)の親玉……ということはベインは昨日透光蜥蜴(インビジブルリザード)をずっと相手してたのか。


「なら残りの黒死狼(ブラックウルフ)は私たちで対処する!」

「わかった!こっちは任せろ!」


 ベインとそれ以外の三人に分かれ、それぞれ魔物を相手する。


「マルク!私も前に出る!二人で抑えるからヒナ、お願い!」

「わかった!」

「了解!」


 左手に杖を持ち、右手で刀を握る。

 そしてその両方の武器に魔力を流し込み、術式を起動する。


「レイ!隙は俺が作るから攻撃は頼む!」

「わかった!」

「いくぞ!《大地隆起(アースエッジ)》!」


 今までの石を飛ばす術式ではなく、地面を隆起させ、相手を穿つ術式によって攻撃する。

 これによって攻撃自体は毛皮に阻まれて刺さらなくても、その質量によって魔物を浮かし、行動不能にする。


魔力放出(マギアブースト)!はぁぁあっ!」


 魔力を全力で流し込み、全力で振り抜く。


「かっ──!?」


 ベインの攻撃が通らない理由がよくわかる。

 三層のときより分厚い毛皮、より硬く頑強になった肉に刃が通らない。


 けど、私の魔力量による魔力放出と身体強化による筋力なら──


「はぁぁあ!」


 ざくりと鈍い音を立て、狼の胴体が両断される。


「はぁ──ぐっ──ヒナ!」

「行くよ!《緋炎剣(レーヴァテイン)》!!」


 隙だらけの私に飛びかかってくる黒死狼(ブラックウルフ)をヒナが焼き切る。

 視えてはいたが対応できなかったので本当にありがたいフォローだ。


「ヒナ、ありがとう!ごめんマルク!今行く!」

「助かる!」


 残りの一匹を足止めしてくれてたマルクのフォローに入る。


「行くよ!《氷結拘束(フロストバインド)》!」


 氷の茨で縛り付ける。もちろんすぐに砕かれる。

 しかし、砕けるまでにコンマ数秒は稼げる。そして、それだけの隙があれば一撃叩き込める。


魔力放出(マギアブースト)!」


 魔力を放出し、推進力にしながら体をひねり、下方向から全力の突きを繰り出す。

 そしてその突きは狼の喉元を貫き、脳天まで突き抜ける。


「はぁ……」


 なんとか、勝ったな……。

 時間にすればそんなに長くは戦ってないが……これを繰り返すのは精神的にキツイ。

 この一手でも間違えればすぐにでも負傷者が出そうで……まあ勝てたからいいってことにしとこう。


 帰ったらまた作戦会議しないとな……


「こっちも終わったぞ」

「ああベイン……お疲れ」

「ああ、お疲れ。それでこのあとはどうする?」

「さすがに一回撤退しよう……とりあえず色々わかったし改めて作戦会議しよう」

「わかった」

「わかった」

「了解!じゃあ戻ろっか。私も疲れた〜」

「お疲れ様。でも地上に戻るまでが迷宮探索だからな。油断するなよ?」

「わかってるよ!行こ?」

「うん。行こっか」


 魔石を拾い、袋に入れて拡張収納(マジックバッグ)にしまう。

 そしてそれを全員が見届け、歩き出す。



 目的地は地上、迷宮探索はここで一旦切り上げ、陽の光の下を目指して歩き出す。

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