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5-27 生還

「うわぁ……」

「これは……」


 三層に入ってすぐに私とマルクは頭を抱える羽目になった。

 この光景を視て、感じてマルクと感想が一致した。


「ど、どうしたの?」

「レイ、いくつ見える?」

「う〜ん……私からはぱっと見十二個あるように見える」

「俺もだ。話には聞いてたがまさかここまで多いとはな……」

「もしかして、罠?」

「うん。この周りだけでもめちゃくちゃ仕掛けられてる。魔物も見えるけど……一、二層とそこまで変わらないかな。見たことないのもいるけど大体同じだね」

「俺の方でも感じてる。ただレイと同じでそこまで脅威にならなさそうだ。それよりも──」

「うん。罠の対処のほうが問題だね」


 ぱっと視ただけでも槍が飛び出したり、炎が噴き出したり、丸鋸が飛び出すような仕掛けが視えた。


 幸い先駆者がいくつか解除してくれてるもののそれでも未解除のものも多く、依然脅威になるのは変わらない。

 特に魔物との戦いで動きを制限されるのが面倒だ。


 それに私とマルクは《空間把握(グラスプ)》を使えるからどこに仕掛けられてるか分かるが、《空間把握(グラスプ)》を使えないヒナは分からない。

 うっかり踏み抜いて怪我するのも嫌だしな……──あ。


「ヒナ、たくさん罠が仕掛けられてるんだけどさ、そのほとんどは接触することで起動するんだよね」

「それは知ってるけど……」

「だからさ、移動するときはずっと飛んで移動してくれない?」

「あ〜……なるほど。けどそれ魔力の消費量がとんでもないことにならないか?」

「ん〜……多分大丈夫だよ。なんだかんだあの術式も改良し続けてるしそこまで負担にならないと思う」


 快諾してくれたのはよかったし、言い出しっぺが言うのも何だが、普通の魔術師なら魔力量、体力の問題で二十分も使い続けられない術式なんだけどな……

 それに一、二層は戦闘もカウントしてそれぞれ一時間ずつくらいかけて降りてきてる。

 つまりヒナは一時間使い続け、その上で戦闘までできると言ったのだ。


 やっぱり魔力量が反則じみてるな……

 その身体能力と魔力量が羨ましい限りだ。


「じゃあ早速──」

「いや、戻るよ?」

「え〜!?」

「言ったでしょ。三層は様子を見るだけ。それ以上は予定時間に戻れなくなる。さすがに初回から捜索依頼張り出されるのも嫌でしょ?」

「だな。俺も本音としてはもう少し進みたいが……仕方ない。最初から決めてたことだ。それにまた来ることになるし体力残しておこう」

「……わかった」

「ありがとう。まだ余裕あるのわかったし次はもっと本格的に探索してみよう」

「わかった。……けど、やっぱり早く下に、九層まで行きたいな……」

「私もだよ。けど、死んだら元も子もないからね。まだ少しずつ行こう。大きく動くにはまだ慣れも情報も足りないからさ。まだ時間はあるしまた来よう」

「だな。今日のところは引き返そう」

「わかった」


 降りたばかりの階段を登り地上をめざして歩き出す。



















「まぶしっ!」

「やばっ!ごめん《暗視(ナイトヴィジョン)》解くの忘れてた!」


 《暗視(ナイトヴィジョン)》は目が光をより多く集められるようにする一種の身体強化。明るいところで使えばどうなるか、考えるまでもないだろう。


 すぐさま解除し、パチパチ何度も瞬きをして外の明るさに目を慣らしていく。


「とりあえず無事に戻ってこれたね」

「ああ。不安はあったが結果的にはなんとかなったな」

「だね〜。でもなんていうか、物足りない?想像してたよりは……って感じだった」

「まだ私たちの実力と迷宮の魔物がつりあってないんだろうね。もう少し降りればわからないだろうけど。でもまあ──」

「つまらないな」

「つまらないね」

「うん。つまらない。もちろん死なないように立ち回るのは変えないよ。けど、マルクはギルド長を継ぐならもっと功績挙げないといけないし、そもそもお金が目的じゃないしね」

「じゃあやっぱりもっと下まで行けばよかったじゃん!」

「まあ死んだら元も子もないしさ」

「それはそうだ。夢を追いかけて命を賭けても、命がいらないわけじゃない。レイの方針は間違ってないだろう」

「う〜ん……まあ、わかった」

「ならしばらくはこの方針ということで。それよりご飯食べにいかない?」

「そうだな。いい時間だし食べに行こう」

「さんせ〜い!お腹減った!」


 意見が一致したところで迷宮の入口から離れ、歩き出す。



 私たちの初探索は無事に終わった。

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