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5-23 仲間

「よし、次行くか」

「はい。お願いします」

「お願いします」


 昼食を食べ終え、次の目的地に向かって歩き出す。


 次はどこだろ?もう主要施設は回ったと思うけど......


「今日行くところは次で最後だ。と言ってもまあおまけみたいなものだけどな。病院と同じで、利用することがない方がいい場所だ」

「......どこに行くんですか?」

「共同墓地だ」


 ......言われてみればまだそれが残ってた。生と死が入り交じる環境に身を投じるんだ、あって当たり前の施設だ。


「ここだ。ま、見ての通り人の死を悼むやつしか居ないから静かにな。この共同墓地は病院同様迷宮探索者なら無条件で貸し出してくれる。けどまあ納棺されるのは使ってた装備品とかばっかりだけどな」

「......迷宮の掃除屋ラビュリンスウォーカーのせいですか?」

「ああ。迷宮の掃除屋ラビュリンスウォーカーは迷宮外から持ち込まれた生物や物体を異物を排除する性質がある。人が持ってるものには怯えて近寄らないが、人の手から離れたものに寄ってたかって分解しちまう。だから遺体を持って帰る余裕が無い時は装備だけでも持って帰ってここに埋葬するんだ。運が良ければ遺体も埋葬できる。まあ何にせよ使わないに越したことはない場所だ」

「そうだな……」

「そうですね……」


 人の死というものが色濃く現れる場所だからかどうも空気が暗くなる。


 わかってる。自分が、仲間が死ぬ可能性があることくらいわかって今ここにいるんだ。

 今さら死と隣合わせの場所に行くのが怖いとかそういうわけじゃない。


 けど、、やっぱり人の死を悼むこの空気は苦手だ。


「とまあここの説明はこんなもんでいいだろ。俺はここにちょっと用があるから先戻っててくれ」

「……わかりました。ありがとうございました」

「ありがとうございました」

「気にすんな。またなんかあったら気軽に頼れよ」

「ありがとうございます。また何かあったら相談させてもらいます」

「はい、何かあったら、その時はまたお願いします」

「おう、任せろ!それじゃ、またな」


 そう言い、カイさんは墓地の中へ入っていってしまった。


 ここに用があるってことは……いや、詮索するのは失礼か。


「戻ろっか」

「だな。ヒナが暇してる」

「だね。早く戻って色々教えてあげよう」


 カイさんとは逆方向に二人で歩き出し、迷宮区を後にする。


















「──っとまあ大体こんな感じかな」

「そんなことあったんだ。やっぱり行きたかったな〜」

「それはヒナが昨日飲みすぎたのが悪いだろ」

「うぅ……」

「飲むにしても加減は忘れちゃ駄目だよ」

「は〜い……」


 やっぱり一度アルコールの危険性を説くべきか?

 いや、さすがに今回の件で身にしみて理解したはずだし説教は次同じことをやらかしたときにしよう。


「とりあえず体調は良くなったんでしょ?」

「うん。魔術薬(ポーション)が効いたのか寝てたら良くなった」

「じゃあとりあえずご飯食べに行く?時間も時間だし」

「うん!お腹減った!」

「じゃあ行くか」

「うん!」


 ヒナの部屋を出て酒場に向かって歩き出す。

 一日ずっと寝ていて本当に空腹なのか早足になるヒナに引っ張られるように足を進める。


 ギルド会員であふれかえる酒場の中で席を探し、三人で座る。


「私これで」

「じゃあ俺はこれ」

「私はこれ〜!それと──」

「ヒナ、お酒はダメだからね」

「わかってる。欲しいのはこっち」

「わかった。じゃあ注文するよ。すいませ〜ん!」


 店員を呼び、注文を伝える。


「......ついに明日──」

「ああ。ついに明日、装備ができて、迷宮に行ける」

「だね。何だか楽しみだし、──緊張もしてる」

「私も」

「俺もだ。けど、きっと大丈夫とも思ってる」

「私も。魔物となんて初めて戦うけどさ、私たちなら大丈夫って思ってる。もちろん無理は禁物だけどね」

「だな」

「だね」


 自然と笑いが零れる。

 意見が一致したことにか、心境が同じことにかは分からない。けど、自然と表情が明るくなる。


「お待たせしました〜!」

「ありがとうございます」


 そんな話をしてるうちにウェイターのお姉さんが料理を運んできてくれた。


「それじゃ、乾杯するか」

「うん。私たちの夢の始まりを祝って──」

「明日の私たちの無事を祈って──」

「俺たちが出会えた奇跡に──」

「「「乾杯!」」」


 私は冒険の始まりに、ヒナは私たちの無事に、マルクは私たちが出会えたことに、様々な願いや祝いを込めて杯を交わした。



 ああ──仲間がいるのは、こんなに暖かく、嬉しい事なのか、

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