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5-18 遠隔共同研究

「すいません、この依頼を受諾してたんですが……」

「ああはいこの依頼ですね。どうされましたか?」

「先ほど依頼が終わって戻ってきたんですけど報酬って受け取れますか?」

「はい。事前に振り込まれてますのでお渡しできます。少々お待ちください」

「ありがとうございます」


 受け付けのお姉さんは受け付けのカウンターの奥に引っ込み、ガチャリと音が鳴ったあと、布袋を手に戻ってきたの。


「こちらが今回の依頼の報酬になります。既にギルド運営費用として一割天引きさせて頂いております。それも踏まえて確認してください」

「わかりました。……はい、大丈夫です」

「では、どうぞ。ご依頼、お疲れ様でした」


 報酬のお金を財布にしまい、受け付けを後にする。


 初仕事のお給金は金額にして金2、銀70だ。

 天引きされたのもあるがそこまで高くはないな。

 まあ仕事内容が楽な部類ということもあってか安めなのは知ってたが……さすがにこれじゃ生活危ないぞ。


 宿は無料で提供してくれてるから光熱費は考えなくてもいいけど食費は普通にかかるし装備が破損すれば修繕、買い替えでお金がかかる。


 早めに迷宮にいって稼ぐか階級上げてもっと依頼受けないと不味いな……


「このあとどうする?何かやりたいことあるならやってもいいけど」

「俺は特にないかな。というか装備が揃うまでできることが少ないしな」

「私も〜。ただ、強いて言うならお祝いしない?」

「初仕事の、ってこと?」

「うん。私たちが初めて自分でお金稼いだんだしさ」

「そうだね。じゃあ夕食の時またみんなで乾杯しようか」

「だな。それじゃ夕食まで解散か?」

「う〜ん、まあそうなるね」

「じゃあ俺は部屋に戻ろうかな。じゃ、また夕食のときに合流しよう」


 そう言いマルクは部屋に戻っていった。初めての仕事で疲れたのかもしれない。

 まあ犯罪組織相手に演技なんてさせちゃったし私にも落ち度はあるかな。


「じゃあ私も戻ろうかな」

「わかった。また後でね」

「うん。また後で」


 残った私とヒナも別れ、一旦解散する。


 ただ宿に向かう私と、ヒナが向かう方向は同じじゃなかった。

 多分まだなんかやりたいことあるんだろうな。


 まあ大抵の事は一人で出来るだろうし大丈夫だろう。

 私もなんか疲れたし宿のベッドで横になろうかな。




















「はぁ〜」


 肺の中の空気を吐き出しながらベッドに上半身の体重を預ける。

 今はただこの脱力感が気持ちいい。


 時刻は午後三時半。普段夕食は午後六時半に食べているのであと三時間ほど余裕がある。


 夕食の時間までこの脱力感に体と意識を預けてもいいのだが……眠たくない。


 普段こんな時間に横になることなかったからか体が眠ろうとしない。


 無理矢理寝てもいいが……夜寝れなくなったりしそうで嫌だな。


 ……どうしよ、できることが無くなった。


「暇だな……」


 現在の率直な気持ちが独白として零れ落ちる。

 これならヒナについて行ってもよかったかもしれない。


 そういや普段この時間は研究室に籠もってたな……

 でもここ本も研究施設もないし……あ、そうだ。


 拡張収納(マジックバッグ)から《通声機(ボイスコネクター)》を取り出し、ある周波数に向けて発信する。


 そして、その周波数の《通声機(ボイスコネクター)》の持ち主はすぐに呼びかけに応える。


『はい、ジェイドです。先輩、どうかしましたか?』


 そう、呼びかけた相手は学院の後輩のジェイド君だ。

 暇だったので研究の進捗の確認と手伝いも兼ねて連絡してみた。


「こっちで時間ができたから掛けてみたんだよ。問題なく動いてるみたいだね」

『はい。無事実用化できそうで何よりです。それで何か用ですか?』

「いや、研究の進捗の確認だよ。今何の研究してる?」

『今は先輩が残していった拡張収納(マジックバック)の研究ですね。機能を縮小してでも量産出来ないか模索中です』

「今の術式だと量産できないもんね。となると削れるのは容器の大きさと収納量だね。そこで術式の構築難易度下げるしかないね」

『はい。なのでその術式を研究してるんですが空間歪曲の強度下げたら下げたで構築し直さなきゃいけないんで今構築を模索してるところです。いかんせん空間魔術は先輩に叩き込まれた基礎くらいしか使えないんで先生の協力のもと参考書とにらめっこしてます』

「ふふっ、頑張れ〜。まあコツ掴めば割といけるから練習次第だね。私は現場にいないからなんとも言えないし実験もできないから上手くいくかは分かんないけど多分空間歪曲と物質保護の術式を──」


 ……思えばこうやって一つの議題に対して議論するのは初めてだな。意外と楽しい。



 こうして、時間の流れも、休んで口を止めることも忘れ、技術を深めるために議論に没頭していく。

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