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5-15 依頼理由

「え〜っと……あった。ここだね。すいませ〜ん」

「はいはい──えっと、どちら様?」

「ギルドへの依頼の件で来ました。道具屋『ライラック』の方でよろしいでしょうか?」

「ああギルドの人たちか。俺は道具屋『ライラック』の店主ゼノだ。よろしく頼む」

「レイチェルです。よろしくお願いします」

「マルクです」

「ヒナです」

「よろしく……今日の依頼は力仕事ばっかりだけど大丈夫そうか?」

「はい。体力には自信あります」

「そうか……なら早速頼む、入ってくれ。今は荷造りしてるところだ。私物は自分でやるから商品の方を頼む」

「わかりました」

「そこの箱に布で包んで入れてくれればいい。あとで馬車が来るから積み込みまで頼む」

「わかりました。それじゃ早速取り掛かりますね」

「よろしく頼む」


 軽く指示だけして店主のゼノは別室に引っ込んてしまった。

 多分私物をまとめてるんだろう。


「それじゃ小物は布で包んでこの箱にまとめて。箱に入り切らないものは馬車が来てから倒れないように固定しよう」

「わかった。それじゃ俺はこっちからやる」

「じゃあ私こっち〜」

「じゃあ私こっちだね」


 軽く場所を分けて作業に取り掛かる。


 無詠唱で《空間把握(グラスプ)》と血属性の身体強化を発動し、手早く、正確に、破損しないよう丁寧に陳列された商品を布で包み箱に詰めていく。


 やっぱりこういう時《空間把握(グラスプ)》使えると楽だな。

 直接視認する手間も省いて動かすのは手だけでいいのが楽だ。

 その動かす腕も身体強化でさらに早く動かせるし。


 ほんと使える人が少ないのが勿体ない。

 まあ効果と使用難度が釣り合ってると言えばそうかもしれないけど。

 学院にいた時空間属性の魔術の研究もしてくればよかったかなぁ……


 あ、そうだ術式を刻んで魔道具にすればいろんな人が使えるかも……

 いや、慣れてない人に大量の情報を流し込むのは危ないな。もしキャパオーバーしたときの反動がどうなるか分からない。

 かといって効果範囲を絞ると使う意味自体が……


「レイ、大丈夫か?こっち終わったし手伝おうか?」

「え?あ、こっちは終わったから大丈夫だよ。じゃあヒナの方……も終わってるのね。じゃあ報告しに行こうか」


 いつの間にか考えこみすぎてたな……悪い癖だ。

 今は仕事に集中しないと。


「すいませ〜ん!」

「何だ?何かあったか?」

「表の商品は詰め終わったんですが何か手伝えることはありますか?」

「もう終わったのか!?結構多かったと思うんだが……」

「はい。全て包んで箱に詰めてあります」

「そ、そうか……ならこっちも終わったところだし馬車が来るまでお茶でも飲んでてくれ。え〜っとたしかここに……あった。すぐ淹れるからちょっと座って待っててくれ」

「いえ──すいません。ありがとうございます。ありがたくいただいとこっか」

「だな」

「うん」


 もう淹れる準備してるし無理に断るのも迷惑か。大人しくいただいておこう。


 にしても手際がいいな。練習したというよりは淹れ慣れてるというような手際だ。


「よし、できた。粗茶ですまないな。普段はもう少し色々揃えてあるんだか……」

「いえ、ありがたくいただきます」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます!おいしい……結構良いお茶なんじゃないですか?」

「そう言ってくれるとありがたい」


 ……うん。ヒナの言う通り結構良いお茶な気がする。絶対そこら辺で買ってきた安物じゃない。


 今は在庫を切らしてると言ってたが単にお茶が好きな人ってだけか?

 いや、道具やが移転するにしては商品の在庫がかなり残ってた。多少安値になっても売り捌いてからの方が色々都合がいいはずだ。


 ……どうも裏が気になるな。


「あの、失礼ですが一つ聞いてもいいですか?」

「ん?なんだ?」

「……なんでお店を移すことになったんでしか?立地もいいですしわざわざ場所を移す理由は無いと思うのですが」

「あ〜……まあ話してもいいんだが──いや、依頼した時点で話すべきことだったな。ちょっと長くなるがいいか?」

「大丈夫です。お願いします」

「……ここ数日な、ちょっと面倒なやつが無理矢理取引を持ちかけてきてるんだよ。組織の活動も公にはしてないし、取り扱ってる商品も怪しい。そいつらが取引を持ちかけに来るたび毎度やんわりとお帰り願ってるんだが、最近嫌がらせとかが増えてな。果ては脅迫まがいの事もされてな」

「それは……なんと言いますか……」

「気にすんな。もともといろんなとこ巡って商売してた旅の商人だ。ここも賃貸だしな。……ただ今回は同じ場所に長く留まりすぎた。まあ色々面倒くさくなってきたから次の場所に移るのを早めただけさ」

「移転の手伝いではなく護衛を依頼することも可能だったのでは?」

「いや、そんな正面切って相手と対立する気はないな。もともと旅の根無し草だ。今回はちょっと派手だが似たようなことは慣れてるよ」

「そうですか……──マルク」

「ああ。話をすれば、だな」

「何か視えた?」

「何だ?なんか変なこと言ったか?」

「いえ、店の外に明らかに怪しいやつが三人。ヒナ、マルク、行こう」

「ああ」

「うん」

「ゼノさんはここで待っててください」

「……わかった」


 こんな話を聞いた以上これ以上好き勝手させたくない。

 それに、依頼を受けた以上絶対に守ってみせる。



 何かされる前に拘束する!

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