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5-6 迷宮都市ラタトスク

 あれからまた同じ道程を馬車で旅をした。


 森を抜け街を抜け『魔術都市ランドラ』を越えてさらに向こうの『迷宮都市ラタトスク』へ向けて馬車を走らせる。


 そして道程が同じでも全てが同じ旅というわけではない。

 学院を出たときとは覚悟も、想いも違う。


 父さんと母さんのささやかな贈り物を手に、また夢を追いかける。


















「着きましたよ、『迷宮都市ラタトスク』です」

「ありがとうございました」

「こちらこそ。では、またのご利用お待ちにしております」


 馬車から降り、新天地の地面を踏む。


 見えるのは武器屋に宿屋、八百屋のような食料や水、それも保存食ばかり売ってる店の数々。

 冒険、探索に関する物しか手に入らない。


 本当に、迷宮都市に来たんだな。


 ──っと見惚れてないで待ち合わせ場所に行かなきゃ。


 予定では『フェルレイン』というレストランで待ち合わせだったが……まあ初めてくる街で土地勘があるわけもなく。


 つまり、やることは一つ、人に聞くしかない。


「あの〜すいません、『フェルレイン』という食事処を探しているんですが知りませんか?」

「あ?ってガキじゃねぇかよ。嬢ちゃんここがどこか知ってんのか?」

「みたとこまだ十にもなってねぇだろお前。うちに帰んな」

「腹が減ってんならママに作ってもらいな」


 う〜んお手本のようなゴロツキだな。

 てか十歳にもなってないは酷くないか!?身長は私も気にしてるんだぞ!?


 はぁ……ここで言い争いになっても時間無駄にするだけだし違う人を当たろう。


「わかりました。他を当たります」

「あぁん?んだその態度」

「飯なんかよりもよ嬢ちゃん、俺たちともっとイイコトしようぜ?」


 そう言う男の手が肩に乗る。


 その瞬間、場は冷気に包まれる。

 男達の手足を氷の茨が縛り、動きを完全に封じる。


「──《氷結拘束(フロストバインド)》。あまり何度も言わせないでください。『フェルレイン』という食事処はどこですか?」

「ひっ──」

「わ、わかった!たしかその店はそこの曲がり角曲がって大通りに出て右にまっすぐ行ったところにある!」

「はぁ……最初からそう言えば良いんです。この程度で怖気づくくらいならこういうことやらないほうが良いですよ」


 最初からこれか……
















「あ!いたいた!」

「レイ、こっちだ」

「二人とも久しぶり」


 無事レストランで合流できた。


「そっちは大丈夫だったか?」

「そっちもなんか絡まれた?」

「うん。マルクが固めて私が炙って撃退した」

「そ、そう……こっちもゴロツキに絡まれた。魔術で凍らせたら怖気付いてたけど。もしかしたら魔術に対して知識がないのかも?」

「それはあるだろうな。ゴロツキの大半は冒険者といっても遊び人のようなものだ。今まで遊び呆けてなれる職が冒険者しかなく、仕方なくここにいるような連中だし、魔術に触れる機会がなかったのかもな」


 まあ多分マルクの予想通りだろうな。

 実際私の村でも先天属性以外の魔術を扱える人は少なかった。

 そして、使えたとしてもあまりレベルが高いものじゃなかった。


 学院でしっかり学んだ上でようやく実践レベルで使えるようになったし、そうやって学ぶ機会がない人からしたら魔術がどういうものか想像もできないのかもな。


「それより!ご飯食べよ!」

「そうだね。お腹すいたな」

「はい、お品書き。会計は割り勘でいいか?」

「いいよ」

「私も!え〜っとこれとこれと……」

「……お金あるの?」

「だいじょぶお父さんたちに借りてきた!」

「そうか。──俺は決まった。レイは?」

「私も決まった」

「私も決まったよ!」

「よし。すいません!注文いいですか?」

「は〜い!少々お待ち下さい!」


 店員を呼び、注文をする。


 色々あったがなんだかんだこうしてまた三人で食卓を囲めてよかった。


 出だしで躓きこそしたもののなんとかなりそうだし、二人の顔を見てなんだか安心した。



 スタートダッシュは無事にきれそうだ。

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