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5-4 再会

「はいはいどちらさ、ま──」

「……久しぶり」

「レイチェル!どうしたの!?手紙ではまだあと二日後って……」

「ちょっと手違いがあって早めに帰ってくることになったんだ」

「そ、そう……とりあえず上がって」

「うん。ただいま」

「……おかえり」


 母さんは優しく微笑み、家に迎え入れてくれる。

 案内されるままに家に上がり、リビングに通される。


「疲れたでしょう。ゆっくりしてて。ああそう言えばご飯もう食べた?」

「お昼ごはんはまだかな」

「じゃあまとめて作っちゃうから待ってて」

「ありがとう」


 リビングの椅子に背中を預け、部屋を見渡す。


 十年前、ここを出てから何も変わってない、懐かしい光景だ。

 今でも、子供の時家族三人で食卓を囲んでいた光景がはっきり思い出せる。


 ……懐かしいな。


「はい、できたわよ」

「ん、ありがとう」


 昔を思い出しているうちに出来上がったらしく食卓に料理が並べられる。


「食べましょうか」

「うん。いただきます」

「いただきます」


 短く言葉を交わし、料理に手を付ける。


 ……おいしい。やっぱり母さんの料理のほうがおいしいな。

 それに、なんだか懐かしい味だ。


 ……食べられるうちにたくさん食べとこう。


「ふふ、元気そうで良かったわ。最後に見たの大怪我してるときだったから」

「……ごめん」

「治ったから良かったけどあんまりそういうことしないでね?お父さんも心配してたからね?」

「はい……ってか父さん今どこにいるの?」

「お父さんは今街の方に商品を卸しに行ってるわ。多分そろそろ戻ってくるわよ。あ、それとあの人、レイチェルを見てやる気出してね、レイチェルが学校に入った三年後に刀匠の資格取ったのよ」

「え……凄いね……」


 上級職業の資格って三年後とかで取れるものなのか?

 いや普通に鍛冶師として働いてた下地あってこそだろうけどさ……


 元は鍋とか食器とか日用品作ってたはずなんだけどな……


「通りで学費が問題にならない訳で……」

「ええ。おかげで稼ぎも増えたしお小遣いも送ってあげられたわ」

「ああそうそう、お小遣い送ってくれたのは助かったよ。装備壊れたりで買い替えたりしてお金かかっちゃったから」

「あら?それなら手紙に書いてくれればもっと増やしたのに」

「いやいや、流石にそこまでは……」

「別に良かったのに」

「はは……ごちそうさまでした」

「はい、ごちそうさまでした」


 絶対学費やばいのにさらにお金欲しいとか要求できるわけ無いだろ……


「ただいま」

「あ、おかえり。お父さん、レイチェル帰ってきてるわよ」

「あ……おかえり」

「……久しぶりだな」

「うん、久しぶり……聞いたよ、刀匠の資格取ったの?」

「ああ。お前に不自由がさせたくなかったからな……」

「ありがとう……」


 本当に迷惑掛けちゃったな。


「いや、まあそれは良いんだ。母さん、あれやろう」

「そうね」

「え、何するの?」

「まあまあ、ちょっと手出して」

「え?はい」

「レイチェル、今の身長分かるか?」

「え?いやごめん分かんない」

「じゃあ測るか。そこに立て」

「え、うん」

「146か。今使ってる武器はあるか?」

「あるけど……はい」

「お、おお……なんか凄い物持ってるな……それで今この剣を使ってるのか」

「うん。ヴェルグルの方の武器屋で選んでもらった」

「ふむ……細剣か。今の『ステータス』の筋力値はどれくらいだ?」

「え〜っと確か28か29くらいだったはず。……これ何が始まったの?」

「まだ秘密。ちょっと今から作業するから部屋でゆっくりしてて」

「え、うん。あ、私の部屋って今どうなってる?」

「そのままよ。時々掃除しに入ったりはしてるけどね。それじゃまた後で。夜ご飯できたら呼ぶから」

「わかった……」


 何が始まったんだろう。

 とりあえず聞いても教えてくれないあたり私に手伝えることは無いか、関わらせたくないのどっちかだろうな。


 ……とりあえず部屋に行くか。


 記憶を辿り、私の部屋だった場所へ足を運ぶ。

 扉を開け、見える景色は、十年前と何も変わらない質素で、隅々まで手が行き届いた風景だった。


 ここも変わらないな。

 というかこうして見てみると昔の自分がどれほど魔術一辺倒だったかよくわかるな……


 服や小物を持っていったのもあるがミニマリストとかそういうレベルで物がないな。


 とりあえず昔本にかじりついた机に荷物を置き、ベッドに横になる。


 大の字で体を投げ出し、体の力を抜く。


 ……なんか不思議な気分だな。

 こうしてこの天井を見上げるとなんだか懐かしい。

 そして、またここを出なきゃいけないと考えるとなんだか寂しい。


 私がやりたいようにやって、その結果故郷から離れるというのは理解した上で学院に入るのも承諾したし、夢を追いかけることを決めたはずなのにな。

 なんだか不思議な気分だ。


 ……こうして考えると、この世界に入れ込んでるんだなって、自分でもよくわかる。



 本当に私はこの世界の住人になったんだな。

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