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4-41 二つの魔術、決勝戦の終着

 下手をすれば死人が出るほどの高温の炎が場を包む。


 閃熱の刃を飲み、相手を飲み、視界を埋め尽くすほどの炎で相手を焼く。


 抵抗を予想してかマルクが防御の準備をしていたがその予想に反して攻撃は飛んてこず、ただ私たちの炎が場を支配するばかりだった。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

「ヒナ、もう魔力が──」

「だい……じょうぶ……」

「いや、もういいよ。ありがとう」

「……ごめん」

「大丈夫。あとは任せて」


 さっきとは逆の形で私がヒナを抱きかかえ横にする。


 共術は術者が協力し、術を重ねることでその効果を発揮する。


 つまり、ヒナが術を止め、均衡が崩れたことで共術は崩壊する。


 場を包み支配した炎の嵐が消え、焼けた大地と共に、相手の姿が映し出される。


 焼け焦げた服、肩で息をし、青くなった顔。

 どこを見ても限界、消耗してるように見える。


『ステータス』で見ても同じだ。

 HPも減り、MPもほとんど残ってない。


 ただ、こいつと戦い、『ステータス』で魔力量を数値化し覗き見た私だからこそ分かる。


 まだ例の炎の刃を一発撃てるだけの魔力を残してる。


 他人の魔力、熱が混ざりロクに魔術が使えないなか、防御にリソースを使いながらも逆転の手を残し続けるその手腕は尊敬する。が、そんなことで容赦はしない。


 打ち合わせ通り、全力で畳みかける!


「マルク!行くよ!」

「ああ!」


 数歩進み、打ち合わせ通りマルクと()()()魔術を構築する。


「『それは霜獄の果て』『罪人を縛り凍えさせる冬の監獄』」

「『今創りだすは霧の都』『巡り巡る水の果て』」


 残り少ない魔力を、全て注ぎ込む。


「『罪人の終わりは』『共鳴する』」

「『水の終着は』『共鳴する』」


 もうこれ以上はない。

 全て、これで終わらせる!


「はぁ──はぁっ──『原初の灯り』『神の与えた最初の奇跡』!『その奇跡の具現を──今ここに』!」


 相手も呼応するように、全ての魔力を注ぎ込む。


 これが、正真正銘、最後の戦い。

 最後の、ぶつかり合い。


「「《霧霜の終着(フォグロフロスト)》!!」」

「《閃熱刃・超過膨張フレアレイ・オーバーフレア》!!」


 さっきとはうって変わって空気中を揺蕩う霧すら喰らい凍らせる極寒の檻が場を包む。


 言ってしまえば《空間把握(グラスプ)》の効果を無くし、ただ凍らせることに特化した《霜獄の領域フロストウィント・フィールド》だ。

 ただ効果を減らした分、さらに冷え、凍らせられる。

 万全のヒナですら十秒と持たず足から凍りついた共術だ。


 そして、それに対し、巨大な白の刃が振り下ろされる。

 私たちを空から撃ち落とし、結界に傷を付けた魔術だ。


 天から振り下ろされる刃を空中に浮かぶ小さな氷晶が反射し、幻想的な光景を作り出しながら、二つの魔術は衝突する。


 刃と極寒の空気が衝突し、拮抗──はせず、刃が振り下ろされる。


 そしてそれに反応できたのは、私だけ。


 幸い狙いは私とマルクだけで、脱落したヒナには当らない軌道だ。


 けど、()()()()()()()()マルクは多分避けられない。


 その考えを思いついた時、既に体は動いていた。


「マルク!!」

「レイ!?」


 右手でマルクを突き飛ばし、私も逆方向に飛び込む様に回避する。


 意地でも魔術は止めない。

 何が起きてもここで凍らせなければ全部無駄になる。


 だから、何が何でもここで凍らせる!


 動揺しないよう目を瞑り、ただ全力で魔力を流し込む。


 恐らく刃が振り下ろされたであろう轟音が消え、私の魔力が尽き、魔術が止まる。

 もはや何秒経ったのかも分からない。


 ただ、寒いということだけは分かる。

 私たちの魔術もちゃんと成功したんだな。


 多分、拮抗すらしなかったのは密度が違うからだろうな。

 私たちの魔術は空間に作用し、相手の魔術は質量を持つほどの炎の塊。


 単純に作用する場所が違うし、魔力の密度が違う。


 まあ予測するのもいいが見たほうが早いし、見ないと何もわからない。


 情報を得るため、目を開ける。


 飛び込むのは、すべてが横になった視界。


 ああそうか、倒れてるんだった。


 起き上がるため手をつき体を動かそうとするが、うまく行かない。


 魔力使いすぎてもう手先の感覚も残ってないのかな……


 いや、違う。これは──右腕が、ない?


「ああああぁぁああぁぁぁぁぁあああ!?」


 焼けるような、とか、そんな生易しいレベルのものじゃない痛みが流れ込む。


 傷口を抑える左手から生暖かい感触が伝わってくる。


 ──血の感触だ。


   ──スキル《沈静化》が発動します──


 また謎のスキルが発動し、恐怖という感情を代償に凪のような冷静な思考をもたらす。


 もはや痛みで思考が麻痺することもなく、尋常じゃない痛みと氷のような冷静な思考が無理矢理共存する。


 ただ、そのおかげでまだ動ける。


「はぁっ──はぁっ──ぐっ──」


 うめき声を上げながらも立ち上がり、相手に向かって歩き出す。


 これだけは確認しないと──


 霞む視界で、相手の姿を捉える。


 その姿は下半身は氷で埋まり、その手に杖は握られておらず、この気温で吐き出す息が白くならないほど体温を落とし、衰弱した姿。


 これなら──


「はぁ──俺達の負け、だな」

「──よかっ──た」


 また視界の全てが横になり、指先すら動かなくなる。



 ──また、心配させるな......

 さて、なんだかんだこの駄文も100エピソードを超えましたね。なんだか感慨深いです。

 ここまで読み続けてくれた方が何人いらっしゃるか分からないですがこれからもご愛読のほどよろしくお願いします。

 それと、この後書きスペースも活用して一つご相談です。

 なんだかんだ100エピソード以上書きましたがやっぱりコメントとかが少ないですね。やっぱり知名度ないのもあるでしょうけどハードル高いんでしょうか。

 どんな些細なことでもじゃんじゃん書き込んでくれて構いませんし、励みになります。

 あと誤字なんかも指摘していただくとありがたいです。


 ということで、コメントや指摘を書き込んでいただくと私が喜びますので、よろしければ書き込んでいただくとありがたいです。

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― 新着の感想 ―
人形劇みたいな作品ばかりがランキングするなかで、 更新のところから見つけて昨日から読み始めました。 作者さん筆力もあり、おもしろい作品なのに読まれてなくてもったいないですな。
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