表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/394

転生前夜

 生物の気配がしない静まり返った森で目を覚ます。

 日が沈みかけているのか薄暗く、手元や足元は見えるが歩き回るには心もとない明るさだ。


「ちょっと待て、一体何で俺はこんなところにいる」


 ここがどこか知るため周りを見渡すが一面鬱蒼とした木々に囲まれている上暗さでここかどこかなんて検討もつかない。


 ならばと思い地図を見るためスマホを取り出そうとするがカバンがない。

 ポケットを探るがスマホどころか財布すらない。


 やばい、スマホも財布もなしに目覚めれば見知らぬ森に俺一人。

 絶望感とともにこれからどうするか俺は混乱した頭で考える。

 ここで俺はようやく一つのことに気づく。


「何だ……これ、手が……腕が……透けてる……?」


 目覚めれば森の中に俺一人で手足が透けている?明らかに普通じゃない。


「何だこれ……一体どうなってるんだよ!?ふざけんな!一体何が──」


 ───スキル《沈静化》が発動します───


 俺の声を遮るように謎の声とともに俺は強制的に落ち着かされる。

 さっきまで混乱していた頭の中が凪のように静まりかえる。


 待て、今の声はなんだ?いやそれよりも今何が起きた?


 冷静にされた頭で必死に考える。冷静にされたとはいえ情報がないことには変わりない。


 なので今自分に起こったことは今考えても仕方ないと割り切って考えることにした。


 そうなると考えなければいけないことはなぜ自分がここにいるのかということ、そしてこれからどうするのかということ。


 ここにいる理由を知るため自分の前日の行動を思い出していく。








 俺──三上悟は朝、差し込む朝日に起こされ目を覚ます。

 しばらくしてから体を起こすと学校に行く支度を始める。


 朝食は炊いた白米に冷蔵庫の余り物。朝食を用意する際、前日に作り置きしたものと白米を弁当箱に詰める。

 ニュースを見ながら朝食に手を付ける。


「続いてのニュースです。X市で通り魔事件がありました。被害者は──」


 よくあるようなニュースを聞きながら手早く朝食と学校の支度を済ませた俺は家を出ていつもの時間に、いつも通りの電車に乗る。


 数十分電車に揺られ通っている高校の最寄駅に着く。

 そこからは平凡で変わりのない授業を淡々と受ける。

 そうして下校時間まで記憶を進める。

 ここも普段となにも変わらず家に帰るだけ。



 帰るだけのはずだったのだ。


 唐突に凄惨な記憶がフラッシュバックする。

 その焼けるような痛みと苦しみに表情が歪むのが鏡を見なくてもわかる。


 俺は通り魔に遭ったのだ。


 その記憶の中のフードを被った男は何度も、何度もナイフで俺を滅多刺しにした。


「フフフッ、ハハハハハハハハハハ!!!!」


 笑いながら、何度も。

 満足したのかもうどこを刺されてないのかすら分からない。意識も記憶も朦朧としてる中、男はシニカルな笑みを浮かべ走り去った。


 もはや声を上げることもできず恐怖と憎悪と痛覚を抱えたまま俺はそこで気を失ったのか、記憶は途切れる。




「っ!はぁっ!はぁっ!──」


 その衝撃で過呼吸に──はならず、謎の声の影響かはわからないが急速にその感情は冷めていく。


 そして無理矢理落ち着かされた頭で考える。


 あの記憶が正しければ俺は死んだのか?ならここは天国や地獄なのか?


 色々な可能性はよぎったが結局ここにいる理由は分からない。


 そして次に俺はこれからどうするかについて考えようと周りを見渡そうとする。

 相変わらず森の中は闇に包まれていて足元すらよく見えない。


「……さっきよりも暗くなったか?」


 日が沈むほど長く考え込んだか?ちがう、これは


「俺の足が……さっきよりも透けてる……?」


 だとするとやばい、このままだと多分俺がこのまま消える!

 どうする!?決まっている、ここにいても何も解決しない!俺が消える前になんとかしないと!


 俺は走り出した。がむしゃらに、何度も躓き転びながら、森の中を走り続けた。


 時間はわからないが十数分ほど走った頃だろうか、真っ暗な森の中に一筋の光が差し込んだ。


 光の方に向かうと、森を抜けたそこには、村があった。

 人がいるなら誰かが解決方法を教えてくれるかも、という可能性にすがり村に向けて走り出す。


「誰か!誰かいないのか!?助けてくれ!」


 叫ぶが返事はない。ほとんどの家はすでに寝ているのか明かりが消えている。

 そんな中で唯一明かりのついた家があった。


 人がいる可能性に掛け、窓から中を覗き込む。

 その瞬間、家の中に引っ張られた。誰かに掴まれたわけでもないのに家の中に引きずり込まれる。



 結局抵抗することもできず、俺はそこで気を失った。

初投稿です。至らぬ点がありましたらビシバシ指摘してくれると助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ