20.冒険者たちと宝物
最近は日本でも外国人の方を見かけることが随分と多くなりましたよね。
「俺ん家の周辺は外国人の観光客だらけやで」
私の職場に京都から和菓子の納品に来る業者さんがよく言う台詞です。この業者さんの住む地区は太秦映画村のすぐ近くとのこと。
でもね、観光ではなく仕事のために日本に来る外国人の方も沢山います。
私の職場にも最近、外国人労働者が滅茶苦茶に増えました。ネパール人、フィリピン人、ブラジル人、中国人、等々。職種は食品流通関係です。
先日、私が乳製品の荷受けをしている時のこと。20代位のネパール人女性の作業員がカフェオレの大量に積まれた台車を私の側に持ってきました。
おそらく「カフェオレの作業に入りたいから早く数量チェックを済ませて欲しい」ということだと思い、数量チェックを早急に済ませました。
「他に早く欲しい商品はある?」
と聞くと、少し「?」っぽい表情を浮かべながら微笑んできました。
これは言葉が通じてないな、と思っていると
「ワタシ、日本語ワカラナイ」
と返してきました。
以前、別のネパール人作業員に「英語ナラワカル」と言われたことがあったので
「Speak English OK?」
と言ってみると、またしても「?」な笑顔になっちゃいました。
「イギリス……? ワカラナイ」
あれれれ?
ネパールの人って普通に英語が話せるのかと思ってたよ。
この瞬間、私の脳裏に全く別の「?」が過っちゃいました。
『この人、どうやって日本に来たんだろう?』
例えばですよ、私が海外に行ったとして。出稼ぎのために単身で海を渡った場合、その国で通じるだけの語学力がなかったら物凄く不安です。というか、自力で生活できる自信なんて全くありません。
このネパール人の女性、普段の生活はどうしてるんだろ?
全く言葉の通じない土地、トラブルになった時はどうしてるんだろ?
考え出したら、もう頭の中は「?」だらけです。
でもね、本音を言っちゃうと、私はこんな外国人労働者の方たちを羨ましく思っているんです。
この方たちは少なくとも、勇気と行動力を持った方たちです。言うなればささやかな冒険者です。
右も左も分からない未知の国に踏み入り、自力で生活し、労働し、その領域を少しずつ広げて開拓していくのです。その経験は一生の宝物になっていくのだと思います。
ここ、何処だ?
何だコレ?
困ったぞ、どうしよう?
そんな困難を積み重ねながら、異国の冒険者たちは沢山の宝物を手にしていくのです。