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はずかしい銀河戦争  作者: ツナ川雨雪
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掃除の募集

はずかしい銀河戦争




俺の名前を知っているか。知らないとこの国では生きてゆけない。この国の治安は俺が維持しているからだ。正確には治安組織の俺たちが、だが、そんなことは今関係ねえ。仕事仕事でしんどいが、喧嘩一つ起こらねえんだよ。夫婦喧嘩でさえな。そんなものあったら、ぶん殴って二人とも血まみれにしてやる。子供の喧嘩はドーベルマンの餌だ。学校では先公に意見する奴はいない。意見なんてしてるヤツを見かけたら、狭くて鍵のかかる秘密の部屋にぶち込んで、一生腐ったパンしかくえねえ生活をさせてやる。ディアン皆城って言うんだよ。四十六歳になるが、嫁は居ない。よめ募集中。ただ働きの手伝いも同時募集中。兼ねるのも可。学年に一人居るか居ないか、以上の美人であること。そして私のことを無条件に崇拝すること。仕事に意見しないこと。月々、六万円の実家からの仕送りをやり繰りして生活を絢爛豪華にすること。自分の貯金をはたいて私の生活向上に当てるのは大いに歓迎。私が傷だらけで帰ってきたときは、補欠要員としてしばらくの間、代役をすること。入院中寂しい私を毎日、見舞うことも忘れてはならない。




タケル君とケンちゃんは、弱いもの同士だが激しい喧嘩をする。そのたびに、あの馬鹿くさい大人に怒鳴られ、コンクリートで出来た牢屋のような所に入れられる。やめたら良いとと思うが、子供は自分でやめられないこともある。それを許容しないこの国はどうなっているのかは、さくらには、解らない。大人は何故あの人達に投票するのだろう。図書館の下の方に隠されている文献を見ると、昔の人は、ずいぶん色々な考えを持っていたそうだ。図書館の下の方にさくらが行けるのは、一番従順な優等生だと思われているからだ。今は小学五年生だが、三年の時に許可された。今、特3の図書カードを持っている。この古柳小学校には、三千人の生徒が居るが。特クラスの図書カードを持っているのは、サクラだけだ。普通の人は全ての本が読めると、錯覚してしまう大図書館カード、というものを持っている。さくらは、ただの本好きだと思われているが、特クラスの本には、リアルな写真の付いた格闘技の雑誌もあったりする。男の子が見たら喜ぶのだろうが、館外には持ち出せない。それは、特クラスの本は、その階に一つだけ用意された所定の場所で読んで、読み終わったらすぐに管理ロボットに渡さなければならないからだ。管理ロボットに返却された本は、何故か、一週間は読むことは出来ない。メンテナンスなのだそうだ。たぶん、何処を読んだか、コンピューターで、指紋の位置から特定するのだろう。さくらはずいぶん変わったところを、気にして、読んでいるのだが、咎められたり読書可能レベルを下げられたり、したことはない。いつだったが、管理ロボットを修理しているところに、出くわしたことがある。大変驚いた。特クラスの図書カードを持っている者は、大体そんなところに出くわすのだろうと、勝手に思いこんだ。しばらく、眺めていると数人の作業着を着ている人たちの内の一人と目があった。女性だった。二十代くらいの綺麗な人だった。黒い作業着を着て周りの作業員に指示を出している。「生き物みたいな者だから生物論理的なアプローチが出来ないといつまでたっても、今のクラスのまんまよ」さくらは管理ロボットの修理にもクラスがあるとは知らなかった。それにクラスの上を目指している人がいるなんて初めてわかった。さくらは自然と本を読んでいたら、クラスの存在を聞かされて、上位にランク付けされてしまった。さくらがクラスのことを知らなかっただけで、みんな知っているのかもしれない。何をすれば上位クラスになれるのか解らないから、悔しい気持ちの中でみんな黙っているのかもしれない。体制批判は小学生でも隠れてしている。あれは鬱憤晴らしなのだろうか。黒い作業着の女の人とまた目があった。さくらは、あわてて会釈した。「あなたは何処まで知っているの?」誰に聞いているのか解らなかったが、顔をそっちの方向にやるとやさしそうな視線で、さくらを見ているので、自分に聞かれているのだと理解した。図書館関係者に用がないのに話かけられるのは、このときが初めてだった。「わかりません」「そう。あなたの感じだと政治にも口を出せるようになりそうね。将来有望よ。でも、表の政治家さんには嫌がられるわよ、きっと」「捕まるって事ですか?」「いいえ、なにも起こらないわ。政治家の、顔が、さらに悪くなるだけのこと。あなたは、私と話しているんだからあなたは、相当ランク上位になるでしょうね。この世界には偶然なんてものはないの。あるのは必然だけ。私と出会うことになったのは必然。困ったことになったらまた会うでしょうね」「おねえさんは政治に口を出せるんですか?」「出せることは出せるけどダサクてやってられない。そういうのは、上位ランクでもレベルの低い人がするんでしょうね・・・身内の悪口はいけないよね。でもこの人たち馬鹿臭くて、成りたくて成った。エリートなんてたいていバカよ。知識はたくさんあるけど、別段その知識に頼ってみようとか思ったことないし、自分で調べた方が格段にはやいしね。すぐに、女だと思って生意気な口をきいたりするし」









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