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現代病床雨月物語 第三十七話 「依怙地巡礼(その六)奈良・和歌山編」

作者: 秋山雪舟

「近畿三十六不動尊霊場」巡りも奈良・和歌山を残すだけとなりました。難病平癒の祈願も奈良の三寺と和歌山の三寺であります。

 奈良の第三十番・如意輪寺(石造立像)では、日本最大の油絵像である観世音菩薩画像(ねおがみの観音)を観て心がほっこりしました。この如意輪寺の所在地は桜の名所であり、文楽・歌舞伎の「義経千本桜」で知られる吉野にあります。如意輪寺は小楠公ゆかりの寺であります。大楠公は楠正成公でありその長男が小楠公の楠正行公であります。小楠公は大阪の四條畷で決戦を向かへました。四條畷には明治維新後に四條畷神社が創建されました。父である大楠公は神戸の湊川で決戦を向かへました。湊川も明治維新後に湊川神社が創建されました。どちらの神社の紋も「菊水」であります。父の紋の菊水の水はうねり波のような水です。子の紋の菊水の水は直線な水です。ちょうど直線的なSの字のようです。この直線的な「菊水」は如意輪寺と四條畷神社が同じであります。私が育った四條畷市では、この「菊水」を生活の中でよく見るマークなので如意輪寺の「菊水」を観た時に強い親近感を感じたのを覚えています。

 和歌山の第三十四番・根来ねごろ寺(木造座像・秘仏)です。私のイメージでは根来とは「根来衆」であり武装する僧兵であり、「雑賀さいか衆」と共に信長や秀吉を苦しめた鉄砲隊が有名です。根来に限らず戦国時代のお寺は僧侶が武装するのが当たり前でした。奈良興福寺の宝蔵院や比叡山の荒法師は、天皇まで困らせる経済力と武装力を保持していました。それはお寺の荘園・領地(=地域経済圏)を維持するために必要不可欠でした。特に他の貴族・寺社と隣接している場合はなおさらだったと思われます。

 第三十四番・根来ねごろ寺のお不動様は秘仏ではありますが一月二十八日の初会式(初不動)と八月二十八日の夏会式にはご開帳されます。

 これで私の難病平癒祈願のお不動様巡りは終了となりました。最後に巡礼で知ったお不動様とは何かを確認したいと思います。

 身の回りには、自分の力ではどうにもならない危機や災厄が渦巻いています。このような心の動揺や悩みを切り払っていただくようにお祈りする仏さまがお不動様なのです。

 お不動様のお顔は「忿怒の形相」であります。右手に持つ剣は人の欠点を直し、人を生かす「利生の剣」であり左手に持つ「縄」は災いや危険から救い出す縄であります。私たちはお不動様の「忿怒の形相」の奥にある慈悲の御心を忘れてはならないのです。

 これで依怙地巡礼も一つの区切りとなります。


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