アリサベート
アリサベートは、ドアーフ王国に最も近い魔王領域内の小さな村で生まれ育った。父親は、魔族の中で70柱目で魔王軍では、序列の無い一兵卒に過ぎなかった。家族にとっては、優しい夫で有り父親だったが、魔人としては、弱くもないが強くもなかった。
父親が、同胞とのいざこざで重症を負い死んだ後、暫くは、村に留まったが生活は苦しく 誰も頼れる者も居なく、何か悪い事が起これば全て魔女のせいにされ、小さいアリサベートさえ角が無い人間の容姿では、相手にされず仕舞いには、村を追われて逃げる様に魔族領を出て母親の故郷の[魔女の森]に行った。
初めは、親子を受け入れていた魔女達も母親が、魔人の番いでアリサベートに魔族の血が入っていると分かると態度を一変し、辛く当たる様になった。アリサベートも耐えていたが、母親が、病気になった事で[瘴気]が病の元だとされ森を追われて獣人国に行く途中で亡くなった。
森で暫くは、暮らしていたが、人族の奴隷商に捕まった。名をアリサに変え人族を装ったが他の獣人達と同じ様に奴隷にされ酷い扱いを受けた。
アリサベートが16歳の時、偶々商人の屋敷に来ていたソロモンに魔力量の多さで見出されて助手として働く事を許された。
ソロモンと一緒に居る内に偶に報告にやって来る魔人のカサドライブと知り合い秘密裏に交流を持ち彼の仕事を手伝う振りをして魔族の事を調べ上げ、復讐を実行する為にカサドライブを殺し、角と魔王軍序列8位の印章を奪って魔族領に侵入した。
序列の上位性と[猊下の勅命]と言う言葉の重要性を利用して計画を実行していたが[猊下の勅命]に疑問を持ち裏切り者の企みだと暴露てしまった。
「チェッ、もうちょっとやったのにぃ。クソッ」
そんな時、アモスから念話が入って来た。
「何やねん?」
『ぶはは、良いぞ、良いぞ!』
「はあ? 何が言いたいねん?」
『ぶはは、アリサベート! ガザス王国の王族を殺せ!』
アモスは、昔から戦争好きだったので、退屈していた事もあり、今回のエルフ族とドアーフ族の襲撃は、アモスにとって多いに楽しめたイベントだったが、それが終わろうとしていたのが気に食わずアリサベートに連絡しアモス主体で人族を攻め滅ぼそうと企んでいた。
『ぶはは、何を驚くか! お前をかっておるぞ! 殺せ!殺せ!』
「簡単に言うな! その後どうすんねん?」
『ワシらが、人族を狩る。どうじゃ、ぶはは』
「分かった。5日後、ええか?」
『ぶはは、問題無い!』
五日後の深夜、アリサベートは、王都の居城に忍び込みウザネス王、全ての王妃そして、王太子のルドルフと他の王族全てに【睡魔の呪い】を発動させ夢の中で魂を砕き殺した。
次の朝、王族の死により王城が浮き足立っている中、王都近郊から魔族と魔物が攻めて来たとの情報が入り、既に多大な被害を出していると聞き慌てて戦況に対処するように各兵士団長に状況把握と魔物の討伐の命が下った。
第二近衛兵団長と息子のジンスが、急ぎアーサスの所に行き、アーサスが、次期国王を有ると告げアーサスは、今まで王族からいない者として捨て置かれて居たので困惑していた。




