和解と悲劇
ルシファの執務室では、レビアタン、サタンとベルフェゴールが、深妙な面持ちで座っていた。情報部に所属しているクライストが『裏切り者のアリサベートが[猊下の勅命]として戦闘狂の数グループ命じた為、過半数の魔族が加担して獣王国とエルフの里を滅ぼした』と報告。
ルシファは、報告を聞き激怒し、拳を机に振り落とした。
バッゴウーーン!!と音がしヒビが入った。
「また、アリサベートじゃ」
「ルシファ、アリサベートを自由にさせ過ぎたわ」
「それより、前回の会議の後に捕まえて尋問すべきでした」
「もう良い。われ我の考えが甘かった」
「私共の方で、アリサベートの行方は、追っておりますが、どうやら黒竜を使って魔族領を出た模様です」
「何処まで周到なんじゃ」
「私の下女が言うには、アリサベートは、魔人と魔女との間に生まれたと。それに、人間の振りをして猊下と度々会っていたと聞いたわぁ」
ルシファは、サタンとベルフェゴールに魔王軍の統制とドアーフ王国とエルフの里を襲撃した者を捕らえて牢に入れるように命じた。そしてルシファはレビアタンに、
「今夜、猊下にお会いするゆえ、支度をせよ」
「承知したわぁ」
ルシファとレビアタンは、幻術魔術を使い容姿と衣服を人間の様に見せ、急ぎ聖教皇国の学園都市に向かった。
「確か、この辺のはずだ、が… 」
「こう似た様な建物ばかりじゃ分からないわぁ」
二人が並んでいると人間離れした絶世の美男美女のカップルになるので通りを歩いている人々は遠巻きに立ち止まって見入っていた。
「うおー、マーリン、凄い綺麗なカップルが… 」
「アーサス!この店に入るっす。急ぐっす」
「ん、綺麗」
「マーリン、早く入らなくちゃ」
事情の知らないソロモンは、ルシファとレビアタンが堂々と人間の領域に入って来た事に対して不快感を覚えた。アーサス達がいるので、会えば街中で戦闘になる可能性も有ると思い急ぎ身を隠した。
「あらっ、今、猊下の気配がしたんだけど… 」
「猊下が、居られる」
二人は、ソロモンの気配を感じ立ち止まって辺りを見渡し気配を追っていた。
「見つけた! レビアタン、あそこだ!」
「さすが、ルシファだわぁ」
ルシファとレビアタンは、通り沿いの雑貨店に入った。
「タバサ、これ」
「あっ、アーちゃんに似合いそう」
「マーリン、何を見てるんだい」
「ん、髪飾り」
「マーリンには、可愛過ぎないかい?」
ルシファは、店を見渡し奥の隅に居るソロモンを見つけ、即座に駆け寄りソロモンの前で片膝を床に付け臣下の礼を尽くした。
「猊下、ルシファとレビアタンが御前に馳せ参じた事をお許し下さい」
「良いっすから、二人共立つっすよ」
「先ずは、この度の数々の不祥事を… 」
「ちょ、ここでは、不味いっす」
「ソロモンさん、どうしたん… ええー」
「アーサス!マーリン! こっちに来るっす!」
アーサス達が、来るとソロモンは転移魔法で王都に有る洞窟の部屋に転移した。
「うわぁ〜、ビックリした」
「タバサ、大丈夫?」
「ひっ、びっく、びえー、びえーん」
「アーリン、ごめんよ」
「ん、泣かない」
ルシファとレビアタンは、改めて膝を床におろそうとしたが、ソロモンが、尽かさず止めて椅子に座らせた。アーサス達にルシファとレビアタンが魔王軍序列1位と2位で有る事を伝えた。
「突然、会いに来て、ビックリしたっすよ。其れにさっき、ルシファが、言いかけた事で理解したっす。魔族の一部が暴走したっすか?」
「猊下、私達は、アリサベートの策略に踊らされたのですわぁ」
「誰にっすか?」
「猊下、70柱目の同胞と魔女の間に生まれた娘で名をアリサベートと申す。その者は、人間に化け助手として猊下に会っていた者です」
「「「「アリサ(っすね)!!」」」」
「じゃ、俺の呪いも?」
「うっ、魔女の森も?」
「そう。『猊下の勅命』と嘘をついて。本当に何と詫びれば良いか…… 」
レビアタンの言葉を聞き、ソロモンとアーサス達全員が、暫く放心状態の様になりショックを通り越して脱力した。
「はぁ〜。良く話してくれたっす。アリサ、アリサベートの処理はどうなったっすか?」
「猊下、今、捜しておる途中でシャローム大陸に黒竜に乗って逃げた所まで分かっております」
ルシファとレビアタンは、マーリンとタバサに[魔女の森]を襲った事は、過ちだったと詫び、森に残る瘴気取り除く為の努力をすると誓い、今回の討伐に参加した魔人は、すでに投獄されており処罰の対象になって居る事もソロモン達に告げられた。
ソロモンは、ルシファ達とアリサベートの行方を一緒に探す事を提案し、『魔族は、今後一切、どこの部族とも争ってはいけない』と命じ、【ソロモンの水晶】を取り出しルシファとレビアタンの魂に刻もうとした時、黒い煙のような物が現れ、手に魔族の角を持ったアリサベートの姿になり、持っていた角がソロモンの心臓を貫いた。
「グエッ、アリサ… なぜ、っす」
ソロモンは、口から血を吐き角の周りからは血が大量に流れ出していた。
「猊下あああああぁぁぁ」
「いやややややややややゃゃゃゃ」
タバサは、慌ててソロモンに近付き治癒魔法を掛けようとしたが発動せず、ソロモンは、暫くして息絶えた。
迎春
今年も頑張って良い作品を作れたらと思っています。
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