友とライバル
授業が終わりアーサスは、ソロモンの待つ校長室の扉を開けた。校長のリンドバーグ卿は、ソロモンと騎士服を着た青年と雑談をしていた。
「ははは、あっ、すまん、すまん、アーサス君だったね。入って座りたまえ。」
「はい、失礼します」
「校長のリンドバーグだ。…この青年の事は、近衛兵団のダン団長から聞いていると思うが、グループの指導教師も兼ねて貰う事となったジンス君だ」
「アーサスの自習や自主練の担当教師っすよ」
「父から聞いています。ジンスとお呼び下さい」
「いや、ジンス先生と呼びます。宜しく」
「ジンスは、僕達と一緒に暮らす事になったっすよ」
この後、副校長が会議の為と校長を呼び出したので、ソロモン達は、ジンスと一緒に迎えに来た馬車に乗って帰宅した。この日からアーサスの登下校には、ジンスの護衛が付く。
その頃、マーリンとタバサは、住み込みで働ける場所を探すべく学園の指導室に来ていた。そこへ偶々、書類を届けに来た生徒会長のベンジャミンが、『メイドと庭師助手の仕事なら紹介する』と言われたので住所を聞き、早速面接に向かった。
その住所は、貴族や大商人達が住む、裕福な北区に有った。門を通り屋敷のドアベルを鳴らすと執事が扉を開けた。タバサが『面接に来ました』と言うと直ぐに事務室に案内され、家族や職場経験等を聞かれたが、『ベンジャミンの紹介で来た』と言うと快く採用してくれた。侍女長のザビスタに紹介され、二人用の使用人部屋で暮らす事になった。明日から、朝食と夕食の手伝いと掃除等の雑用が与えられた。給料は安いが、学園に通う事ができ、衣食住の心配がないのでタバサは、大喜びだった。
「仕事が、決まったから良かったー」
「狭いけど綺麗な部屋」
「うんうん。此処なら、マーリンのパパも安心だよね」
「庭が広いから、パパも喜ぶ」
「あはは、そうだね」
「明日から、お仕事頑張るぞー!」
「私も頑張る」
其れから、3週間は、何事もなく過ぎたが、来週から、学年と全校生徒による序列決めのトーナメントが行われるという案内が全クラスにあった。この競技は、生徒にとっての腕試しの場になるので学生達は、お互いをライバル視し真剣に取り組んでいた。
競技開催の発表から午後のクラスは、練習試合形式となり、グループ学習の日は、アーサスを中心にマーリンとクラスメイトのアンナ、ベスとベスの幼馴染みのジョージの5人でグループを組んでいた。
「じゃ、今日からトーナメントの試合形式をとるから気を引き締めて、いつも言うけど、特殊結界に守られて死なないけど怪我したら痛いからね」
「ジンス先生、もう痛いの知ってますから!」
「耳にタコできてるにゃ」
「ははっ、…さっ、初めにアーサスとマーリン。いけるか?」
「マーリン大丈夫か?」
「うん。アーサスは、ライバル!」
「うわー、マーちゃんからのライバル宣言にゃ」
「マ、マーリン、昨日負けたのが悔しかったのか?」
「うるさい! 出てシキュエル【精霊鎌】になれ!
『主、勝ちますぞ!』
ブルン、ブルン
「目覚めよ、英知の主、栄光のエクスカリバーー!」
『はいはーい。 …やだ、またアイツと? マーリンちゃん『ブルン』って、めちゃ回してるよ』
「張り切ってるマーリンも可愛い」
召喚されたアーサスの魔剣には、魔女エクスの魂が、宿っておりアーサスの魔力を吸って独自の魔法を剣を通して放つ。
「エクス、身体強化魔法と速走魔法を頼む」
『はいはーい』
「二人共、準備はいいな。 …始め!」
マーリンは、即座に踏み出し大鎌を振り下ろした。それをアーサスは、剣で受け流し蹴りを入れるが、その動きをマーリンは、素早く後ろに飛び避けた。其れを追いかける様にアーサスは、即座に近付いて斜め上から斬り下ろすが大鎌に止められる。2人共後ろに飛び退き距離を取った。
「妖精に、なる!」
マーリンの身体から眩い光が出て背中から4枚の薄い羽が出たて、妖精の様に飛び上がり止まってアーサスを凝視していた。
「 … 妖精になったの、か?」
『あんた、『可愛い』とか思ってるんじゃない?」
「うっ、おっ、思って… 」
パチッ、パチッ
「いっ、痛い。エクス、電流は止めろ!」
『試合中に余計な事考えるからよ! プンプン』
アーサスが、剣を落としかけたのを瞬時に見たマーリンは、光速でアーサスの前に現れ大鎌を振るったが、紙一枚の差で裂けられてしまった。マーリンの無表情な顔が一瞬歪んだ。
「あっ、ぶねー」
二人同時に距離を取り睨み合うがアーサスが一歩速くスタートを切りる。
「エリザ、闇纏で絡めろ!」
『了解』
黒い霧の様なものが剣から漏れ、マーリンを絡め取り動きを阻止した。そしてアーサスがマーリンの喉元に剣を突きたてる。
「負けた。次は、必ず勝つ!」
マーリンは、アーサスが引き留めようとしたのを振り切リ何処かへ行ってしまった。
『あの子、相当負けず嫌いねエ』
「…… 」
マーリンは、悔しかった。アーサスが、全力ではなく手を抜いて戦って勝った事が、許せなかった。自分の弱さが、許せなかった。手を抜かれたのに負けた事が、悔しかった。
『主、泣くでない。我は、武器になると弱い。サラマンダーの方が、戦力になりうる』
「分かってる。サラマンダーを使うのは、最後の一手にしたい」
「我は、どうすれ、おお、そうであった、土の精霊なら武器に良いはず。 主、精霊王に… 』
「ん、分かった。パパに聞く」
その日から仕事が早く終わった夜に、精霊王に連絡を取る為[風の精霊]に会いに学園都市の外れにある森までに出向いた。何故なら、風の精霊は、言葉を紡いで風に乗せるので精霊王への連絡手段となっていた。
『うーん、ごめんね、ごめんね、マーリン。まだ王様に届かないみたい』
「ん、まだ、待てる」
『マーリン、マーリン、知ってる?知ってる?』
「ん? なに?」
『川辺に綺麗な魔物が来てる,来てる』
『僕も知ってる、知ってる。偶に見る』
「見たい、どこ?」
『『あっち、あっち』』
暫く妖精達に連れられて歩くと、満月の光に照らされた白銀の魔物が、水を飲んでいた。マーリンは、息をするのも忘れそうな程美しい魔物を、近くで見ようとゆっくり近付いた。
精霊達は、『危ない、危ない』と言って騒いでいたが、マーリンは、モフモフの毛並みを触りたい衝動が抑えられなかった。フッと魔物が、振り向きマーリンと目が合った。
『マーリン、それ以上は、危ない!危ない!』
「ん、大丈夫」
『帰ろう、帰ろう』
「だめ、モフモフする」
『マーリン? モフ、モフモフ?」
マーリンが、近付いてもその魔物は、動く気配もなく、むしろ待っているそぶりを見せた。
『マーリン? どうしてこの森に居るんだ?』
『わあー、話せる、話せる』
「黙って! 何故? 名前言ってない」
『あっ、…よっ、妖精が呼んでいただろう』
「うん、貴方は?」
『アーサスだ』
「ん? クラスメイトと同じ?!」
『あっ、……知ら無いな』
「ねえ、モフモフして良い」
モフモフの意味を知らない魔物化したアーサスは、暫くぶりにマーリンと話したいので了承してしまったが、マーリンに身体全体を激しくモフられて『恥ずか死ぬ』思いだったのは言うまでも無い。
アーサス君は、ライバルの意味分かって無いでちゅね。
女心もわかって無いっすよ




