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明空の先の日常にて  作者: ふくろうの祭
41/49

41話 煩慮

ビックリする位間が空いてしまいました。。。

すみません。。。

引き続き龍乃心と神来社は、二人で館内を回っていた。

但し、先程までとは違い、手を繋ぐ事はしなくなっていた。


「それにしても…町ひとつとってみても、こんなに歴史や文化があるんだなぁ…」


龍乃心は思わず感嘆の言葉を漏らした。


「本当だね。なんか不思議な感じだよね」


神来社もこれに同意した。

しかし龍乃心にはひとつだけ疑問があった。


「ここいらの神社とかお寺も沢山資料があるのに、あの神社の事は一つもないな…」


「神社…?」


「えっと…何て言ったかな…篤君からこの前教えてもらったんだけど…」


龍乃心は必死に思い出そうとしたが、程なくして諦めてしまった。

みんな一通り見て回ると、一階のロビーで集まった。


「ふぅー、やっと見終わったー! だいぶ歴史学んだわ」


「いや、あんた全然学んでなかったでしょ! ろくにメモも取らずにとっととここに来て休んでたの知ってるんだからね」


「んだよ、うるさいな~。俺は後ろを振り向かないの! 前だけ向いて生きていたいの!」


相変わらず櫻井と達也が言い合ってるのをよそに、篤がだいぶグッタリした様子で椅子に座っていた。


「篤君、大丈夫か?」


篤のただならぬ様子に驚きつつも龍乃心は声を掛けた。返事をするのも辛そうな様子である。


「おいおい、あっちゃんどうした!? 具合悪ぃのか!?」


遅れて篤の異変に気付いた達也と櫻井は、慌てて篤の傍に駆け寄った。


「だ…大丈夫…だよ…。少し休んだら…落ち着くから…」


そう言葉では言うものの、誰もが心の中で「いや、どう見ても大丈夫じゃないだろう」と突っ込んでいた。


「どうしましょう…。ここはひとまず先生達に連絡を…。いや、でも近くの病院に連れて行く方が…」


「どうやって連絡とんだよ。確かここから先に中継地点があって、そこで一人先生が居るハズだから、そこまで連れて行った方が早いだろ」


「え、あんたなんでそんな事…」


「何言ってんだ、しおりに書いてあったろ。つーかバスん中でお前、俺に読め読めうるさかっただろーが!」


「あ…そっか」


どうやら櫻井は想定外の事態に陥ると、途端にポンコツになってしまう様だ。


「あの、すみません、友達が具合悪くなっちゃって…」


達也は博物館の職員の一人に事情を説明した。


「ホントに辛そうね…。でもごめんなさい、今丁度車が外に出ちゃってて…」


「マジっすか、タイミングぅ…。出張かなんかスか?」


「それが何人かで車に乗ってゲームセンターに行っちゃって…」


「いやいや、そいつら仕事中に何してんの!? その馬鹿共戻ってきたら殴ってやる!」


八方塞がりになってしまい、達也が悩んでいると何を思ったのか龍乃心は篤をちょいと負ぶった。


「え…あの、明空? 急にあっちゃんを背負ったりなんかしてどうした…?」


「…? 何って…篤君背負って先生がいる所まで行く」


「いやいやいや、何言ってんだよ明空! ここで救急車呼んでそれ待ってる方が早いだろ!」


「…少しでも早く医者に見せた方が良いだろ。それにさっき職員の人に教えてもらったけど、先生のいる場所のすぐそばに病院があるみたいだ。だから、先生に状況を説明した上で病院に連れてく」


「バカ言わないで明空君! ここから先生のいる地点まで徒歩25分とあるわ! ましてや篤君を背負って歩いたら、もっと時間がかかるでしょ! 絶対にここで救急車を待っていた方が良い!!」


「…25分? そんなにタラタラ歩いてられないよ」


「…?」


「40秒で着く!」


そう言うと、龍乃心は外に出て、一瞬少し体を屈ませたかと思うと、次の瞬間物凄い勢いでダッシュして行った。

あっと言う間に龍乃心は遥か彼方に消えてしまった。

博物館に残された3人は唖然とした表情で、龍乃心達が消えて行った先を見つめていた。


「…え、これ俺達どうすればいいの…?」


「…まぁとりあえず後…追いましょう…。杏、行きましょう」


「…えっと…うん」


その頃、龍乃心は篤を背負ったまま、道を爆走していた。

道行く人達は、その爆走ぶりを見て良く分からない動揺を感じた。

やがて、坂本先生が待機している中間地点が見えてきた。


(1秒でも早く…そして篤君に極力負担が掛からない様に力をうまく逃がす…)


頭の中で独り言を呟きながら徐行態勢に入った。

一方中間時点で待機していた坂本先生は、こちらに向かってくる何かの存在に気付いた。


「…んん? な、なんだ、すごい勢いでこっちに向かってきてる様な…」


そう思う間もなく、坂本先生の眼前には狂った様に猛スピードで突っ込んでくる龍乃心の姿が飛んできた。


「えぇぇぇぇぇ!!? ちょちょちょちょ、止まれェェェェェ!!!」


龍乃心は上手い具合にスピードを殺し、坂本先生の目の前で停止した。


「あ、坂本先生、こんにちは」


「こ、こ、こんにちはじゃないわぁぁ!! お前、イノシシでも突っ込んできたのかと思ってビビっただろうが!」


「…あ、なんかすみません、急いでたので…」


「急いでたって…あれ、そういえば明空、なんで一人なんだ? 朝倉達はどうしたんだ? というかなんでお前法華経を背負ってんだ?」


「実は篤君が、博物館で倒れて…」


「倒れた!? 大丈夫なのか?」


「いや…自分医者じゃないんで分からないです。とりあえず病院に連れて行きたいんですけど…」


「あ、あぁ、そうだな。確かすぐ近く病院があるから、先生についてきなさい!」


こうして龍乃心は坂本先生に連れられ、篤を病院に運んだ。

幸いにも大事には至っていない様で、坂本先生は篤の両親に事の状況を連絡した上で、龍乃心に元のルートに戻る様に指示した。


「あの…篤君は…」


「あぁ俺の方で法華経の両親に連絡したし、病状も大した事無いみたいだ。お前は朝倉達と合流して、遠足に戻れ」


「でも…」


「心配すんな、ここは先生達に任せとけって!」


「…分かりました、ありがとうございます…」


こうして龍乃心は病院を出て、元のルートを目指して歩き始めた。

歩くスピードは、篤を背負いながら車の如く猛烈なスピードで走った時とは比べ物にならないほどにゆっくりとしたものだった。


「…達也達と合流しなきゃ…」


思い出した様に歩く速度を上げながら、元の経過地点を目指した。

※次の更新は2月15日(月)の夜頃となります。

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