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明空の先の日常にて  作者: ふくろうの祭
3/49

3話 元治

「おーい、待てよ明空ー!!」


やっとの思いで、元治は明空に追いついた。

龍乃心の歩くスピードが速かったらしく、追い付くのに時間がかかったようだ。


「…? なんか俺に用?」


「なんだよ、そっけねーな! せっかく追いかけたってのに」


「いや…だから、俺を追いかけて来た理由は何?」


「まぁ…特に理由はないんだけどさ…」


「…お前はバカなのか?」


龍乃心が言わずとも、元治はバカである。


「あ、そうだ、明空って辰じいのひ孫だったのな!! 俺びっくりしちゃったよ!!」


「辰じい…あぁ、あの暴力じじいの事ね」


「はははは、暴力じじいは言えてるよな!! 辰じいの空手教室に通ってたんだけど、まぁ厳しくてさぁ!」


「空手教室…? あぁ、そんな事言ってたかもな。もう辞めたって聞いたけど」


「そうそう、辰じいの奴、腰をやっちまってさ!! ただ、道場はそのまま残してくれるって話だから、そこを使わせてもらってるって訳よ!」


「ふーん」


「ふーんて! 明空、自分の爺さんの事、全然興味ねぇな!! あれでも、一応俺が尊敬する師匠なんだから、あんまりな態度されると俺も傷付いちゃうぜ!?」


「やめとけって、あんな暴力じじい…。大体、師匠ってガラじゃないだろ?」


「まぁじいさんの癖して、子供っぽい所もあるし、なにより怒りっぽいしな。 それでも、俺に空手を教えてくれた師匠だ! そこに関しては後悔してねぇ!」


「…そりゃ良かったな。で、俺にどうしろと?」


「いや、別にどうしろとは特に無いんだけどね」


「…無いのかよ。どんだけ空っぽの状態で、俺を呼び止めたんだよ…」


「まぁそこは気にすんなって! 明空ってなんでロンドンからわざわざこんな田舎に来たんだよ?」


「…父さんについて来ただけだよ」


「へぇー、母ちゃんとはいないの?」


「母親と双子の妹がロンドンに残ってる」


「じゃあ、今は母ちゃん達と別々に暮らしてんのか! 父ちゃんは何の用事でこっちに来たんだ?」


「…仕事だよ」


「なんの仕事?」


するといよいよ悪意の無い質問攻めを受け続けてきた龍乃心は、我慢ならぬの様子で元治を睨みつけた。


「お前、さっきからなんなんだ。ずーっと質問してきて。何がお前をそんなに駆り立てるんだよ!」


すると元治はキョトンとした顔で龍乃心の顔を見つめていた。


「いやだって…友達の事を知ろうとすんのは、別に普通の事だろ?」


「友達…?」


龍乃心は、元治の言っている事が理解出来なかった。


「いつ俺がお前と友達になった…?」


「いつって…昨日俺を助けてくれた時だよ!」


「昨日…?」


「ばっきゃろう! お前、男は一度言葉を交わしたら、もう友達なんだよ!」


「聞いたことないんだけど、そんな事」


「俺の父ちゃんが言ってたんだ」


龍乃心は、呆れ顔をしてため息をついた。


「俺はお前と友達になる気はない」


「なんでだよ! 俺と友達になるのがそんなに嫌か!?」


「別にそういう訳じゃ…。必要がないだけだ」


「おま…さっびしい奴だなー!!」


「お前は殴られたいのか…?」


「友達になるのに理由なんてないだろ!?」


元治の真っすぐな言葉に、龍乃心は戸惑っていた。

なぜ、自分なんかに興味を持ってくるのかを。


「いや…俺、友達いた事ないし…そういうの分からないから…」


「なんだよ、お前ぼっちだったんかよ~!」


「おい、その言い方やめろ…」


「つー事はだな、俺と友達になる理由はないけど、ならない理由もない訳だろ?」


「それは…」


龍乃心は答えに窮してしまった。


「じゃあ決まりだな! 俺とお前は今日から改めて友達だ! 宜しくな!」


「あ…うん」


「じゃ、そういう事だから! じゃあまた今度なー!!」


そういうと元治は走って行ってしまった。

龍乃心はあっけに取られたまま、道の真ん中で立ちすくんでいた。


「変なやつ…」


ポツリとそう呟いてみたものの、龍乃心は不思議と嫌なやっとの思いで、元治は明空に追いついた。

龍乃心の歩くスピードが速かったらしく、追い付くのに時間がかかったようだ。


「…? なんか俺に用?」


「なんだよ、そっけねーな! せっかく追いかけたってのに」


「いや…だから、俺を追いかけて来た理由は何?」


「まぁ…特に理由はないんだけどさ…」


「…お前はバカなのか?」


龍乃心が言わずとも、元治はバカである。


「あ、そうだ、明空って辰じいのひ孫だったのな!! 俺びっくりしちゃったよ!!」


「辰じい…あぁ、あの暴力じじいの事ね」


「はははは、暴力じじいは言えてるよな!! 辰じいの空手教室に通ってたんだけど、まぁ厳しくてさぁ!」


「空手教室…? あぁ、そんな事言ってたかもな。もう辞めたって聞いたけど」


「そうそう、辰じいの奴、腰をやっちまってさ!! ただ、道場はそのまま残してくれるって話だから、そこを使わせてもらってるって訳よ!」


「ふーん」


「ふーんて! 明空、自分の爺さんの事、全然興味ねぇな!! あれでも、一応俺が尊敬する師匠なんだから、あんまりな態度されると俺も傷付いちゃうぜ!?」


「やめとけって、あんな暴力じじい…。大体、師匠ってガラじゃないだろ?」


「まぁじいさんの癖して、子供っぽい所もあるし、なにより怒りっぽいしな。 それでも、俺に空手を教えてくれた師匠だ! そこに関しては後悔してねぇ!」


「…そりゃ良かったな。で、俺にどうしろと?」


「いや、別にどうしろとは特に無いんだけどね」


「…無いのかよ。どんだけ空っぽの状態で、俺を呼び止めたんだよ…」


「まぁそこは気にすんなって! 明空ってなんでロンドンからわざわざこんな田舎に来たんだよ?」


「…父さんについて来ただけだよ」


「へぇー、母ちゃんとはいないの?」


「母親と双子の妹がロンドンに残ってる」


「じゃあ、今は母ちゃん達と別々に暮らしてんのか! 父ちゃんは何の用事でこっちに来たんだ?」


「…仕事だよ」


「なんの仕事?」


するといよいよ悪意の無い質問攻めを受け続けてきた龍乃心は、我慢ならぬの様子で元治を睨みつけた。


「お前、さっきからなんなんだ。ずーっと質問してきて。何がお前をそんなに駆り立てるんだよ!」


すると元治はキョトンとした顔で龍乃心の顔を見つめていた。


「いやだって…友達の事を知ろうとすんのは、別に普通の事だろ?」


「友達…?」


龍乃心は、元治の言っている事が理解出来なかった。


「いつ俺がお前と友達になった…?」


「いつって…昨日俺を助けてくれた時だよ!」


「昨日…?」


「ばっきゃろう! お前、男は一度言葉を交わしたら、もう友達なんだよ!」


「聞いたことないんだけど、そんな事」


「俺の父ちゃんが言ってたんだ」


龍乃心は、呆れ顔をしてため息をついた。


「俺はお前と友達になる気はない」


「なんでだよ! 俺と友達になるのがそんなに嫌か!?」


「別にそういう訳じゃ…。必要がないだけだ」


「おま…さっびしい奴だなー!!」


「お前は殴られたいのか…?」


「友達になるのに理由なんてないだろ!?」


元治の真っすぐな言葉に、龍乃心は戸惑っていた。

なぜ、自分なんかに興味を持ってくるのかを。


「いや…俺、友達いた事ないし…そういうの分からないから…」


「なんだよ、お前ぼっちだったんかよ~!」


「おい、その言い方やめろ…」


「つー事はだな、俺と友達になる理由はないけど、ならない理由もない訳だろ?」


「それは…」


龍乃心は答えに窮してしまった。


「じゃあ決まりだな! 俺とお前は今日から改めて友達だ! 宜しくな!」


「あ…うん」


「じゃ、そういう事だから! じゃあまた今度なー!!」


そういうと元治は走って行ってしまった。

龍乃心はあっけに取られたまま、道の真ん中で立ちすくんでいた。


「変なやつ…」


ポツリとそう呟いてみたものの、龍乃心は不思議と嫌な気分では無かった。


「龍乃心、お前に友達ができるなんてなー!」


龍乃心が声がする方を振り返ると、父親が笑いながらこっちに歩いてきた。


「仕事はどうしたんだよ? ってか、全部見てた?」


「まぁね。仕事はもう終わって今から帰る所だよ」


龍乃心がげんなりした顔で再びため息をついた。


「そんな顔するなって。友達は良いもんだぞ。一緒に遊んだり、時に助け合い。まぁたまに喧嘩もするだろうけど…」


「いや、俺は黙って盗み見してた父親にげんなりしてるんだけど」


「…すみません」


威厳の欠片も無くなってしまった父親と、不機嫌気味の息子はそのまま、自分達のアパートに帰って行った。


一方、家に帰った元治は、今日龍乃心と友達になった事を父親に報告していた。


「でさ、でさ、俺そいつと友達になったんだよ! あ、明空って名前なんだけどさ! やっぱ父ちゃんの言う通り、一度言葉を交わしたら友達なんだなぁ!」


「おぉよ、おぉよ! 俺の言う通りだろ!? 俺の言う事に間違えなんざなんだよ!」


「まぁ度胸試しの件は、散々みんなに言われたけどな」


「それは…まぁ置いといてだな! 元治に友達が出来たっつー事で乾杯といこうじゃねーか! おーい、母さん! ビール二杯持ってきてくれぇ!」


すると、元治の母親は鬼の形相で元治の父親を睨みつけていた。


「…あんた、元治にビール飲ませるってんじゃないだろうね…?」


威勢の良かった元治の父親は急に、蛇に睨まれた蛙の様になってしまった。


「い、いや、ちが…。その、二杯ってのはだな…その、ビールを飲めない元治の分まで俺が飲んで、一緒に祝杯をあげよー…みたいな? 気分だけお酒を酌み交わそうぜー…見たいな? そういった感じの事をですね、私は父親として考えていた訳でしてね…」


「つくなら、もっとマシな嘘つきな! このろくでなし!」


「ろくでなし…ろくでなし…はは、俺はろくでなし…」


父親がまるで呪文を唱える様に、繰り返し、繰り返し呟く光景を、元治はいたたまれない気持ちで見ているのであった。


「そういや、明日は転校生が来るっつってたなー! どんな奴が来るのか楽しみだなー!」


その転校生と、ついさっき友達にまでなっていた事とはつゆ知らず、元治は転校生に胸を躍らせているのであった。

※次の更新は9月23日(月)の夜頃となります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 誤字報告では、うまく抜粋できなかったため、こちらに書きます。 『やっとの思いで、元治は明空に~』から『~龍乃心は不思議と嫌な』まで丸ごと繰り返されています。 意図的ならすみません。
2019/12/12 10:44 退会済み
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