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明空の先の日常にて  作者: ふくろうの祭
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28話 リベンジマッチ

「いや…あの…悪かったって…」


龍乃心は申し訳なさそうにしながら、元治に謝っていた。


「この焼きそばの恨み、一生忘れねーからな!」


どうやら先程の金魚掬いで、金魚が舞った結果、元治が持っていた焼きそばにかかってしまった事を根に持っているらしかった。


「いや、元々それ俺がお前にあげた奴だからな」


「うるせーな、一度貰ったもんは、俺のもんなんだよ! 文句あるか!?」


「お前…ここまでくると清々しいな…」


俺達は金魚すくいを終えてまた祭りの中を巡り出した。

結局先程の金魚すくいでは、龍乃心は2匹を掬うに留まった。

春樹の方は20匹以上掬ったらしく、金魚掬いのおっさんが涙になっていた。

掬った金魚に関しては、持ち歩いていると弱ってしまうので、預かってもらい、帰りに受け取る事にした。


「春樹は相変わらず容赦ねーよなぁ。おっちゃん泣きそうな目してたぜ?」


「真剣勝負の場です。あそこで手を抜いてしまっては相手に失礼というものです」


「いやいや、熱量が重すぎるよ。あのおっちゃん、そこまでの熱量受け止めきれてなかったから」


「何事も程ほどにね。ってあれ、あそこに居るのって…」


澄玲が指差す方を見ると、健太少年が何やらかき氷の屋台で働いていた。

彼は、春のドッチボール大会の際に、龍乃心と激闘を繰り広げた豪傑である。


「うーっす、健太じゃん。手伝いかなんか?」


「ん…?」


不愛想な顔でこちらを見ると、龍乃心達に気付いたらしく、「あぁ」という声を漏らした。


「親がかき氷の屋台出すっつーから、その手伝いだよ」


「はぁー、偉いじゃん健太」


「別に偉かねーけど…」


達也と健太は、割に仲が良いらしい。


「ちょっと待て、健太がかき氷の手伝いしてるって事は、健太はタダでかき氷を食えるって事だろ?」


「んな訳ねーだろうが。相変わらず訳の分からねー事ばっかり言ってんな、てめぇは」


「健太がタダで食えるって事はだ、それを俺に横流ししてくれても何の問題もねぇーんじゃねーか!?」


「だからタダじゃねーっつってんだろーが! 俺の話を聞け、アホンダラ! 暑さで頭やられてんのか、おめぇは!」


「いやぁ健太、実はこいつさぁ…」


達也は笑いながら、元治の現状を説明した。

その話を健太は、やや気の毒そうな顔をしながら聞いていた。


「元治お前…どこまでも残念な奴だな…」


「うっせんだよ、バカ健太ぁ! 祭りじゃあ、小銭をちまちま使ってる様じゃダメなんだよ! ぱーっと使って、花火の様に一瞬の夜空を煌めくもんだろーがよ!」


「煌めく? どこが?? あんなしょぼくれた顔しながら、序盤でゲームした挙句、周りに食いもんを強請る様な奴が、一体どうやったら煌めくってんだよ」


「だーって、腹減って来たんだもんよぉぉ!! 空腹は誰にも止められねぇんだよぉぉ!!」


「おい、もう分かったから、ここで騒ぐな! 他の客に迷惑だからどっか行け!」


「ほら、健太怒っちゃっただろ? 元治行くぞ」


「待ってくれぇぇぇ。俺にかき氷をぉぉぉ…」


達也に連行され、あえなく元治は退場させられた。


「じゃあ私達はかき氷頼もうか♪ 健太、さっさと頂戴」


「オイコラ、なんで命令口調? 普通に頼め。春樹は?」


「僕はかき氷のシロップ抜きで」


「シロップ抜きってなんだよ! おめぇは家で氷かじってろ!」


すると、健太と龍乃心の目が合った。

この二人、ドッチボールで戦いを交えて以来、会話らしい会話をしていない。

別に喧嘩しているワケではないが、話す機会を見失ったまま、今日まで来てしまった様である。


「お、この子か!? 健太をドッチボールで負かしたってのは!」


横から、健太の父親らしき男が突然話に入ってきた。

笑ってしまう程、健太と顔がそっくりである。


「うるせぇな、あれはマグレだっつってんだろうが! 次やったら、負けねーし!」


健太は親の居る前で、少し見栄を張って見せた。

割に子供っぽい所もあるんだなと龍乃心は、内心思っていた。


「…明空はなんか頼むのか?」


「…えっと、じゃあ…ブルーハワイ」


「…あいよ」


ぽつりぽつりと、事務的な最小限の言葉を交わし、かき氷のオーダーが入った。

その後も会話が続かない。

健太は慣れた手付きで、氷をかき氷機にセットすると、ものすごい勢いで、レバーを回し始めた。

すると、みるみる内に皿の中にかき氷の山が錬成されていった。


「…へぇー、すごいなぁ」


龍乃心は思わず、感嘆の声を漏らした。


「はっ、そりゃあお前らが到底及ばない程、練習してっからなぁ」


健太は、先程のドッチボールの件の反撃と言わんばかりに、龍乃心を挑発してみせた。


「…何?」


龍乃心も、カチンと来たのか、健太に対して、若干の敵意を向けた。


「勝負してみっか? かき氷対決」


健太からの果たし状である。

かき氷削りで勝ったからといって、一体何の意味があるのだろうかという疑問はさておき、元来負けず嫌いな龍乃心は、この果たし状を受け取る事にした。


「言っとくけど、今回も負けない」


「はっ、言ってろ」


「ありゃー…なんか面倒くさいイベント勃発したよ」


面倒くさそうな顔をしながら、冷ややかに澄玲に見られているとも知らず、二人の間に戦いの目蓋が、

切って落とされた。

※次の更新は05月25日(月)の夜頃となります。

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