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明空の先の日常にて  作者: ふくろうの祭
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23話 真夏の虫捕り少年どもよ ~夜間の部~

家で一休みした龍乃心は、再び元治の家に向かうべく、準備をしていた。


「はは、なんだ龍乃心、やっぱりなんだかんだ言ってまた行くんじゃないか」


「だから、別にそういんじゃないって…とっとと帰ってくるよ」


「いいじゃないか、夏の風物詩。虫に刺されるから、ちゃんと虫よけスプレーしてくんだぞ」


「もうしてるよ」


「結構準備万端だな…」


こうして龍乃心は、家を出て元治の家に向かった。

元治の家に着くと、何故か春樹も居た。


「あれ、春樹も居たの?」


「元治君からよばれましてね。今丁度僕も来た所です」


「そうなんだ。春樹も虫捕り好きなのか?」


「ふふふ、昆虫採集は夏の子供の義務みたいなものですからね」


「…日本の子供はみんなそうなんだ…。元治だけじゃないんだ…」


「なんでそんなショック受けた顔してんだよ! 別に虫捕りする文化があったって良いだろ!」


「トラップは仕掛け済みなんですよね。では、早く例のスポットに行きましょう」


俺達は、虫かごと虫捕り網を携えて、トラップを仕掛けた場所に向かった。


「ところで、春樹はなんで夕方にトラップ仕掛ける時には来なかったんだ?」


「塾と被ってしまって、どうしても間に合いませんでした…」


「なんだよ、春樹。夏休みに勉強するなんざ、脳みそに良くないぜ!?」


「元治君はもう少し脳みその稼働率を高めた方が良いと思いますよ」


「なんだそれ、俺の脳みそが普段活動してないみてぇじゃんか」


「え、元治君、気付いてなかったんですか?」


そんな会話をしながら、俺達は夕方トラップを仕替けたポイントに向かった。

向かう途中、各自の近況報告をし合った。

元治は、相変わらず勉強もせず、魚釣りやら虫捕りやら、全力で遊びほうけていたらしい。

案の定、元治は夏休みの宿題もろくにしておらず、春樹を当てにしているらしかった。

春樹はこの通り真面目な性格なので、毎日長時間ではないものの、塾やら自宅やらで勉強をしていた。

夏休みの宿題も、自由研究を残して、全て終わらしている程である。

そして、勉強の合間を縫って、昆虫採集やら、なんか良く分からない遊びに興じているらしかった。


「さぁ着いたぜ! 早く、トラップを見よう!」


そういうと、元治はカバンに入れていた懐中電灯を取り出し、ようやく灯りをともした。

正直、龍乃心と春樹は「最初っから付けとけよ」と、心の中で思っていた。


「おぉ、いるいる!」


元治が、トラップを仕掛けたクヌギの木をライトで照らすと、そこにはカブトムシとコクワガタ、ノコギリクワガタ、その他カナブンなどの昆虫達が集まっていた。


「こ…これがカブトムシ…。なんかごついな…」


龍乃心は、初めて見るカブトムシの姿に、少し怖気づいていた。


「ごついて! この角の形といい、爪の鋭さといい、このフォルムが良いんじゃん!」


そう言って、元治が捕まえて見せたカブトムシは、その黒く美しい光沢のボディに、鋭い角を携え、どこか誇り高き戦士の様にも感ぜられた。


「それには同意します。カブトムシの姿には我々少年のロマンを感じますからね」


珍しく、元治と春樹の意見が一致しているらしかった。


「そういえば…5月位に、元治に見せてもらった5月人形の形に似てる気がする」


「明空君、良い指摘です。5月人形は、武士の兜とモチーフとしたものですが、カブトムシも、その姿が武士の兜に似ている事から、カブトムシと名付けられたと言われています」


「へぇー、武士の兜かぁ…」


「おいおい、逃げちまうから、とっとと捕まえてちまおうぜ!」


そう言って、3人は元治が持参した虫かごに次々と放り込んでいった。


「元治…これ、捕まえてどうすんだよ?」


「どうするって、家で飼うに決まってんだろ?」


「あ…やっぱりそうなんだ…」


「僕は、捕まえたカブトムシとクワガタを観察し、研究した内容をまとめて、自由研究として提出する予定です」


「自由研究のテーマか…」


「そういや、明空って自由研究ってやってんのか?」


「やってるよ」


「マジか! どんな奴?」


「毎日、決まった大きさの木を蹴っ飛ばして、その飛距離を計測してる」


「いや、なにそれ、筋肉研究!?」


「俺も自由研究って良く分からなかったんだけど、父さんがなんでも良いって言うから…」


「何でもっつっても、限度ってあんだろーが!」


「まぁ…初めての自由研究なんだし、良いんじゃないですか? やってない人よりは」


「うぐっ! お、俺はまだテーマを吟味してる途中なんだよ!」


「…そうですか」


「おーい、なんだその間は! その間で今、どれだけ俺をバカにしやがった!?」


そんな2人のわきゃわきゃを尻目に、龍乃心は虫かごの中でうごめく、カブトムシとクワガタをじーっと眺めていた。

それらは、固く鎧の如き体をキシキシと軋ませながら、虫かごの中を這いずり回っていた。

最初は、なんで虫なんか捕まえるのか、一切理解できなかった龍乃心だったが、虫かごの中でその逞しく、カッコイイボディを見せつけられ、なんとなくその魅せられつつあった。


「確かに…少しカッコいいかも…」


「だべ!? だべ!? いやー、明空もようやくこいつ等の魅力が分かってきたかー! よし、残りのトラップの虫も捕まえたら、俺んちに戻って、戦わせてみようぜ!」


「?? 戦わせるって何を?」


「何って、こいつらに決まってんだろ?」


そう言って、元治はドヤ顔で虫かごを指差した。


「カブトムシを…戦わせる…?」

※次の更新は03月02日(月)の夜頃となります。

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