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お狐様と異世界旅行記  作者: 双葉
おバカなハルとお狐様
6/6

6 ウサギだけど小屋守ってます



 満杯になった箱を、せっせと運ぶ妙な恰好をした彼女。黒い衣装はテカテカで陽を反射し、下半身は網タイツで身を包み、頭にはうさ耳がありピコピコしてる。


 見た目は私と同い年かちょびっと下くらい、露出度が少し……と言うかめちゃくちゃ激しい、それにどこからそんなパワーが出てるのか、華奢な身体をしてるのに二キロ……いや三キロ以上ある雑草満杯の箱を軽々と持ち、早足で運んで行く姿はさらに謎を呼ぶ。


 私の『アナタ誰?』から返ってきた言葉は『ウサギですー』だった。しばらく唖然としてたけど、手伝ってくれる事自体は助かっていて、気がつけば雑草はほとんど刈り終わっていた。


「あ、あのーウサギさん?」


「はーい、何でしょうかー?」


「お手伝いありがとうございました、助かりました」


「いえいえ〜、こちらこそわざわざありがとうございま〜す」


 わざわざ? 何でそんなセリフが出てきたんだろう。もしかしてここの関係者の人なのかな、雑草の捨てる場所とか教えた訳じゃないのに、まるで最初から知ってる様に動いていたし。


 今だって道具を片付けたり、手で拾いきれなかった草を箒で掃いてるし……聞くのが一番早いよね。


「あ、ウサギさんはここの関係者……とかですか?」


「はい〜そうですよ〜、私この小屋の守り神をしてます〜」


「え、守り神!? その恰好で!?」


「恰好?」


 ウサギさんは自分の服装を見つめる。いやぁ、私からしてもかなり刺激的な姿なんだよね、いくら周りに誰も居ないからってバニースーツはどうなんだろう。


 それに守り神って言うくらいだし、シオンと同じ獣って訳だよね? あれ? 確か守り神と獣はまた別だっけ? その辺がまだちょっと曖昧だなぁ、またシオンに聞いてみよう。


「いや何でもないです! それよりウサギさんのお名前を聞いても? 私はハルです」


「よろしくお願いしますね〜、私は『ティディ』と言います〜」


「おぉ……可愛い名前ですね」


 ご飯が出来るまでしばらく話し込んでいた私達。いつまで経っても掃除から戻らないからか、シオンは心配して外に出てきたんだけど、ティディさんを見ても特にビックリすることも無く、二人分だった晩御飯を追加で作ってティディさんにも振舞った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ふぅー、食べたぁ」


「ご馳走様でした〜」


「ほら、食器を貸して?」


 ご飯を食べながら色々話をした私達。ティディさんはこの小屋と、異界の森出口にある小屋の守り神をしていて、毎日往復してると聞いて私はビックリした。まだ森の大きさを把握していないけど、シオンが言うには迷うと割と面倒なくらい大きいらしい。


 ちなみに私が記憶を失う前、ここを利用していたのを知っていたらしく、ティディさんは顔を何となくだけど覚えていたようだ。ただやっぱり言われちゃったのは『以前とは少し雰囲気が違いますね〜』だった、そんなに変わったのかなぁ……と考えちゃうけど、シオンは『ハルはハルだから』とティディさんに話した。


 当時の私とは会って話した事は無いみたいで、今回こうやってご飯をしたのも初めてだった。ティディさんの話を聞く度に『頑張り屋さんだなぁ……凄い』とばかり連呼してた、語彙力無くてごめんねティディさん。


 シオンは私達の食器を洗いに台所へ。私とティディさんは小屋の床を磨き始めた、ちょっと汚れてたのが気になったみたいだから、『私も手伝います!』と手を挙げて参戦。頑張ってるティディさんの話を聞いた後だと、見捨てる訳にもいかず……気合いを入れて板をゴシゴシと磨いていく。


「よい……しょ、よい……しょ」


「ティディさん可愛いかよッッッ」


「ハル、あんたちょっとうるさいよ?」


 おかん属性を発揮するシオンも凄いけど、ティディさんは一人で小屋二つを維持してる、守り神とは言え純粋に凄いし控えめに言って最強だ。出来る女を通り越して神の女……自分でも何言ってんのかわからないや。


 床磨きをそこそこした後、


「それでは私はあっちに行きますね〜」


「え? あっちとは……もう一つの小屋ですか?」


「そうですよ〜」


「もう暗いですよ? 危ないですし!」


 しかし、私の言葉には耳を向けず『では〜』と言いながら扉を閉めた。マイペースな人だなぁとは思ったけど、暗闇に動じないとは恐れ入った、私なら絶品に嫌だけどティディさんは余裕なんだろうね。


 床にお布団を敷いていくシオン、私は何となく小窓を開けて空を眺める。小屋に着く前は雨雲があったのに結局降らず、もしかしてシオンに騙された? とか思っちゃった。狐に騙された感覚ってこういう事?


「シオンは私を騙したの?」


「悪い奴を騙す事があっても、あんたを騙したりはしないさ」


「いや雨降ってないし」


「天気は変わるのさ、心と同じでコロコロとね?」


「よく分からないんだけど……」


 何か『アハハハッ』と笑われた。ムカついた、流石の私でも怒る時は怒るんだからね?


「シオン……許すまじだよおお!!! そのおっぱいは飾りかあああ!!?」


「ちょっと!? ハル落ち着きなって!!」


 前回ベッドで笑い殺されそうになったんだから、これくらいの仕返しは許されるよね? 人間様を舐めるとはいい度胸じゃないの!


 結果、私は逆襲にあってしまい白旗を振り回す。力の差を見せつけられたよ、やっぱりシオンは強かった。



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