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Prologue “Pot-Pourri”

 ポプリ、というのはもともと、草花を乾燥させて瓶に詰めたもののことを呼んでいたらしい。

 俺の母親は昔から小洒落たものを家に飾るのが趣味だったらしく、たびたびそれを自作してはリビングの机や家具の上に置いていた。

 母親曰く、良い香り……親父曰く、臭い香り。

 正直、俺も幼いながらに瓶の中身の匂いは少々きつかったように感じていた。

 そして、これは随分と後になってから知ったことだけれど、ポプリはフランス語で書くと”pot-pourri”、その意味は「ごった煮料理」。

 またの名を――「腐った鍋」。


 これはあくまでも俺の幼少期の話であって、今の俺の家にはそんなものは存在していない。

 小瓶を飾る母親も、今はいない。その小瓶にしかめっ面をする父親も、そんなものには目もくれず部屋中を無邪気に駆け回っていた妹も、そんなリビングの中心のソファでゆったりとくつろいでいた祖父も、もう誰もいない。

 全員死んだ。殺されたのである。

 四年前、小学校からいつも通り帰宅してきた俺の家は真っ赤に染まっていた。

 部屋中にあらゆる物が散乱していて、今朝まで普通に呼吸をして、普通に生活していたはずの家族は一人残らずその呼吸を止めていた。

 コロコロと、立ち尽くす俺の足元に転がってきたのは赤色で滲んだ小瓶。

 その小瓶から溢れてきた花は、生物が腐敗した死の香りを漂わせていたことを俺は今でも覚えている。

 ああ、これがポプリなのか、と。


 ポプリ――『未来人(ポプリ)』。

 死の香りを嗅いだのは俺だけではない。

 この世界は今、『未来人(ポプリ)』と呼ばれる未知の生物から侵略を受けているのである。

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