第94話 パーティー名
シャーロットが薬草採取の依頼票を俺に渡す。薬草を十枚一束で三束持ってくればいいようだ。報酬は大銅貨5枚。買取上限は30束まで。常設依頼のコッコゥが一羽大銅貨五枚だから、割はいい方か。
なお、薬草の常設依頼は一束で大銅貨一枚。一束から受け付けているそうだ。
「なぁ30束ってのは達成可能な量なのか?」
「うーん、群生地を見つければ可能といったところだな。北の森にはよく群生地が見つかるそうだから、私も先日行ったんだが……」
「ゴブリンに邪魔されたってことか。まぁ今回は大丈夫だろ」
「だといいがな」
依頼票を受付に持って行く。あ、ついでにパーティー申請もしておかないとか。申請しておけばメンバーそれぞれに信頼度が加算されるようだ。
「すみません、この依頼をお願いします。あとパーティー申請もやりたいんですけど」
「はい、かしこまりました。先ずはパーティー申請からやりましょうか。メンバーになる方々のギルド証を提示いただけますか?」
「分かりました」
「ああ」
「はい、ショータ様にシャーロット様ですね。リーダーはどなたが務めますか?」
「俺で」
「かしこまりました。パーティー名は決まってますか?」
「「パーティー名?」」
そんなのは聞いてなかったぞ? シャーロットも初耳のようだ。
「それって必ず付けるものなんですか?」
「まぁ皆さん付けられてますね。義務というわけではないのですが……」
ギルドとしてもパーティー名があれば呼びやすいらしい。確かに『ショータ様とシャーロット様のパーティー』じゃ長すぎるしな。人数増えたらただの嫌がらせだ。
「えーっと、ちょっとソコで考えて来てもいいですか?」
「かしこまりました。では、次の方ー」
「なに? パーティー名決めないで来たの?」
「仕方ないだろ。そんなの聞いてなかったんだから」
後ろに並んでたのは、例のドリル少女だった。
「ダメねぇ。まぁアタシたちのパーティー名でも参考にしたら?」
「そうだな。せっかくだからそうさせてもらうよ」
「えぇ、大いに参考にするといいわ」
そういってドリル少女は依頼票を受付に提出した。
「はい、『麗しき暁の旅団』様、ゴブリン5匹の討伐よろしくお願いします」
「えぇ、アレクの仇は必ず取るわ!」
アレク君は死んでないし、傷を負わせたゴブリンもシャーロットに討伐されてるんだが……。
アレク君も「ボク、ちゃんと生きてるよ!」ってツッコんでる。でもその横で熊耳美女がアレク君に祈るようなポーズをすると「え? ボク死んじゃってたの?」ってショックを受けて崩れ落ちた。
「冗談よ。でも今度は必ず勝つのよ?!」
「クレア……うん、今度は絶対勝って見せるから! ベルもよろしくね!」
「…………!」
「じゃあ、師匠。行ってきます!」
ドリル少女に応援されたアレク君はアッサリ立ち直り、シャーロットに手を振ってギルドを出て行った。そうか、あの熊耳美女はベルっていうのか。
三人を見送った俺はシャーロットの待つテーブルへ戻る。
「なんだ、結局師匠になったのか?」
「まぁ仕方なくだがな。いつか稽古をつけてやるってことで納得してもらった」
「左様ですか。じゃあ俺も師匠って呼んだ方がいい?」
「あぁ、別に構わんぞ。ただし私もお前の事をショーちゃん(はーと)と呼ぶがな」
「教官殿! それは勘弁であります!」
「フン、分かればよろしい」
「そんなことよりもだ……パーティー名どうするよ?」
「……まさか、アレを参考にはしないよな?」
「ないない」
「ああ、そのほうがいい。アレク達も、クレアがいつの間にか決めてたんですって嘆いて程だからな」
「そうだったのか。まぁアレはダメな例として参考にするってことで」
「そうしよう」
だが、いざ決めるとなるとなかなか難しい。採取がしたいってことで『採取好き』は、そこまで採取したいわけではないのでNG。同様に『初心者集団』もいつまで初心者でいるつもりだってことになる。
じゃあお互いの名前からってことでいくつか出たが、『ショータ一家』じゃ結婚してるみたいで却下。『シャーロット★団』は、俺が★になるところだった。同じく『シャーロットと愉快な仲間達』は俺が愉快な人ってことにになるんでマジ不愉快。
マシだと思えたのは『パレシャード』か。palace(宮殿)とyard(庭とか公園)つまり宮園だ。異世界『アルカナ』に来て失ってしまった苗字を元にしてみた。
飛空艇関係からは『ダンデライオン』、『タンポポ』、『しろがね』これは船体の色からだな。これの派生として『白銀旅団』ってのも挙がった。
あとはどっかからのパクリか。
『S〇S団』オーじゃないよ。丸だよ。ショータとシャーロットなんで
『ネモ』船長つながり、誰でもない
『ジョンドゥスミス』名無しのごんべ、ネモからの発想
『円卓の騎士団』いや騎士じゃないし
『伊賀』『甲賀』忍者じゃねーし
『アルカナ』この世界の名前。初めて知ったってシャーロットが言ってた。
この辺になると、正常な判断が付かなくなってきてたみたいだ。
色々と出したが、シャーロットのOKがもらえない。そのくせ自分からは「それはリーダーが決めることだからな」といって案を出さないし。
面倒臭くなって来たんで、今まで挙げた名前をクジにしてシャーロットに引かせる事にした。彼女は嫌がってジャンケンを提案してきたが、対案無き反対は反対とは言えないと断言し、却下した。
諦めたシャーロットは渋々俺の作ったクジを引くのだった。
「では『パレシャード』で登録いたしますね」
「「はい、お願いします」」
「では『パレシャード』様、薬草採取よろしくお願いします」
「「はい、行ってきます」」
結局彼女が引いたのは『パレシャード』だった。まぁ流石に『S〇S団』とかヤバそうなのは抜いておいたからな。
その代わり『シャーロット★団』を余分に入れといたんだけどなぁ。妙に引きの強い奴め。一応確認したけど、折り目とかは付いてなかった。
★《キラッ》は当然右目に横ピースで




