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第890話 唯一の見せ場

「ショータ。何をぼーっとしている。お前が呼び出さなくては、出発できないんだぞ?」

「ん? あぁ、すまんすまん」


 暖簾のデザインを思い描いている場合では無かった。

 俺を含め、すでに出発の準備は整っている。

 あとは俺が飛空艇を召喚し、この地から旅立つだけだ。


 来るときは現地の状況は全く分からなかったからな。

 リョーマ氏から託された地図には温泉マークのみで、こんな立派な温泉宿があるなんて、どこにも記されていなかった。

 最悪、鬱蒼とした森の中にポツンとある、斧を投げ込んだら女神様が出てきそうな泉と申し訳程度の掘っ立て小屋がある……なんてパターンも考えていた。

 そうなれば飛空艇を使おうにも、温泉の真上ぐらいしか降りるスペースが無い可能性だってある。

 だからこそ、わざわざ陸路という疲れる交通手段を採用したのだ。


 しかし、こうして召喚に必要なスペースが十分に確保されているのが分かっていれば、飛空艇で離発着が可能になる。

 行きはよいよい帰りは恐いの逆バージョンだな。


「飛空艇召喚!!」


 日本家屋上空に現れる、白銀のラグビーボール型飛空艇。

 その対比には違和感しか湧かないが、それもまた一興。

 いつか見慣れる日も来るだろう。


「……ん! ……ん? ……これは何?」


 レイアちゃんが飛空艇を見て、大きな口を開けている。

 ふっふっふっ……我が飛空艇は火龍様ですら驚かせるのだ。

 ま、誰だっていきなりこんな巨大な物体が空に現れれば、驚くだろうけどな。


「これが俺のスキル。飛空艇召喚だ」

「……ん! 飛空……艇?」


 そこは疑問符つけないで欲しかったなー。


「そうっス。ショータさん唯一の隠し芸っス」


 隠し芸言うなや。

 あと唯一でもない。

 あと二つか三つぐらいは、披露できるネタぐらいあるぞ?

 隠し芸なだけに、ずっと隠しておくけどな。


「まぁ、そんな事はどうでもいい。さっさと乗り込むぞ」


 シャーロットさん、そんな事扱いしないでください。

 いつまでも空に浮かべたままにしてもゴブリンエイプ共を刺激するだけなんで、言う通りにしますけどね。


 俺の真上に召喚してしまっているので、『タラップ』は使えない。

 もっとも、周りの樹木との関係上、地上三階辺りに呼び出しているので、どっちにしろエレベーターを使うんだけどな。

 健康のためには階段を使うべきなのは分かるんだけど、人間ってのは楽をして生きたいものなのだ。


 そもそも、楽に移動するための手段の最たるモノが飛空艇だしな。

 恐らくこの世界でもトップクラスの移動速度に加え、まるで自宅にいるかのような快適な居住性まで併せ持つ。


 しかもつい最近、その船内に温泉まで湧くようになったのだ。

 世界広しと言えど、これほどの乗り物は他にあるまい。


 と、いうことで船内である。

 レイアちゃんは船内を珍しそうに見て歩いていたが、しばらくすると俺の所に戻ってきた。

 多分、今まで使っていたバックドアの方と、レイアウトがそっくりなことに気が付いたのだろう。

 隠すほどでもない事なので、正直にバックドアの正体を告げる。


「……ん。なるほど。やっぱり迷い人は興味深い」

「もしかしてリョーマさんも、変なスキルを持ってたのか?」

「……ん。それは……ヒミツ。内緒にするってリョーマと約束した」

「そうか。なら俺のスキルの事も秘密にしておいてくれ」

「……ん。了解」


 話に聞いた感じだとチートスキルっぽいスキルは持ってなかったらしいが、この分だとちゃんと妙なスキルを持って居たっぽいな。

 どんなスキルを所有していたのか少々気になりはするが、すでに故人となった人の話だ。

 それに聞いたところで「へぇー」とか「凄いね」ぐらいしか出てこないだろうしな。


 飛空艇は既にルフェテに向け、動き始めている。

 レイアちゃんが船内をうろついている間に、自動操縦をセットしておいたのだ。

 あまり急ぐ旅でもないため、飛行速度は馬車よりもちょっと速いぐらいにしておいた。


 それでも到着予定時刻を見る限り、昼過ぎぐらいにはルフェテに着くらしい。

 普通の馬車であれば、ユノテル村を朝一で出発しても夕方ぐらいまでかかることに比べれば遥かに速い。

 温泉宿からであれば森を抜ける必要があるため、もっと時間がかかったであろう。

 速度は同じぐらいでも、障害物がなく最短距離で進めるのが飛空艇の強みである。


 しかも今はのんびりモードだから昼過ぎ着になっているが、ちょっと本気を出せばお昼前には余裕で到着も可能だ。

 ブースター込みなら、それこそあっという間。

 この速さは流石の火龍様と言えど、追いつけはしまい。


「……む。それは聞き捨てならない。火龍のプライドをかけてショータに勝負を申し込む」

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