第89話 機関部調査
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
「俺はコイツが飛空艇だと思ったら、いつのまにかダンジョンになっていた」
な……何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何をされたのか判らなかった……。
頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
「いや、多分初めからダンジョンだったと思うぞ」
ちっ、様式美の分からん奴め。せめて「なんだってー」とでも返すべきだろうが。
しかし、ダンジョンか。話には聞いてたから、いつか行ってみたいとは思ってたけど、まさか初日からダンジョンアタックしてたとは……さすファンだぜ。
異世界おそるべし! などと現実逃避してても話が進まないな。もっと前向きなことを考えよう。例えばそうだな……魔石とやらを産出してウハウハとか? どうやって産出させるかが問題だけど、他のダンジョン産ってことにすれば結構良くないか?
「魔石ってどこ産とか分かったりするのか?」
「いや、どこで出来たかまでは分からないな。魔石からわかるのは、内封魔力量と属性、あとはどの魔物からのモノぐらいか」
「じゃあ飛空艇から魔石が出せるようになったら、売りに行けそうか……」
「それはどうだろうな。魔石を直接産出することは出来ないから、当然魔物を倒すことになるんだが」
「まぁそれは仕方ないさ。むしろ俺のレベリングになっていいしな」
「……ショータ。キミは二つ勘違いしている。一つはマスターが自分のダンジョンの魔物を倒してもレベルは上がらない」
「そうなのか?」
「あぁ、間違いない。それと出現する魔物はコアの属性に起因する場合が多い。この辺には空属性のダンジョンなんてないから、仮に持ち込んだとしても、どこで手に入れたって話になる」
「はぁ……捕らぬ狸の皮算用とは、このことか」
「そう落ち込むな。一緒にレベル上げしていけばいいだけだろ?」
そういってポンッと肩を叩きサムズアップする。シャーロットさん、マジ男前ー。
「そういや、あの青いのがダンジョンコアってのは分かったけど、真ん中の赤い玉の正体はやっぱり分からないのか?」
「あぁ、名前すら分からない……こんなことは初めてだ」
「そうか。まぁ今のところ安全なようだし、保留だな」
試しにガラス部分に触ってみるが、ウィンドウとかは出てこなかった。ひょっとしたら操作盤的なものでも現れるかと思ってたんだがな。
シャーロットはまだうろついているが、他に見るモノもないし、さっさと朝飯にするか。
「おーい、ボチボチ朝飯だろうから、行くぞー」
「あぁ、わかっ――ぶべっ」
「何やってんだ?」
「なんか、なんかここにある!」
そういって何もない空間を指さす。お化けでもいるのか?
「何を言ってる――ぶべっ」
なんか、なんかここにある! ペタペタペタ。なんだろ? 見えないけどココに柱っぽいのがある。シャーロットも同じように手を動かしてる。互いにパントマイムでもしてる様だ。
二人してパントマイミングした結果、大体直径2m高さ2m位の円柱状の見えない何かが、例の巨大ガラス玉の前あたりに居座ってる様だ。
これは何かを隠してるな? だがいつもならウィンドウが出て来てもいい頃なのに、今回は反応すらない。場所が違うのか?
二人してあーでもない、こーでもないと考えてたが、どこからともなく「キュー」と音が鳴る。発生源は俺だった。もっと男らしい腹の音にならないかなぁ。「グー」そうそうこんな感じに。
互いに顔を見合わせ、どちらともなく、バックドアへ向かう。飛空艇の謎は解けたような、深まったような感じだが、そんなことはどうでもいい。とにかく朝飯だ。「キュー」「グー」




