第88話 飛空艇の秘密
「ここにいたのか。ここは入るなって言っといただろう?」
「む、ショータか……すまない。だがどうしても気になってな」
果たして彼女は機関部に居た。なんか変なメガネを付けてな。一昔前のマンガに出てくる、瓶底メガネって奴だ。
なお、ここは飛空艇を飛ばすときに操縦席から解放したから、内部は見たことがないのも当然だった。
「まぁおれも入った事無かったんで、立入禁止にしてただけだしな。で、気になったことって何だったんだ? あと、そのメガネについても教えてくれるんだよな?」
「あぁいいだろう。まずはショータ、あの正面のヤツを見てくれ。こいつをどう思う?」
凄く……大きいです……とでも言えばいいのか? 実際大きいけどさ。
機関部の中は割と殺風景だった。設備っぽいのは、正面ある部屋の大部分を占める機械?だけだしな。
機械?というか簡単に言うと真球状のガラスだな。ただ上下が機械になって、船体に繋がってるけど。
で、真ん中に真っ青なピラミッドと逆ピラミッドが中央の赤い玉を挟んでクルクル回っている。分かりにくい?
まぁこんな感じ。
↓
機 械
ガガガガガ
ガ △ ガ
ガ 〇 ガ
ガ ▽ ガ
ガガガガガ
機 械
こんなのが真ん中にデーンてあるだけだな。機関部っていうから、もっとメカメカしい設備とかあるんだと思ってた。何とかエンジンとか、何とか炉とかさ。
逆にこんなのでよく空飛んでたなと感心するよ。流石ファンタジーだ。
「これが飛空艇のエンジンって奴なのか?」
「そうと言えばそうだが、違うと言えば全く違うな」
「は? じゃあこれってなんなんだ?」
「ここが飛空艇のエネルギーの発生源であることは、魔力の流れからして間違いはない。だからエンジン部というのは合っているはずだ」
「へー」
魔力の流れってなんなんだってのは聞いちゃまずいのかな?
「じゃ、じゃあ違うっていうのは?」
「勿論形状だ。言っただろう? 一般的な飛空艇は、浮遊石を使ったエンジンだと」
「だからあの真ん中の奴がそうなんじゃないのか?」
「全然違う。あの時は説明しなかったが、浮遊石というのはサイズの違いはあっても必ず六角柱の形をしている。例外は無い。第一無色透明だしな。あんな色は付かない」
「じゃあアレは浮遊石以外のモノってことか?」
「あぁ、あの四角錐状のだけはかじろうて鑑定できたが……」
「おぉー。あれ? でも鑑定って触らないとダメなんじゃなかった?」
「その為にこのメガネがある。これは直接触れないものを鑑定する時に使う、補助用の魔道具だ」
確かに高熱で触ることが出来ない品物とか、暴れてるモンスターの鑑定とか触れない時もあるよな。
「まぁ、わかるのは簡単な情報だけだがな」
「で、アレは何だったんだ?」
ドヤ顔しだしたんで、さっさと先を促す。
「あぁ、アレはダンジョンコアだな。それも空属性のヤツだ」
「へぇー」
「へぇーって、ダンジョンコアだぞ?」
「だからダンジョンコアってなによ?」
「はぁー、そこからか」
解説してくれた。ダンジョンコアってのはダンジョンの中枢部で、ダンジョンを管理しているんだそうだ。当然ダンジョンの奥に設置されていて、大抵ダンジョンマスターが守ってる。
ダンジョンマスターってのはコアに指示が出来る存在だ。マスターに登録するには、コアごとに条件みたいなのがあって、それをクリアすればなれるようだ。実際いくつかのコアは人の手で管理されている。
で、人の手で管理されたダンジョンってのは、いわば無限の資源を生み出す宝の山みたいになる。食用モンスターを生み出したり、鉱石を出現させたり。一番は魔石の産出だそうな。まぁコアの属性にもよるそうだけどね。
ただ制約はあるみたいで、前述とは相反するけど、産出量にも限界があるらしい。研究者の話じゃ龍脈的なエネルギーラインから元になるエネルギーを吸い上げてるみたいで、その辺が枯渇するとダンジョンも枯れるそうだ。
更に言えば、空属性のコアというかダンジョンからは、それこそ浮遊石が採れるらしい。例の世界一の冒険者とやらも、天空のダンジョンで浮遊石を見つけたんだとか。
つまりここに人の手で管理できそうな、浮遊石を算出するダンジョンコアがありますよーってことだな。うんヤバいね。
「ついでに言っておくが、この飛空艇もダンジョン化してるからな? どうやらマスターはショータになってる様だし」
「は?」
「だ・か・ら、この飛空艇はダンジョンになってるからな? アイテムが補充されたり、お湯が湧いたりしてるのもダンジョンなら納得だな。厨房の器具とかはトラップになるのかもな」
「マジで?」
「マジだ。あと言いにくい事なんだがな……マスターの変更は、コアの要求条件を満たせなくなった場合にしかすることが出来ない。まぁ一番手っ取り早いのはマスターの死亡だな。つまり、このコアを手に入れようとする輩がショータを殺す事は、十分考えられるだろうな」
そう語るシャーロットの目は真剣で、嘘や冗談を言っているようには到底思えなかった。
飛空艇は空飛ぶダンジョンでもあったのだー! のだー! のだー!
シャーロットがコアのことについてやたらと詳しいのは秘密なのだ! のだー! のだー!




