第8話 北へ
(おお、まるで鳥になったようだ)
飛空艇としてはちょっと浮いた程度。
だが、一体化した俺の視点からは周りの木々が見下ろせる高さまで上昇する。
眼下には草原が見える。
次第に視点を上げていけば深そうな森、森の奥には険しい山が広がっていた。
(うーん、草原の方にも町があるようには見えないなぁ)
ぐるっと見回してみるが人工物があるようには見えない。
それでも白骨死体があったのだから、前人未到の秘境というわけではないだろう。
(とりあえず北を目指すか)
特にあてもないので、ステータスにあった「北方に吉あり」に従ってみることにする。
(北ってどっちだ?)
太陽は見えるが今の時間がわからない。
時間がわからないことには、太陽のある方角が南なのか西なのかあるいは東なのか判断がつかない。
太陽の高度も緯度によっても変わるから当てにならない。
高く上がったことで地平線が丸くなっていたので、世界は丸いのだろう。
(飛空艇なんだからコンパスとかないんだろうか?)
俺の思いが伝わったのかメニューウィンドウが開かれる。
メニューリストには表示設定の項目のみ。
必要なものだけが表示されるのか、あるいは機能の開放が必要なのか。
今までのパターンからすると後者だろう。
むしろ表示設定だけでもMP消費無しで出てきたことに喜ぶべきか。
まぁいい、とりあえずコンパスや高度計、時計に速度計や燃料計など必要そうなものの表示をONにする。
燃料計を表示したはいいが、ガス欠の場合の対処方法がわからない。
その辺にガソリンスタンドでもあるのだろうか?
「ハイオク満タンで」「ご一緒に洗車はいかがでしょうか。」「いやこれ飛空艇だし」などと店員と会話するのだろうか。
いや異世界なんだし不思議パワーで給油されることを祈ろう。
そもそもガソリンで動いてるのか? コレ。
話がそれたな。
コンパスを確認する。どうやら深い森の先にある険しい山々がある方が北になるようだ。
いきなりの山越えにちょっとうんざりするが、初志貫徹と自らを叱咤する。
山の上の景色は素晴らしかろうと思いをはせながら北の山へ向かう。
道中地上を眺めていたが集落もなく唯々森が広がってるだけだった。
山もゴツゴツした岩ばかりで人のいる様子は見られなかった。
特に情報が得られないまま進むこと約1時間。
遂に山頂へ到達した俺は、驚きの光景を目にしたのだった。
18/01/05
諸々修正。