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第781話 フエ〇ミラーで金のインゴットをコピーしまくれば、大金持ちになれるよなぁ

 朝、目覚めると横にはネコミミ姉妹が……なんてハプニングが起こる事もなく、普通に快適な目覚めを迎えた。

 ただ、俺一人で寝ていたわりに布団の乱れ方がが激しく、もしかしたら誰かが一緒に寝ていたのかもしれない。

 寝入ってから潜り込んで起きる前に出ていかれては、一人で寝ているのと変わりないけどな。


 そんな誰とも分からない残り香を思いながら着替えを済ませると、工房へと足を向ける。

 昨夜、3Dプリンターでソーセージスタッファーを作るようにセットしておいたからな。

 ソイツの出来栄えを確認しないと、シャノワさんからソーセージが受け取れないのだ。


「おー、出来てる出来てる」


 早朝の工房は当然の様に人影は無く、3Dプリンターも稼働を停止しているため、ひっそりとしていた。

 ま、用があるのは人ではなくプリントアウトされたブツの方なので、コレさえ完成していれば問題は無い。


 俺は3Dプリンターから成形されたブツを取り出すと、とりあえずテーブルの上に並べ、早速組み立て始めてみる。

 ハンドルを回して寸胴の中身を絞り出すという単純な構造ゆえか、使われているパーツは結構少ない。

 しかも料理器具の大前提として、分解して洗えるような造りになっているからな。

 接着剤要らずのプラモデルぐらいしか作れない俺でも簡単に組み上げることが出来るのだ。


「おぉ、ちゃんと組み上がった」


 組み立て方はオリジナルで学んでいるので問題ない。

 3Dプリンターの成形精度も、シュリのソックリ人形が作れるほどだったので心配はしていない。

 当然の事だが、スキャナーの取り込み精度もな。


 一番の懸念事項だったのがスキャン元の精度だ。

 ソーセージスタッファーのオリジナルは厨房から持ち出せない為、ソイツを直接スキャンすることが出来なかった。

 仕方なしに選んだ方法というのが、シャーロットの土魔法で各パーツを寸分違わず作り上げ、それをスキャンする方法だった。


 ただ、氷ジョッキというある意味自由に形を決められる物を成形するのとは違い、既に決まっている形を寸分違わずに作り上げる、というのはかなり難易度が高かったようだ。

 全てのパーツを作り上げた彼女はかなりグッタリしていて、「もう二度とやりたくない」と珍しく弱音を吐くほどだった。


 そんな彼女の姿に心打たれた俺は、あまりの申し訳なさに、ついつい寝室の使用権を明け渡そうか考えてしまったね。

 もちろん考えるのみで、口に出すことも態度に出すこともしなかったが。

 一応、寝室争奪戦を開催したことが、その労い代わりだと思って欲しい。


 組み上がったソーセージスタッファーのハンドルを回してみる。

 オリジナルと違い多少キコキコ音がするが、問題らしい問題はその程度だ。

 これなら十分実用に耐えるだろう。


 使われている素材もオールステンレス製で、錆びの心配もない。

 尤も、そのせいで昨夜の俺のMPがほとんど尽きかけ、成形時間の短縮ができなかったんだけどな。


「まさか素材がMPで供給できるとはねぇ……」


 チラリと3Dプリンターを眺める。

 このプリンター、成形用の素材を投入するだけでなく、俺のMPを代償に原材料を供給することができるのだ。

 その種類は思っている以上に豊富で、木や石はもちろん、鉄や銅、ステンレスにミスリルと、色々あった。


 しかも選べる素材欄には「?????」となっていた部分もあり、まだまだ種類は増えそうだったな。

 ひょっとしたら夢の金属『オリハルコン』もいつか解放されるのかもしれん。

 解放される条件はサッパリだけど。


『この船はダンジョン化しているからな。原材料も魔素から精製できるのだろうな』


 そう教えてくれたのは一緒に居合わせていた物知りシャーロットさん。

 さすがは元魔王様(自称)にして元ダンジョンマスターさん(自称)だからか、ダンジョンに関する知識はかなりの物だった。


 そんなシャーロットの話によれば、ダンジョンってのは魔素ってヤツを元に様々なモノを生み出している。

 それはダンジョンで生まれる魔物やアイテムだけでなく、ダンジョンを構成する床や壁そのものも、だ。


 で、飛空艇のフレームにはミスリルが使われているし、厨房の寸胴はステンレス製。

 それらを生み出す能力がこの飛空艇には元々備わっており、その能力を使えば3Dプリンターの素材にステンレスやらミスリルを使うことも可能になるそうだ。


 ま、俺のMP次第なんで、そんなに量は作れないけどな。

 その辺は3Dプリンターが成形する前に、投入したMPで成形できる量を教えてくれたんだよな。

 ソーセージスタッファーをオールステンレスで作るだけでMPのほとんどを費やされたし、ミスリルに至っては全MPを使ってもハンドル部ぐらいしか成形できないらしい。


「ん? でもある程度ならミスリルが作れるって事だよな?」


 組み上がったソーセージスタッファーのハンドル部を見る。

 あまり大きくは無いが、それでも簡単に折れてしまう程細くは無い。

 ミスリルの市場価値を考えれば、かなり高く売れるのではないか?


「いや、スキャナーもあるんだ。いっその事ミスリル貨とやらをスキャンして……」

「それは立派な犯罪になるから止めておけ」

「……やっぱり?」

「あぁ。ミスリル貨は偽造防止の魔法が掛けられているからな。形だけ同じにしても簡単に見破られるだろう」

「ほー、それは知らなかったな。その魔法ってのは金貨とかにもかけられているのか?」

「いや、ないな。ミスリルは魔力との親和性が高いから掛けたままでいられるが、金貨以下ではすぐに効果が切れる筈だ」

「ほほう」


 つまり金貨とかなら偽造し放題、と。


「言っておくが、私の目の黒いうちはそんな犯罪は絶対に許さないからな?」

「あ、はい」


 お前の目は青いだろうが! とはツッコめなかった。

 彼女のドスのきいた声に思わずヒュンとなり、それどころじゃなかったのだ。


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