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第773話 ミンサーを探せ

 シャノワさんの水鉄砲式ソーセージ作りをみて、思い出した物がある。

 なにかの料理番組で出て来た『ミンサー』という器具だ。

 これはブロック肉をミンチにしてくれるだけでなく、アタッチメントを装着することで手作りソーセージが作れるようになる代物である。

 ソイツがあればシャノワさんの悩みは確実に解消される事だろう。


 俺は彼女の話を聞き終えた後、「トイレに行きたくなった」と言って厨房から出ると、そのまま店のトイレへと駆け込む。

 もちろん用を足すわけでは無い。


 飛空艇の厨房へ行くにはバックドアを呼び出す必要があるのだが、流石に人の家の適当な壁にバックドアは呼び出せない。

 昨日まで無かった壁に突然ドアが出来ていれば、誰だって不審に思ってしまうからな。

 バックドアにも『認識阻害』の機能はあるけど、それだって近付かれれば効果は無くなる。


 だからこそのトイレなのだ。

 幸い、この店のトイレの個室は広く、バックドアを出すには十分な広さがあった。

 トイレの個室に籠り、中からカギをかけてしまえば誰も入っては来れない。


 ……筈だった。

 俺は一人悠々とバックドアをくぐった筈なのだが、厨房に着いた時にはシャーロットも一緒だった。

 何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった。

 悪のカリスマと対峙した某銀色戦車の人も、俺と同じような心境だったのだろうか。


「カギ? あぁ、そんなモノは乗り越えた」


 どうしよう……彼女の言ってる事が分からない……いや、分かりたくはない。

 確かにトイレの個室の壁はパーテーションの様に上の方が開いてはいた。

 だが何処の世界に「カギのかかったトイレの個室の壁を乗り越えてまで現れようとする魔王様(自称)」が居るというのか。

 そんなアグレッシブな魔王が居たら、勇者はおちおちトイレにも行けないだろう。

 少なくとも、俺が勇者ならまず間違いなく降参する。というか、した。

 もうコイツがどこから現れようとも驚かないだろう。


「で、わざわざ俺の後をつけて来たシャーロットさんは、この後どうしたいのですかな?」

「ソーセージとエールの相性も良かったが、ビールの方がもっと合うような気がしてな。お前がバックドアを呼び出しそうだったので付いてきたのだ」


 なるほど一理ある。

 ソーセージといえばドイツ、ドイツといえばビール。

 その二つの相性は最高なのは言うまでもない。


「そうか……なら好きなだけどうぞ。俺は厨房で探し物だ」

「やはり解決する方法が思い付いていたのだな」

「まぁな。もっとも厨房から出てくるかどうかは分からんから、とりあえずトレイに行くって事にしたけどな」


 ダンデれもん様なら間違いないとは思っているが、それでも期待させてから落とすよりは、ブツを確認してからの方がいい。

 俺はミンサーを見つけるべく、厨房の引き出しや収納扉を探し回っていく。


「ふむ、なんだかそっちの方が面白そうだな……よし! ビールは後だ。先にお前の方から片付けてしまおう」

「面白そうって……」


 それにビールは後で落ち着いてからの方が良さそうだしな。

 そんな事を言いながら、シャーロットは俺と一緒に厨房内を探し回ってくれた。

 まぁ探し物をするなら一人よりは二人だよな。


 そうして厨房内をガサゴソしていたのだが、中々目的の物は見つからない。

 そもそもシャーロットは何を探しているのかすら分かっていなかった。


「探しているのは『ミンサー』って言ってな。こう……挽き肉を上から入れてハンドルをグルグル回すとソーセージが出来るまっすぃーんだ」

「なるほど、分からん!」


 だろうな! 俺も自分で言ってて意味分かんないし。

 でも、うろ覚えの機械を口頭で説明しろって言われても難しいんだよ。


「そうだ、ショータよ。もう一つ分からないことがあるのだが、教えて貰えるか?」

「……なんだ? ソーセージを使った料理でも教えて欲しいのか?」

「そちらも気になるが、その前に『みんさー』探しの方だ。なぜお前はタンポポを頼ろうとしていないのだ? ガイドフェアリーのタンポポなら、お前の探し物ぐらい容易く見つけてくれるだろうに」


 …………そういやそうだな!

 今もフヨフヨと俺達を応援するように浮いてるけど、その様子だけで可愛いから、すっかりマスコット扱いしていたよ。

 シャーロットに言われるまでもなくタンポポの存在意義はガイドフェアリー、つまり船内をガイドすることにある。

 今まで何度も船内の隠された機能や区画をガイドしてくれたタンポポであれば、ミンサーの一つや二つ程度、すぐに探し当てる事だろう。


「よし、タンポポ! 『ミンサー』の在りかを教えてくれ!」

「ミンサー? …………ナイ!」

「無いのかよ!」

「ナイ!」


 マジか! 流石のダンデれもん様でも無理な事があったのか?!


「ショータ…………そんな聞き方では見つかるモノも見つからないと思うぞ? もっとこう、機能や目的を伝えるべきだ」

「そうか? うーん……なんつーのかな……要は挽き肉を腸詰めにする機械が欲しいんだよ。こう……むりむりむりーって感じに絞り出すヤツ」

「ヒキニク? チョウヅメ? ……アル!」

「あるのかよ!」

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