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第772話 ソーセージが量産できないワケ

「にゃぅうぅ……沢山作れにゃい秘密を教えたら、このケチャップをくれるかにゃ?」

「そうだな……考えてやってもいいな」


 ソーセージとの取引のはずが量産不可の秘密との取引に変わりつつある件について。

 俺の目的はソーセージ自体なので、返答は「考える」だけだ。

 もちろん考えるだけで返答は「NO」なのは言うまでもない。


「にゅぅぅ……仕方ないにゃ。おミャーらだけに教えてやるにゃ」


 そっちからのお願いなのに、なんで上からな態度なんだろう。

 もう面倒だから帰ってもいいかな? だめ? ここまで来たら乗り掛かった舟?

 お人好しのアレク君とベル、ついでに悪乗り中のシュリに反対されてしまう。

 それでスゴスゴと撤退案を引っ込めてしまう俺も、割とお人好しなのかね。


「実はにゃ…………」


 シャノワさんはキョロキョロと辺りを意味もなく見回し、ギッと真面目そうな顔でテーブルに身を乗り出す。

 その真面目そうな雰囲気に、俺達もちょっと真剣な感じになる。

 ちょっとだけなのはシャノワさんが身を乗り出したせいでテーブルに潰された、彼女の肉球スライムさんの方が気になって仕方が無いからだな。

 ぷにょっとしていて、きっと触ったらYESボタンと同じぐらいの感触な気がする。


「……………………」


 ……やけにタメが長いな。

 俺の概観視がついつい彼女の肉球スライムさんを見てしまっているのも、タメが長すぎるからだな。


「…………このソーセージは作るのがとっても手間がかかるのにゃ」

「……それだけ? 手間がかかるから量産できないだけ?」

「それだけとは失礼にゃ! 挽き肉を腸に詰めるのはと~~~~っても面倒なのにゃ! はっ! しまったにゃ! 作り方を教えてしまったにゃ!!」

「おバカニャ! 姉さんはおバカすぎるニャ!」


 うにゃーと頭を抱えるシャノワさんとシャティーさんだが安心してくれ。

 ソーセージの作り方ぐらいなら、俺だって知っていたから。

 なにせソーセージってのは腸詰めとも言うぐらいだしな。

 腸に挽き肉を詰めている事なんて、ソーセージが出て来た時点で分かり切っていた。


「つまり腸に挽き肉を詰める作業に手間がかかり過ぎるから、ソーセージを量産出来ないってことか?」

「その通りにゃ! ニャーがどんにゃに一生懸命挽き肉を詰めても、ニャーたちの店で使う分ぐらいが精一杯にゃ!」

「そうか……ちなみにどんな風にして腸に詰めてるんだ?」

「にゅぅうぅ……ホントは秘密にゃんだけど、ここまで来たら教えてあげるにゃ! こっちに来るにゃ!」


 シャノワさんはテーブルを立つと、そのまま厨房へと入って行った。

 シャティーさんもその後に続いていき、その次はシャーロット達。

 そして殿――しんがり、な? お殿様じゃないぞ?――となった俺は、そっと店を後にし……ようとして、シャーロットに襟首を掴まれ、そのまま厨房へと連行された。

 いや、もう何もかも面倒になって来たから、つい……な?





「これにゃ! これに挽き肉を詰め込んでいくのにゃ!」


 厨房のテーブルには細めの竹筒と、陶器製のボウルに入れられた挽き肉。

 そして腸詰めの腸詰めたる所以である腸が置いてあった。

 この腸は豚に似た魔物から獲れる腸らしく、色々試作した結果、コストと味のバランスが丁度良かったんだそうな。

 ちなみに、この事もシャノワさんは自ら暴露し、姉妹揃って頭を抱えていた。


「で、この筒に腸をクルクルクルーっとセットするにゃ!」

「するニャ!」

「そしたら、この挽き肉を一生懸命押し込んでいくにゃ!」

「いくニャ!」


 腸がセットされた竹筒の反対側の口から挽き肉を押し込んでいくシャノワさんと、それを見守るだけのシャティーさん。

 妹さんの方は料理がダメダメらしく、腸詰め作業においては戦力外通告されているらしい。

 猫の手なのに借りることは出来ないようだ。


「ある程度、筒にお肉を入れたらこの棒で押すにゃ!」

「押すにゃ!」


 竹筒より一回り小さい棒を取り出したシャノワさんは、筒に詰まった肉ごと押し込んでいく。

 押し出された挽き肉は出口を求め、反対側にセットされた腸の中へと殺到する。

 シャノワさんが棒を押し込んだ分だけ、にゅるんと腸詰めが出来る。

 要は子供の頃に遊んだ竹製の水鉄砲と同じ原理だな。


 この工程も、革袋に絞り口をつけたりと色々試したらしい。

 だが革袋だと革の味が肉に移ったりするため、結局は掃除も簡単な水鉄砲方式になったんだとか。

 なるほど、色々と苦労した結果があの味につながっているんだな。


「あとはこれを延々と繰り返すだけにゃ! どうにゃ? ソーセージをもっと作るのはと~~~~~っても大変にゃって事が分かったはずにゃ!」

「なるほどなるほど……つまりこの手間が改善されれば、もっと作れるわけだな?」

「にゃにゃ? ひょっとして、にゃにかいい考えがあるのかにゃ?」

「まぁ……一応な」


 この程度の問題なんぞ、ダンデれもん様にかかればチョチョイのチョイだよな。

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