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第76話 ガロン一家

「あら、お客さん? いらっしゃい~」


 ガロンさんの解体っぷりに見入っていると、厨房の奥から恰幅のいい女性が現れた。どうやらガロンさんの奥さんなのだろう。つまりこの宿の女将さんってことだ。


 女将さんは厨房の中をフラフラというかヨタヨタと歩いてくる。なるほど、彼女は恰幅がいいのではなく、妊婦さんだったのか。近くで見ればその大きなお腹がよくわかる。


「マデリーネ、そんなに動いて大丈夫なのか?」

「大丈夫よ~、マロンの時だって結局出産直前まで働いてたじゃない」


 確かに妊婦さんにも運動は必要だろう。出産直前まで働いていたのはどうかともうが。


「確かにそうだったが、アイナ婆さんの話じゃ今回は双子だって話だろう? あまり動かない方がいいんじゃないか?」

「これぐらいじゃ動いたうちに入らないわよ~。それよりいいの? お客さん待ってるんじゃない?」

「いいんだよ、待たせとけば! それよりお前の方が心配だ!」


 ガロンさんの言い方はアレだが、妊婦さんを大事にすることは間違ってない。俺は食堂からイスを持ってくると、マデリーネ《女将》さんに座るように勧める。


「あら、ありがとうございます。すみませんねぇ、ご迷惑をおかけして」

「いえいえ、妊婦さんに無理させるのは良くないですからね。しかし双子ですか。おめでとうございます」

「おめでたいと言えばおめでたいんですけどねぇ」


 なにかめでたくない事でもあるんだろうか? 見たところ高齢出産って訳でもなさそうだし、マタニティブルーって奴なのか?


「何か不安なことでもあるのか? なんなら相談に乗ってやってもいいぞ」


 勇者だ! 勇者がいる! 聞きにくい事情をズバズバ聞いてくシャーロットさん、まじかっけー。


「不安って訳じゃないんですけど……主人が宿屋を休業してまで、私を働かせないようにするのがちょっとねぇ」

「だってお前の事だから、それこそマロンの時みたいに出産寸前まで働こうとするだろう?」

「流石に今回はそこまでしないわよ~」

「フン、どうだかな」

「マロンがいるから大丈夫だよ~。今日だってちゃんと受付のお仕事できたよ~」


 食堂にイスを取りに行ったときに付いてきたマロンちゃんが、仕事できるアピールをしている。ピョンピョンと飛び跳ねる様子がカワイイ。シャーロットなんかメロメロだ。


「そうね~、マロンがいるから安心よね~」

「そうだな。俺もマロンがいるから安心して串焼き屋をやってられるな」


 ガハハと笑いながらマロンちゃんを抱き上げるガロンさん。アットホーム感が半端ねぇ。一人身にはつらい光景かもしれない。シャーロットはというと羨ましそうにしている。ちぃぃ、味方は一人もいないのか!




 一人で勝手に拗ねていると、やっと落ち着いたのか、ガロンさんがフリュトンの調理を始めだした。そのサポートにマデリーネさんが付く。普段もこんな感じなんだろう。動きにそつがない。さらにマデリーネさんのサポートにマロンちゃんが入る。


 ガロンさんが手早く包丁を振るう。マデリーネさんがイスに座ったまま火の番をする。マロンちゃんがあっちこっち動き回りながら使う道具を準備する。シャーロットがマロンちゃんの代わりに高い所のフライパンを取り出す。

 ってなぜ混ざってる?! 一人見学してた俺が、なんか間抜けじゃないか!


 一人じっとしてると余計アレな感じなので、水汲みでも手伝うか。と思ったらシャーロットが魔法で水瓶に水を入れている。

 一発で大き目の水瓶を満たした魔法に、ガロンさん一家からも賞賛の嵐だ。後姿からでもわかるシャーロットのフフン顔にチョップしてやりたい。




 仕事にあぶれた俺は、ガロンさんの作業の様子を眺めている。べ、別にサボってるわけじゃないんだよ? そもそも俺達は客なんだし。あぶれたも何も、仕事する必要ないんだし。


 まぁそれはさておき、ガロンさんの調理方法の話だ。シャーロットが言ってた通り、この世界には焼く・煮る・茹でる・炒めるぐらいで、蒸したり揚げたりといった調理方法は無いようだ。


 ガロンさんもフリュトンの骨付きバラ肉を焼いている。とおもったら肉を薄くスライスして皿に盛りだした。マデリーネさんが平鍋に水を張って火にかけてるから、もしかしてしゃぶしゃぶかな?


 ってマデリーネさんの様子を眺めてた間に、ガロンさんはもう一品作り始めたようだ。ん? あれはもしかして、もしかしなくても豚の生姜焼きじゃね? 醤油っぽい色したタレをまで用意してるし。



 これは俺の方も準備をしなくてはならない。マデリーネさんにお願いし、深めの鍋で湯を沸かせておいてもらう。

 お湯が沸く間に準備しておくのは、ごはんパック×五個だ。手持ちのを全部使い切る覚悟で豚の生姜焼きに挑もう。


 沸騰したお湯の中にごはんパックを全弾投入する。待つこと十数分。ゆで上がったご飯を平皿に盛っていく。本当ならご飯茶碗に盛りたかったが、残念ながら平皿しかなかった。


 ごはんパックがゆで上がる間に、ガロンさんの料理も完成したようだ。逸る気持ちを抑え食堂に向かう。さぁ夕食の時間だ!

最後、さも仕事したようなかんじですが、実際にしたことといえばサ〇ウのごはんをマジックバッグから取り出しただけですね。茹でてたのは女将さんだし、その鍋を用意したのはマロンちゃんです。あ、ごはんを皿に盛ったか。

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