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第736話 目的を果たそう

「おや? 飛空艇の実物を見るのは初めてかい?」

「えぇ、まぁ……そうなりますかね」


 厳密には、頭に『一般的な』……って付くけど。


「そうかい。やっぱり外の人には珍しいんだね。でも、王都に居ればいくらでも見る機会があるとおもうよ」

「そうなんですか」


 普通のじゃなければ常日頃から見てるけど。


「あぁ、そうさ。ほら、あの船も湖の方に向かってるだろ? あっちの方に港があって、そこに飛空艇も停泊してるんだよ」


 三本マストの帆船がゆっくりと俺達の上空を横切っていく。

 その高度は次第に下がってきており、確かにどこかに着陸ないし着水するのだろう。

 いや、一般的な飛空艇の停泊場所は、基本水面なんだったっな。

 ウチの飛空艇は常に浮きっぱなしなんで、ついつい忘れてた。


「へぇー、じゃあ港に行けば間近で飛空艇が見られるんですか?」

「間近はちょっと難しいかな。停泊していても荷の積み込みでごった返しているだろうし、そんなところに行って事故に巻き込まれたくも無いだろ?」

「それもそうですね」


 この世界の飛空艇がどんなスペックなのか知りたかったのだが、暗に「近付くな」って言われてるっぽいし、諦めた方が良さそうだ。

 それに周りからの視線も感じるようになって来た。

 入場待ちの人は俺達の後にもズラーっと並んでいるわけだし、あまり時間をかけさせるのも周りの迷惑になる。


 色々知ってそうな担当の人とはもっと話をしたかったけど、そこは空気の読める俺だ。

 入都税である大銅貨六枚(六人分)を支払い、俺達は遂に王都に辿り着くのだった。





「さて、スイーツ大集合祭りが気になるから、どこでやってるか聞いてみるか」

「そ、その前に冒険者ギルドに行った方がいいのではないか? 先に例の報告書を届けて討伐隊の派遣を阻止しておいた方がいいと思うぞ?」

「……そうだったな」


 王都産のスイーツが気になって、そもそもの目的を忘れる所だった。

 この報告書を届けないとダンデライオン号が魔物認定されてしまい、王都での審議によっては討伐対象にされてしまう。

 ダンデライオン号のスペックがあればそう簡単に撃墜されるたりはしないだろうけど、そこで油断してしまえばきっと痛い目を見る事になる。


 ダンデライオン号は無敵だとしても、それを呼び出す俺の戦闘力は一般人に毛が生えたレベルだからな。

 船から降りている時に突然襲われでもしたら、二秒でノックアウトだろう。もちろん俺が。

 そうならない為にも、サッサと報告書を届けるのは間違いではない。


 が、ちょっと待って欲しい。

 俺も元社会人として、何度か報告書を見たり書いたりもしてきた。

 そんな経験を踏まえると、メルタさんの報告書にはある項目が書かれている可能性が高い。

 そしてその項目に気付かれれば、必ず不審な目で見られるであろうことも十分予想できる。

 あるいはそれ以上のパターンも。


 そんな事を憂慮するぐらいなら、明日になってから届けたほうがいいのではないか?

 一日でも日付がズレれば、多少は違和感はなくなるだろうから。


「む……確かにその可能性はありそうだな」

「だろ?」


 そう、報告書というモノは、必ず日付が書かれている筈なのだ。

 情報というモノは絶えず変化するため、いつの時点での情報なのかが明確にされていないと、古い情報で誤った判断を下してしまう。

 それは異世界であろうとも変わらない筈だ。


 だが、遠く離れたマウルーで作成された筈の報告書が、今日の日付になっていたとしたら?

 今日の今日で届くはずがないと、一笑に付されるかあるいは書類不備として撥ねられるか。

 どちらにしろ、マトモに取り合われることは無く、結局は討伐隊が派遣されてしまうだろう。


 それだけで済むのならまだマシか。

 最悪なのは、日付に不信感を持ちながらも、それが事実であると気付かれた場合だ。

 その場合、矛盾を解消した存在まで悟られてしまう可能性すらある。

 そうなれば討伐隊はマウルーに向かわず、その報告書を届けた人物……つまりは俺に向けられることになるだろう。


「と、いう事で報告書を届けるのは明日にして、スイーツ大集合祭りに……」

「ま、待つのだ。スイーツ大集合祭りの前に宿を決めた方がいいのではないか? ほら、スイーツ大集合祭りで時間を取られて、宿が一杯になっても困るだろう?」

「いや、それならどっか目立たない所にバックドアを召喚すればいいだろ?」


 王都の宿のレベルがどれ位かは分からんが、ダンデライオン号を上回るほどでは無いだろうし。


「い、いや。そこはちゃんとした宿にしておかないと、バックドアでは怪しい盗賊が入り込むだろう?」

「怪しい盗賊ぐらいなら『侵入者排除』の機能もあるし、楽勝だろ」

「そ、それは……」


 口ごもるシャーロット。

 さすがにここまで分かりやすいと、何かを隠しているぐらいは察せられるため、ジッと彼女を見つめる。

 やがて俺の視線に耐えかねたのか、観念したように大きく息を吐く。


「実はな……スイーツ大集合祭りなんて全くのデタラメだったのだ……」


 ΩΩΩ<な、なんだってー!?

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