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第732話 予想通りと予想外

 ガラガラと馬車は進む。

 王都へと続く道なだけあって、それなりに整備されてはいる。

 だが現代日本の舗装された道に比べれば、『月とスッポン』あるいは『ゆで卵とゴーヤ』。

 正直、競馬のダートコースと変わらないレベルではなかろうか。


 そんな道をハマルは疾走する。

 御者台に座るシュリの尻の下には浮遊石を用いたフロードがあり、その振動は全てシャットアウトされている。

 だからこそ、荷台の地獄には気付かないでいるようだ。


「なぁ……やっぱり検証なんか後にして、素直にバックドアに籠った方が良かったんじゃないか?」

「なんだ? この程度ならマウルー周辺の街道の方が、もっと酷かったぞ?」

「そうか? ランペーロ狩りの時に乗った馬車も振動は酷かったけど、これ程じゃなかっただろ」

「まぁ、あの時は普通の馬が牽いていたからな。ハマルの速さでこの道を行くよりも振動は少ないか」


 ゆっくり走っている時は大した事のない段差でも、スピードが増していれば大きな衝撃となってくる。

 駐車場とかでよく見かけるスピード抑制用のデコボコと同じだ。

 ハマルが疾走するように走っている今の荷台は、建設現場で見かける『ランマー』と呼ばれる地固め用の機械がダダダダダ! って稼働している上にいるのとそう変わらない状態なのだ。

 簡単に言えばケツがヤバい。


 そんな状況であれば、普段なら迷わずバックドアに引き籠っている。

 そうしないのは『王都に向かう間に例の部分召喚の検証しよう』などと、浅はかにも提案してしまったからだ。

 こんな状況になることは、容易に予想できたというのに……。


 まず部分召喚というのは、バックドアと同様に飛空艇が送還中にしか使う事の出来ない機能であった。

 それは飛空艇が呼び出してあった時に使えなかったことから予想済だので、それはまぁいい。


 もう一つの制限として、バックドアとの併用も不可能だった。

 部分召喚をしている間はバックドアが呼び出せなかったし、その逆も同じだった。

 つまり部分召喚の検証をしている間、バックドアの恩恵を受ける事が出来ないのである。


 これこそが予想外であり、最大の誤算だった。

 この事が分かった時点で即座に検証を終わらせ、王都に着いてから改めて再開すれば良かったのに、検証に夢中になっていた結果がこのざまである。


 もし俺にセーブロード能力があったなら、即行でロードしなおすね。

 それが駄目なら時間遡行能力でもいい。

 検証手前まで戻り、この腫れあがった尻を見せてやりたい。


 しかし俺にはどちらも無いので、じっとケツの痛みに耐えるしかない。

 あるいは検証に集中することで痛みを紛らわすか。

 そうだな……痛みに耐えるような性分では無いので、検証を進めよう。




 ……なるほどね。

 バックドアも中々使い勝手の良い機能だったけど、この部分召喚もバックドアとは別の方向で使いやすそうだ。


 まず、部分召喚と名付けられているだけあって、送還中の船の一部を呼び出す機能で間違いない。

 この場合の一部とは設備だけなく、船が持つ機能まで含まれていた。

 

 そう、機能だ。

 ダンデライオン号が誇る数々のデタラメ機能が、船やバックドア内だけなく船外でも使用可能になったのである。

 侵入者排除の機能まで使えるかは検証要になるが、これが使えるのであれば船に侵入されずとも、わずかMP1で相手を拘束する事も可能になる。

 そうなれば俺もチートで無双ってヤツが出来るようになるという事になり、つまりは俺の時代到来という事になる。

 是非とも使えて欲しいものである。


 それ以外にも有用な機能は色々とある。

 見張り台のレーダー機能は通常時の索敵にも使えるし、係留用のアンカー機能だって下手な魔法を放つよりも高威力だろう。

 要はあのチートなダンデライオン号を、俺の身で再現出来るのである。

 これはワクワクが止まらないな。


 だが現実はそう甘くは無かった。

 部分召喚には『呼び出せる機能や設備は一つだけ』という制限があったのだ。

 まぁ『部分』とうたう以上、あちこち召喚出来たらそれはもう『部分』じゃ無いからな。

 そこは諦めるしかなさそうだ。


 が、設備や機能などは一度に一つしか呼び出せないとなると、ある問題が判明してしまう事になった。

 実は飛空艇の機能の殆どは、船内の機関部にある太極炉によって賄われていたらしい。


 バックドアの場合はあくまで送還中の船内に入る事が出来る機能の為、一緒に太極炉も呼び出される

 だが部分召喚の場合は機能や設備が太極炉から切り離される事になるため、魔素なり魔力で補填する必要が出て来たのだ。


 つまり……部分召喚にはコストが要求される!

 ただ、全部が全部コストを要求される、ってワケでも無いらしい。

 トイレの便座やトイレットペーパーなんかは代償無しに部分召喚出来たし。


 おそらくだが、設備や消耗品といった『呼び出した時点で用が済んでいる』様な機能や設備なんかは無しの分類になるのだろう。

 逆に『呼び出してからの運用が重要』な機能などはコストが要求されると思ってよさそうだ。


 以上が王都に向かう馬車の中、痛むケツに耐えながら得られた検証結果である。

 痛みに耐えながらだったため、どこか検証が間違っているかもしれないが、とりあえずはそんな認識であっている筈だ。


 あ、それともう一つ検証結果があったな。


 部分召喚では部屋は呼び出せない。


 リビングルームや寝室、厨房などを呼び出そうとしたが、反応がなかったのだ。

 部屋は『部分』以外になるらしい。

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