第72話 暴動?
町の中を二人で串焼き屋へ向かう。途中の通りでも銀色の魔物の噂がチラホラ聞こえる。さっきの情報提供で穏便に収まってくれるといいけど。
途中、八百屋さんの前を通り過ぎる。野菜を買いたかったが、シャーロットに急かされ渋々諦める。そうだな、おっちゃんも待っているだろうしな。
串焼き屋の前には人だかりができていた。皆ピリピリしている、というか殺気立っている。昨日はお行儀よく並んでたのに、これじゃ暴動寸前だ。
何事かと近付いてみれば、皆一様に何かを待っているようだ。串焼き待ちかな? って割には注文している様子がない。ただ屋台の前にたむろってるだけだ。もしかして営業妨害中?
あ、屋台前の連中の一人がこっちを指さした。後ろを振り返ってもシャーロットしかいない。え? もしかして俺?
ソイツが屋台のおっちゃんに声をかけたようだ。おっちゃんが鬼気迫る表情で、こっちにやって来た。いや鬼気迫るというか、ありゃ涙目だな。地獄で仏に会ったかのようだ。
「ああ、やっと来てくれた! もう駄目かと思ってたじゃねぇか。で、塩は? 塩はどこだ? 持ってきてくれたんだろ?」
「あ、ああ。ちょっと待っててくれ」
そういってマジックバッグから塩の入った甕を取り出すと、おっちゃんがその甕をふんだくっていった。
「みんな待たせたな! さぁ焼きまくるぞ!!」
「やっと来たか!」「待ちくたびれたぜ!」「早くしてくれ!」「こっちは朝から待ってたんだ!」「甘いな! 俺なんか昨日からだ!」等々。皆この塩を待ってたのか。
俺が色々と道草食ってたせいで、これほどの人達を待たせてたかと思うと、申し訳ない気持ちになる。
おっちゃんはジャンジャン串焼きに甕の塩を振り、焼きまくっている。次々と客が捌けていく様子は、まさに串焼き無双といえよう。
何故か昨日串焼きを一緒に焼いてた人も売り子になってるし。あのままおっちゃんに雇われたのかな? あと串焼き単体だけでなく、串焼きサンドも売っているようだ。
ん? よく見たらあの串焼きサンド、昨日俺が頼んだのと違うな? パンに串焼きと玉ねぎっぽい野菜を挟んで売っている。むしろ串焼きサンド改のほうが売れ行きがいい位だ。
流石おっちゃんだな。俺が気になってたシャキシャキ感が足りない点は、とうに改善されてる様だ。俺も欲しくなってきた。
ってシャーロットはすでに並んでいるし。昨日からパンとコッコゥしか食べてないのに、まだ食い足りないのか……俺の分もついでに頼んでおいた。
シャーロットから串焼きサンド改を受け取り早速齧り付く。おぉ、昨日よりも格段に美味くなっているようだ。玉ねぎっぽいの以外にも何か入れたのかな? まぁ美味けりゃいいか。
シャーロットは串焼きサンド改以外にも、カリカリ揚げとビールを巾着袋から取り出したし。それ、俺の分だぞ! 奪い合うようにカリカリ揚げも食べきった。真っ昼間からのビール、美味しゅうございます。
ただこれで四食連続でコッコゥだ。いい加減他の料理も食べたい。今日の夕食は絶対コッコゥ以外にしよう。
俺達が串焼きサンド改を食べきっても行列が捌ける様子がない。むしろ行列は伸びていく一方だ。こりゃもう暫く待ちそうだな。仕方ない出直すとしよう。
おっちゃんに後でまた来ると告げ、俺達は串焼き屋を後にした。とりあえずさっきの八百屋さんへ向かおう。
4/25 パリパリ揚げ→カリカリ揚げ 串焼きサンド→串焼きサンド改 等を修正