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第71話 騒動

「え? コイツメス? でもトサカあるよ?」

「コッコゥのオスメス区別は専門家でも時々間違えるからな。無理もない」


 ウンウンと頷くシャーロット。というか専門家って何を専門にしているのだろう? ひよこ鑑定士みたいな職業か?


「一番簡単に見分けるのは、卵を産むか産まないかだな。産めばメスだ」


 そりゃ見分け方じゃなくて、生物学的な定義じゃね?


「あとは尾羽で見分けてるとか言ってたかな」

「さようですか」


 まぁ見分けられたところで、結果が変わるわけじゃないしな。見敵必殺ってヤツだろうし。

 とりあえず巣にあった卵をマジックバッグに仕舞う。コイツの使い道は後で考えよう。


 血抜きを済ませた俺達は、そのまま北門へ向かう。なんだかんだで太陽は中天に近い。急がないと串焼き屋のおっちゃんが痺れを切らすだろう。




 北門前には例によって行列が並んでいる。ただなんか様子がおかしい。並んでる人達がやけに急いでいる。門番もいつもは一人で対応しているのに、今日に限っては三人体制だ。何かあったのだろうか?


 三人体制のおかげで、すぐに順番が回ってきた。ギルド証を提示し、水晶玉に触る。シャーロットも同様だ。さっさと中に入ろうと思ったが、この慌ただしさが気になり門番さんに聞いてみることにした。


「なんだか慌ただしい様子ですが、何かあったのですか?」

「ああ、君達は見なかったのか。何でも西の空に、見たことも無いような魔物が現れたそうだ。しばらくしたら突然消えたそうだがね。

 だがどうも目撃情報があいまいでな。変な銀色の魔物だとか、空飛ぶ岩山だとか、はたまたそんなモノは見ていないとか」


 そのせいで城壁の外でソイツを見かけた人が、町の中に入ろうと押しかけて来たんだそうだ。


 心当たりがあり過ぎる。どう考えても遠隔操作を試した時の飛空艇が見られたようだ。


 あの時高く飛びすぎて、人目に触れやすくなってたのだろう。あと銀色の魔物だという人は探知系のスキル持ちかな? やはり分かる人には分かってしまうようだ。


 シャーロットも俺を睨んでいる。門番さんに礼を言い、門から離れたところで顔を突き合わせる。


(おい、どう収拾をつけるつもりだ?)

(つけるも何も、黙っておけばバレないだろう?)

(確かにそうかもしれないが、その場合この町で飛空艇を呼び出すことは出来ないだろうな)

(なんでそうなる?)

(考えてもみろ。正体不明の空飛ぶ魔物が頻繁に町の付近にやってくるのだぞ? 騒ぎにもなるし当然討伐しようとするだろう)

(じゃあどうしろって言うんだよ? まさか「アレは俺の飛空艇です」とでもいえばいいのか?)

(要はアレが無害だとわかればいいのだ。任せろ! 私にいい考えがある)




 シャーロットと打ち合わせた後、門の傍にある詰所に向かう。ひょっとしたら全員門番に出払ってるかと思ったけど、何人か残っていたようだ。

 詰所の前に立っていた人に、例の魔物の件で話があると告げると中に案内された。お、初めて町に来た時対応してくれた人が居る。俺のことは気付いていないようだ。まぁそうだよな。


 普段は門番さんたちの休憩所なのだろう、妙に生活感のある詰所だった。全然違うはずなのに、なぜか40年間連載し続けたマンガの派出所に似てるなと感じた。


 奥から鎧を着こんだ人が出てきて席に着く。班長さんかな? 残念ながら眉毛はつながってなかったけど。俺も対面に座るよう促される。


「さて、なにやら例の魔物の件で重要な話があるとのことだが?」

「はい、私も又聞きで申し訳ないのですが、例の魔物によく似たモノが魔王国でも現れたという噂を聞いたことがあるってだけでして」

「ほう? 詳しく聞かせてもらえるかな?」

「ええ、もちろん。と言っても大した情報ではないと思うのですが……」

「いや、今はとにかく情報が欲しい状況だ。」


 ここでちょっと声をひそめ、勿体付けるように話す。


「なんでも新型の飛空艇だそうですよ? 噂じゃフォラスって人が作ったとかなんとか」

「ふーむ、『変人』フォラスか……伝え聞くところによると、馬を使わない馬車を開発したとか、浮遊石無しで空を飛んだとか……そういった人物なら、銀色の飛空艇というのも、おかしくは無いのか……」


 何やら考え込んでしまった班長さん。よかった~フォラスって誰よ? って言われなくって。シャーロットが言うにはこいつの名前を出しておけば、多分大丈夫だろうって言ってたけど、知り合いなのかな?




 それはそうと、考え込んだままの班長さんが戻ってこない。どうしよう? 周りを見渡したら、あの時の門番さんと目が合う。

 目線で助けて! って伝えてみたら、苦笑いしながら目を逸らされた。いや、指で出入口を示している。これは出てっていいのかな?

 今度は出てってイイ? と目線で伝えてみる。あ、頷いた。よし出よう。思考の海に沈んだ班長さんに頭を下げ、ソーっと席を立つ。班長さんは気が付いていないようだ。

 そのまま門番さんにも頭を下げる。彼は左手で右胸を叩いている。もしかして敬礼か何かかな? そのまま詰所の外に出た。ミッションコンプリート!




 路地で待っていたシャーロットと合流し、中での様子を伝える。

 ちなみに彼女が付いてこなかったのは、「私だと目立ってしまうからな」だそうだ。フフン顔にチョップくれたかった。


 これで少しは騒動が収束してくれればいいけれどね。

4/25 アイテムボックス→マジックバッグ

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