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第694話 ダンジョンから追い出そう

飛空艇(バックドア)もダンジョンです。

『18・17・16……』


 ゴブリンの頭の数字が段々と減っていく。

 これがヤツの残りの寿命……ではなく、強制退去までのカウントダウンらしい。

 たぶん、コレがゼロになると強制退去されるのだろう。


 ゴブリンを包む強制退去の泡は薄そうに見えて実はかなりの強度があるようで、ゴブリンがどんなに殴ってもビクともしない。

 ガンガンガンと音がしそうなほど手にした棍棒で泡を殴り続けているのだが、泡が割れるどころか棍棒の方が壊れそうなほどである。

 とりあえずゴブリンの無力化は出来たようなのでほっと一安心である。


 当面の脅威は排除された訳だが、そうなると考えるべき事も出てくる。

 例えばそう……どうしてゴブリンが侵入して来たのか? とかか?

 いや、それよりもこのカウントダウンが操作できるかの確認が先か。


 泡の防御力はかなりのモノだが、絶対というわけでもなかろう。

 もしカウントを速めることが出来るのであれば、その分だけ安全度は増すのだから。


 ……どうやら一度カウント始めてしまうと、それを速める事は出来無い様だ。

 船の修復の時は、MPを支払って修復完了までを速める事が出来たんだけどな。

 まぁそういうモノだと思うしかあるまい。


 その代わり、なぜかカウントを止める事は出来たんだよな。

 ゴブリンの頭に『5』と表示されたまま止まっているんだけど、これって意味あるのか?

 船に害意を持つような危険なヤツなんて、さっさと放り出すべきだろうに。


「いや、無力化したところで交渉や尋問をするためでは無いのか?」

「なるほど……ゴブリン相手にか?」

「それは……まぁ無理だろが、他の時もあるだろう?」

「他の……ねぇ……」


 交渉や尋問の通じるような相手って、どう考えたって対人戦ってことだよなぁ。

 コッコゥやゴブリンを倒すことには慣れてきてはいるが、やはり人間相手は覚悟が足りてない。

 だが、飛空艇の存在を考えれば、避けては通れない道でもある。


 そんなとき、この機能があれば相手を無力化したうえで交渉のテーブルに着くことが出来るだろう、とシャーロットは言う。

 飛空艇の価値を思えば、交渉の余地なんてないよな、と俺は思う。

 強制退去が発動するって事は、この船の存在を知られてるって事だ。

 これだけのトンデモ機能の満載の船を、交渉程度で諦めたりするだろうか?

  

「うむ、諦めぬだろうな。それだけの価値がこの船にはある」


 つまり交渉の余地など初めっから無く、無力化し船外に放り出したところで、再び戻って来るだけ。

 むしろ多少なりとも船の内部を知ってしまう為、何らかの対策まで取られそうである。


「……そうだな。少々試してみるか」


 そう言ってシャーロットは巾着袋から投げナイフを取り出すとゴブリンに狙いを定める。

 その上でクレア達は船外に出るように指示を出す。


「ショータ。カウントを再開しろ」

「……分かった」


 なんとなく、彼女の意図が読めたので素直に頷く。

 泡に触れるとメニューが現れたのでカウントをスタートさせる。

 カウントダウンが始まったところでシャーロットの放った投げナイフがゴブリンの頭に突き刺さる(・・・・・)

 泡は……破られていない。


 そのままカウントがゼロになったところで、泡が弾ける。

 ゴブリンの姿は……ない。

 投げナイフと、ゴブリンの持ち物である棍棒と腰蓑。

 それだけが弾けた後に残されていた。


「あれ? カウントが止まっている時に攻撃したほうが良かったんじゃないっスか?」

「……そうだな。そちらの方が重要だったな」


 落ち着いているつもりだったけど、やはりどこか抜けていたようだ。

 シュリの言うように、カウントが止まっている時に攻撃して、カウントが再開されるのか、あるいは別の事が起きるのか。

 その辺を確認しておくべきだったか。


「ま、まぁとりあえず分かった事もあるわけだし、失敗ってほどでもないさ」

「そうっスねー。こちらの攻撃は通った上、泡は消えなかったっスよね」

「だなぁ……ってことは、これって――」

「あの泡で拘束してしまえば、一方的に攻撃を加える事が出来るだろうな」


 檻に入った猛獣を、檻の外から攻撃するようなものだ。

 モンスターとの血沸き肉躍る死闘とは無縁の、一方的な殺戮である。

 流石にそれはいかがなものではなかろうか?


 あ、いや。よくよく考えれば、害意をもって侵入してくるようなヤツ等に、そんな慈悲など必要ないな。

 どんなやり方だろうと、抹殺することに変わりはない。

 だったらより安全な方法を選ぶべきだな。


「師匠。戻りました」


 俺達が泡の仕様について考えていると、アレク君達が魔石を手に戻って来た。

 彼らは船外に放り出されるであろうゴブリンの、止めを刺しにいってもらったのだ。


「うむ。アレク達も無事で何より。それで――」

「はい。ボク達が外で待機していると、ゴブリンが急に現れましたので、そのまま倒しました」

「そうか……ではそのゴブリンが現れた時の様子を教えてくれ」

「はい。ゴブリンは何も持たず、腰蓑すらない状態でした。それと頭に真新しい傷がありました」

「頭の傷もあったとなれば、そのゴブリンは先程までこちらに居た個体に間違いない」


 バックドア周辺で急に現れたのだから、放り出されたゴブリンに間違いは無い筈。

 現れたゴブリンは偶々偶然現れただけの別の個体で、放り出される先はとんでもなく遠方って可能性は無くなった訳だ。


「丸裸にされて放り出されるって、かなりイヤっスね」


 同じく丸裸にされて放り出されてるから、実感がこもってるな。


「あ、そうだ。シュリの時みたいに、泡には包まれてなかったのか?」

「いえ、そのままでした」

「となると、あの時の泡は高所からの落下だったからってことか」

「あるいは強制退去の場合はそもそも無いのか」


 つまり飛空艇が飛んでいる最中に強制退去された場合、丸裸にされたうえでのヒモ無しバンジーってことか。

 普通に死ねるね。

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