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第686話 ダンジョンで心配されよう

『拡張パーツ「ベゼルリング」を入手しました』


 俺の指先がリングに触れた途端、そんなメッセージウィンドウが現れる。

 リングは蛍のような燐光となって俺に纏わりついたが、しばらく周囲を漂った後やがてスゥーっと消える。


 いや、一つだけ残った光がある。

 突如、自身の魔法を強化していたリングを失ったせいか、それを探すかのようにウロウロと飛び続けるウィスプだ。


 そのウィスプだが、リングが無くなった事を理解したのか、一目散に俺から離れようとする。

 ベゼルリングを手に入れて調子に乗って攻撃しまくっていたのに、そのリングが無くなった途端、手のひらを返したかのように逃げるとか、実に小物っぽい。

 光の玉なので顔は勿論、表情すら有りはしないのだが、なんとなく「こりゃまた失礼しましたー」と言っているようだ。

 それとも「きょ、今日はこの辺で勘弁してやる! 覚えてろよー」な感じだろうか。


 が、勿論逃がさない。

 散々攻撃しまくったのに、いざ自分が受ける側になったら逃げるとか、俺が許さん。

 なによりコイツはアダフォ君の仇でもある。

 手にしていた槍を突き込むと、抵抗もなく光が霧散する。


 一瞬、この手のヤツって物理が効くのか? と槍で突いた後思ったのだが、問題なく倒せたようである。

 まぁ厳密に言うと『倒せた』のではなく『かき乱した』ってのが正しいらしいけど。


 物知りシャーロットさんによれば、ウィスプってのは発光苔のように小さい魔物が集まっているらしい。

 良く分からんが、蚊柱がもっと密集している様なものだろうか。

 そんな状態で魔法を使えるとか、ある意味凄いような気がする。


 なんてことを考えていたら、シャーロットが近付いて来る。

 喜べ、アダフォ君の仇はちゃんととったぞ。 

 俺は槍を掲げ、そうアピールする。

 シャーロットも大きく右手を掲げると、


 ――バチーン!!


 俺の頬をはたいた。

 力を込めていないかったのか痛くは無かったが、不意打ちだったことと、その衝撃でよろめいてしまう。


「ショータ! 勝手な行動は慎めと、いつも言ってるだろうが!!」

「……………………すまん」


 ダンジョンでは……いやダンジョンに限らず、町の外には危険がいくらでも潜んでいる。

 ほんのわずかな油断で命を落とすことなど良くある話、独断専行など以ての外。

 だからこそ、彼女は常日頃から「勝手な行動はするな」と教えてくれていた。


 ひるがえって俺の取った行動はどうだったか。

 ウィスプを見つけるまでは良かったと思うが、その後が最悪だ。


 内なる衝動に突き動かされるまま相手に突っ込むとか、一歩間違えれば重傷、いやそれ以上の事だって起きていたのだ。

 たまたまロックオンアラートのお陰で避けられたり、ベル達のフォローがあったからこそ、こうして五体満足で立っていられるが、よくよく見ると皮鎧のあちこちに焦げ跡が残っている。

 上手く避けたつもりでも、あの弾幕は避けきれなかったのもあったようだ。


「みろ! こんな所にまで怪我を負ってるではないか……」


 アドレナリンが出まくっているせいか全く気づかなかったが、鎧が覆っていなかった右の太ももにも火傷のような跡があった。


「全く……いらん傷など負いおって……全員で掛かれば、こんな傷など負う必要も無かったのだぞ?」


 そう言いながらシャーロットは俺の前に跪き、火傷部分に手のひらを当てる。

 彼女の手が当てられた部分がじんわり温かくなっていく。

 その温もりが去ると、そこには火傷など初めから無かったかのような、元通りの肌があった。

 さすがに生地の方までは直すことは出来なかったのか、ダメージジーンズっぽくなってしまったけど、この位は許容範囲だろう。


「で、結局なにが起きたのだ? こちらからだと、お前があのリングに触った途端、消えたように見えたのだが?」

「あぁ、それなら――」


 シャーロット達にも『ベゼルリング』の事を伝える。


 飛空艇の欲求に突き動かされて特攻してしまったこと。

 あのリングが飛空艇の拡張パーツであること。

 そしてそれを手に入れる事が出来たこと。


「『ベゼルリング』か……。他のダンジョンにも、コレと同じようなものがあると言うのか?」

「どうなんだろうな。この世界にダンジョンがいくつあるかは知らんけど、たまたま入ったダンジョンに偶然あったと考えるよりも、全部のダンジョンにあるって考えた方が自然な気はするけどな」


 ただその場合、全てのダンジョンを巡ってパーツを集めることになるんだよな。

 それはそれで目標が出来て良いんだろうけど、ダンジョンの数によっては面倒なだけだ。

 地図更新を使えば当たりハズレはすぐに分かるが、現地に行くまでがねぇ……。


 最悪なパターンだと、このダンジョンにだけ拡張パーツがあって、他は全部ハズレとかね。

 あるいは受付の男が気を利かせて、拡張パーツのあるダンジョンの傍に送ってくれただけとか。

 まぁその辺は考えてもキリが無いんで、気にしない事にするか。


「それで、その『ベゼルリング』とやらの機能は分かるのか?」

「いや全く。バックドアで使えるかも分からん。仮に飛空艇を召喚しないとダメだったら、スペースが無いしな」

「そうか……ならば目的も達している事だし、引き上げるとするか」

「だな」

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