表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/1407

第68話 索敵ビュー

 いざYESボタンを押そう! って時にガシッとその手首が掴まれた。犯人は勿論シャーロットだ。

 その無言のニッコリに圧力を感じる。「ゴゴゴゴゴゴゴ」の擬音まで背負っているように見えたし!


「……えーと、これから『索敵ビュー』という機能を開放しようと思います。よろしいでしょうか?」


 彼女は無言のまま頷く。彼女の承認を頂けたので、YESボタンを押す。いつもの感触が楽しめないのはその手が掴まれたままだからだろうか。


「うおっ!」

「きゃぁぁぁぁ!」


 二人して声を上げてしまったのも仕方ないだろう。立っていたはずの床が突然消えたんだからな。と言っても本当に消えたわけではなく、どうやら床面に下の景色が投影されているようだ。


 俺はイスに座ってたし、視界の半分は船視点のまま、ずっと空を飛んでる状態だったので、多少ビックリした程度だった。

 けど、彼女の場合、突然空に放り出された様なものだからな。思わず手を握り締めてしまうのも当然だろう。その握りしめた手の中に、俺の手首がなければだけどな。ミシッって音が聞こえたよ。



 なんとかシャーロットを宥めた俺は、眼下に広がる景色を確認する。といっても船視点と大して変わらないよな。まぁ船長以外の人も、同じような景色が楽しめるってのは魅力と言えるか。


 お、あの黒いゴマみたいな点々はコッコゥかな? と思ったらその部分が拡大された。なるほど、船視点との違うのは、ズーム機能があるってことなんだ。

 そしてその機能が使えるのはイスに座ってる人だけのようだ。この機能を説明したら、彼女がウズウズしだしので交代した。




 彼女はアチコチをズームしている。何の変哲もない森の木をズームしたり、冒険者ギルドをズームしたり楽しそうだ。俺の船なんだけどなぁ。

 ようやく満足した様子のシャーロットが席を譲ってくれたけど、もう見たいところなんぞねえよ!

 と思ったけど、一応コッコゥの巣の場所ぐらい確認しておくか。


 えーと、あそこが例の墓標で、こっちが城壁だろ……ふんふん、この辺とこの辺に巣っぽいのがあるようだ。後で卵があるか確認しに行くとしよう。

 シャーロットも「あるといいな」と賛同してくれた。彼女が居ればコッコゥなど、物の数ではないだろうし。


 今度は森の方を拡大してみる。ん? あの木の下にあるのはフリューじゃね?


「いやあれはよく似ているが、多分ブリューだろう」

「名前まで似てるんだな」

「だが、ブリューは毒キノコだ。うっかり食べるなよ」


 いや、お前の方が心配だよ。ついでに見分け方を聞いてみたけど、フリュトンが食ってるか食ってないかって、そんな判別の仕方があるか!




 コッコゥの巣を確認した俺達は、早くフリュトンを食べようというシャーロットの要望により出発することになった。流石に寄り道が過ぎた気がする。

 とりあえず元の位置に船を降ろした後、エレベーターで中層へ降りる。出入口ここしかないしね。


 へぇー、中層だと工房と202号室の前に出るのか。出発のする前に、串焼き屋のおっちゃんに頼まれてた塩の事を思い出す。シャーロットに断り、厨房に寄ってかめの塩を丸ごとマジックバッグに入れる。


「ここに残す分はいらないのか?」

「あっ」


 うっかりしてたぜ。厨房には調味料入れが幾つかあったので。三個ほどに塩を入れる。一つは厨房用、もう一つは俺の持ち歩き用、そして最後の一つは当然シャーロットの分だ。

 厨房用はガラス製の瓶だったが、俺達の持ち歩き用は木製のヤツにした。ガラス製は割れる心配もあるが、何より貴重品すぎてこんな用途に使うものじゃないって言われた。




「あとは忘れ物ないよな……」

「ビールは持って行かないのか? あと床下収納とやらも確認するとか言ってたぞ」

「おお。そうだった。そうだった」


 ビールは木製ジョッキがあったので、そっちを使うことにした。ただ、あったジョッキ全部にビールが注がれ、それがそのままシャーロットの巾着袋に仕舞われる様子に、微妙な不安を覚える。全部飲むなよ?


 しかも以前、氷のジョッキで飲んだことを話したら、


「ほぅ…………えい!」

「おお、すげぇ。一瞬で氷ジョッキが出来た! これも魔法?」

「あぁ、氷塊を作るのは初級魔法レベルだが、これほど精密な形状に造れるのは私ぐらいだろう」


 自慢かよ! ドヤ顔が半端ねぇ。くぅ、俺も覚えたい。なんとか教えてもらおう。その為には彼女のご機嫌を取らないと。


 早速氷ジョッキにも注ぐ。彼女も一個だけでなく、二個三個と作るのでジャンジャンビールを注ぐ。勿論彼女の巾着袋に仕舞われていく。晩酌が楽しみだ。


「エールもこのジョッキなら美味しく飲めそうだ」


 さいですか。




 ビールを仕舞い終わったので、後は床下収納の確認か。そこそこ広いので、手分けして床を確認する。

 俺は床に這いつくばり、目を皿のようにして探しているのに、シャーロットのは立ったままだ。サボってるのか?


「……分かったわ。ここよ」


 言われてみれば、確かにそこだけ違和感があるな。触ってみるとウィンドウが出た。


『MP2を消費し「機能:床下収納(厨房)」を開放しますか? MP4/18』


 あれ? 残りMPは3のはずだよな? ああ、ビール注いでる間に回復したのか。まぁ開放はしないけどね。シャーロットは不満そうだったけど。まだ保存食が欲しいとおっしゃるのか。


 ちなみに彼女が立ったまま見つけられたのは、やはり魔法のおかげらしい。「探査魔法」といって隠された部屋を探したりする魔法なんだってさ。何でもありだな。

 床下収納も部屋になるのか? なるんだろうな。見つかったんだし。分類は区画じゃなくて、機能だったけど。




 ついでにトイレに寄ったりして時間は食ったが、長らく(と言っても一泊だが)滞在した飛空艇を後にするべく、俺達はタラップを降りて行った。






 あ、結局バックドアってなんだったんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ