表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
654/1407

第654話 エジンソンと『変人』

「そうかそうか……ショータはあの時の小僧じゃったか……うーむ……」


 ようやくエジンソンの爺さんは、俺がインチキタイムマシン理論を教えた事を思いだした様だ。

 人の顔を覚えない爺さんでも、興味のある事に関係していれば、少しは覚えていたらしい。


「まぁええか……食事も済んだ事だし、部屋に戻って研究の続きでもするかの」


 しばらく考え込んでいた爺さんだったが、そんな事を言い出すと、そのまま食堂を出て行ってしまう。


 ……え? この爺さん、とうとうボケやがったか?

 エジンソンがこの宿に来た理由ってのは、俺に用があって来たんだよな?

 なのに、それを差し置いて研究を優先とか、ボケたとしか思えない。


「いいのか? 爺さん。ショータのヤツに何か聞きたかったんじゃねぇのか?」

「あぁ、もうええわい。あの小僧ならワシの名前を勝手に使われてもええ」

「ふーん……爺さんがそれでいいなら、俺は何も言わねぇけどな」

「それよりモッさんとやら。お主が聞いた魔王軍の飛空艇とやらの事。もう少し詳しく聞かせ欲しいのじゃが……」

「あの話か……。いいぜ、爺さんの部屋で良ければ、たっぷり話してやらぁ」


 なにやらエジンソンとモッさんが話している。

 俺が爺さんの名前を使ったとかなんとか聞こえたけど、俺はそんな事をした覚えはない。

 つまり人違いか冤罪のどちらか、という事になる。


 あ、人の名前を使った事はあったか。

 うっかりミスで飛空艇が見つかった事で、マウルーの町ではちょっとした騒ぎになったっけ。

 その騒ぎを収拾させるのに、『変人』と評される人物の名前を使った事はあった。


 だけど、爺さんの名前はエジンソンだし、『変人』の名前は……確かフォロスだかフォリスだかだった筈だ。

 爺さんとその『変人』とかいう人物とでは名前が違う。


 それにアレはシャーロットの入れ知恵でやっただけだ。

 もしも責任があるとすれば、発案したアイツが負うべきだろう。


「ショーちゃん、ショーちゃん。ちょっといいかしら?」

「ショーちゃんはやめてください。パインさん」


 俺が冤罪からの華麗なる回避法を思いついていると、パインさんが何やら手招きしている。

 何の用かは分からんが、とりあえず「ショーちゃん」呼びだけは広めないようにしておく。


「ショーちゃんって呼ばれるのが嫌なら、コレを205号室に持って行って頂戴」

「エールとつまみ……モッさんのですかね」

「そうよ。モトルナったらフォーラスさんの金だと思って、好きなだけ飲み食いしてるのよ」

「モッさんらしいな。……って、フォーラス? フォーラスって誰だ?」

「誰だも何も、さっきまで話してたじゃない」


 さっきまで話してたって、俺が話してたのはモッさんと、エジンソンの爺さんだけ。

 モッさんの本名はパインさんも言ってるように『モトルナ』なので、そうなると――


「え? あの爺さん、フォーラスって名乗ってんの? エジンソンじゃなく?」

「エジンソン……まぁそうね。エジンソンでもあるわね」


 パインさんは俺にエール入りジョッキとツマミの乗った皿を預けると、そのまま受付に向かう。

 なにやらゴソゴソしていたが、戻って来た時には宿帳を手にしていた。


「ほら、ここにちゃんと書いてあるわよ? 『フォーラス・アルバート・エジンソン』って」


 パラパラとめくって見せてくれた宿帳の最後には、たしかにその名前があった。

 その手前にはモッさんの名前もあるので、あの爺さんの名前である事に間違いは無さそうだ。


 そうかそうか……あの爺さんって、フォーラス・アルバート・エジンソンとかいう長ったらしい名前だったのか。

 そんな長い名前を名乗るのが面倒だからか、俺にはエジンソンと名乗ったと。


「ね? この宿帳を見て、フォーラスさんって呼んでるのよ。ま、モトルナのヤツは爺さんとしか呼んでないけどね」


 お財布とか金づるとか呼んでないだけマシなんじゃないかな。

 面と向かって呼んでないだけで、内心じゃそう呼んでるかもしれないけど。


 しかしフォーラスか……そういえば『変人』の名前も、フォなんとかだったな。

 ひょっとしてエジンソンが、実はその『変人』その人だったりするのだろうか。

 あの爺さんなら、そんな二つ名を持ってても不思議じゃないし。


 なんかそう思うと、色々思い当たる節が出てくるな。

 門番の人と揉めてたのも、俺が「銀色の飛空艇はフォラスが作った」って門番の人にタレこんだ訳だし。

 これは勝手に名前を借りた事を、詫びに行くべきなんだろうか?


「うーん……そうすると、あの飛空艇の事。色々と聞かれない?」

「……聞かれますかね?」

「それはショータちゃんだって分かってるでしょ?」


 いや、だから『ちゃん』付けはやめてくださいって。


「ちなみに、あたしは散々聞かれたわ」

「あー……色々とスミマセン」

「いいわよー。一応は女将代理なワケだし、お客さんの事はペラペラしゃべったりしないわよ」


 銀色の飛空艇と聞いて、すぐに俺の事と分かったらしい。

 別に守秘義務とか無いだろうに、ありがたい限りである。


「お礼、期待してるわよー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ