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第634話 人形の由来

「ショータ。あの人形は、そんなにヤバかったのか?」

「らしいですよ。今はもう大丈夫みたいですけど」


 セーレさんの屋敷に無事戻った俺達は、早速ガロンさんにターニャちゃん人形を無力化した事を話した。

 あの人形を渡したのは十中八九、ガロンさんであろうからだ。

 いくら娘の護衛用として渡してあったとしても、あんな物騒な人形はやり過ぎだろうしな。


 だが、ガロンさんの様子からすると、ターニャちゃん人形の秘密は知らなかったようだ。

 シャーロットの説明を聞き、何故か俺にまで確認してきたぐらいだからな。


「あの人形は客の忘れ物でな。何日か待っても取りに戻って来なかったし、マロンも気に入ってたんで、預かり賃代わりにマロンに与えてたんだ」


 客の忘れ物なのに、そんなんでいいのだろうか。

 いや、ここは向こうの世界とは違う。

 取りに来ないコートを何年も保管しておくような、親切なクリーニング店などいないのだ。


 それに、その忘れてった客というのも一見の客であり、マウルーにはたまたま寄っただけの客だったのだ。

 いつ戻って来るかも分からない様な客よりも、娘の方が大事だと判断した結果のようだ。


「そういえばいつだったか、マロンがかなりの上物の魔石をオモチャにしていた時があったな。ひょっとしなくても、アレが人形に入ってた魔石だったんだろうな」


 何やらウンウンと一人納得しているヒゲ親父。

 どうやら子供の好奇心というものは、人形に内蔵されていた魔石すらも取り出すほどだったようだ。

 ただガロンさん。「あの魔石はいい金になったぜ」、とか言ってるけど、魔石とは言え子供のオモチャを取り上げた上、売り飛ばしたのだろうか?


「バカ言え。娘にそんな真似する訳ないだろう。まぁ、ちょっと交換させては貰ったけどな」


 聞けばカラの魔石と上物の魔石を、上手い事マロンちゃんを言いくるめて交換したらしい。

 今よりも幼いマロンちゃん相手なら、赤子の手をひねるようなものだっただろう。

 実に酷い親である。


「いや、ショータ。ガロン殿の判断は正しい。魔石の危険性も分からない様な幼子に、上物の魔石を預けたままでは、いつ何時暴発するか分からないからな」

「そうなのか?」

「あぁ。魔石というのは知っての通り魔素の塊だ。お前も魔素と魔力の親和性は分かっているな? 魔力の制御も身に着けていない幼子でも、魔力自体はある。そんな子供が安易に魔石に触れてみろ。どんなに危険か、お前でも想像がつくだろう?」

「……あぁ」


 ちょっと例えは違うが、子供と百円ライターの関係のようなモノか。

 一昔前の百円ライターは、誰でも簡単に火がつけられた。

 それ故、子供がイタズラだか好奇心だかで勝手に火を点け、火傷や酷い時には火事にまでなっていた。

 それと同じような事故が発生する可能性が、その時のマロンちゃんにはあったのだ。


「あれ? でもゴブリンの魔石とか、結構素手で扱ってたよな?」

「上物の魔石といっただろう? ゴブリン程度なら、暴発する程の魔素は無い」

「へー」

「それに、直接触って危険なのは魔力の制御が未熟な者ぐらいだ。大人になれば自然と身に付いているから、問題はない」

「左様ですか」

「あぁ。だからショータは十分、気を付けるように」

「……それは『お前は魔力の制御が未熟だからな』、と言ってるように聞こえるんだけど?」

「事実であろう?」

「まぁ確かにな」


 所詮、魔法を扱い始めて数週間レベルの俺だ。

 シャーロットにしてみれば、俺なんて赤子も同然なんだろう。

 だがな……元魔王様に比べれば、誰だって似たり寄ったりな気がするぞ。


「シャーロット嬢ちゃんの話を聞いた感じじゃ、俺でも敵わないだろうからな。そんなヤバい人形が暴れ出す前に魔石を抜き取るとは、我が娘ながらなかなかの先見の明だな」

「ですよね。マロンちゃんが抜き取ってなかったらと思うとゾッとしますよ」


 いつ目覚めるかも分からない様な人形が、忘れ物として残されてたんだからな。

 下手すりゃ夜中とかに動き出して、そのまま一家惨殺になってたかもしれないのだ。

 呪いの人形どころの騒ぎじゃなかっただろう。

 ま、今となっては呪いの人形どころか、幸運の人形と言ってもいい位だけどな。


 マロンちゃんが大事にしていた人形だったからこそ、俺だって飛空艇の事を晒す気になったわけだし。

 マデリーネさんの命が関わっていた以上、遅かれ早かれ晒してはいただろうけど、マロンちゃんの覚悟を見せてもらったからこそ、即決する気になったのだから。


 あの時グダグダしていたら、あの双子の赤子たちは生まれてこなかった未来や、あるいはもっと最悪な未来だってあったのだ。

 そんな未来を回避し、母親と赤ん坊達を守ったのだから、幸運の人形どころか守り神と呼んでも過言では無かろう。

 いや、子供を守ったのだから子守り神か?


「ショータさん。勝手に神様作ったらダメっスよ?」

「だよな」

某塩商人「え? あの人形、そんなに危ない代物だったの? やっべぇ……夜な夜な動き出して、宿泊客を怖がらせるぐらいに考えてた……娘GJ」

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