第61話 ミスリル事情
シャッターの材質がミスリルだっていうけど、ミスリルってあのミスリル? ファンタジーでは定番のヤツ。困惑している俺をよそに、シャッターから手を放したシャーロットは、骨組み部分にも手を当てている。
「これもか……」
どうやら骨組みまでミスリルらしい。けど、一人で納得してないで、俺にも教えてほしいなぁ。なんて不貞腐れてたら、俺の様子に気が付き戻ってきてくれた。
「すまないな、ちょっと我を忘れてたようだ」
「で、そのミスリルってのは何なんだ? その様子からすると、かなり珍しい金属のようだけど」
「あぁそうだったな。ミスリルというのはだな……」
ふんふん、ミスリルってのは俺の認識とそう変わらないようだ。というか、ゴブリンといいミスリルといい、なぜ元の世界のファンタジーがこの世界と似通ってるのだろう? このスキルをくれた受付の人に聞けば答えてくれたのかな? 今となっては無理な話だけどね。
で、ミスリルの話だ。コイツは軽くて頑丈なうえ魔法との親和性も高い金属の一つらしい。ただし天然の鉱脈ってのは発見されて無く、ダンジョンぐらいでしか入手できないそうだ。
その特性から主な用途は武器防具、特に盾や鎧に使われることが多い。尤も総ミスリル製の武具なんて滅多になく、それこそ国宝とまでは行かないが、博物館で陳列されるクラスになるとか。
「博物館なんてあるんだ……」
「そっちに興味を持つか……まぁいい。でな……」
普通はメッキの様に薄く延ばしてコーティングしてる。魔法への親和性が高いから、魔法で加工してるそうだ。流石ファンタジー。
またその見た目が銀によく似ているから、魔銀とも呼ばれているとか。
「私の装備もミスリル製だぞ」
「へぇー、でもシャッターの色とちょっと違うくないか? シャッターが白銀ならその鎧はいぶし銀って感じだし」
「それは二つの意味で目立たないようにするためだな。一つはキラキラ光っていると敵に見つかりやすいからな。戦争じゃ逆に目立つためにキラキラする輩もいたが、冒険者をやるなら目立たない方がよかろう?」
「まぁ確かにな」
不意打ちが主な攻撃手段な俺だから、目立たないことは重要だと納得する。一つ目は分かったけど、じゃあ二つ目は?
「あとはその……なんというか盗難対策というかだな。以前はこれも白銀だったんだが、その鎧を付けていたら、変な男どもがやたらと言い寄ってきてな。そいつらがこの鎧のことを褒めてるから、これは狙われてるなと」
それは鎧を褒めるフリしたナンパじゃないのかな? まぁ確かに人目に付きやすい、しかも高そうな鎧を着てたら盗難というか強盗に会いそうだよね。
「話がそれたな。だがミスリルの価値が少しは分かっただろう?」
「要はこの船が、貴重な金属をふんだんに使った、世界に二つとない飛空艇だってことだな」
「ああ、そういうことだ。ちなみに他の飛空艇は木造で、金属製の飛空艇自体無いってことも覚えておくといい」
「一艘もないの?」
「ないな。だから私もこの船を見た時に飛空艇とは思えなかった」
うーん、こうなってくると普通の飛空艇が欲しかったよな。大っぴらに使えないなんて不便すぎる。受付の人も、もうちょっと気を利かせてほしかったよ。
「でも一見して飛空艇と判らなかったってことは、ひっそり使ってる分には問題なさそう?」
「む、それもそうか。私だってショータに説明されて飛空艇だと思えたのだしな。多少見られたても、乗り降りや、召喚してる所を見られなければ大丈夫かもしれないな」
確かに彼女に見つかったのも召喚してた時だったからな。次からは周りに注意して召喚しよう。だがそうすると飛空艇に乗るときは人目の付かないところまで移動する必要があるってことか。面倒だけど仕方ないか。
それに自分の身を守るために強くなるってことは大切だが、彼女の話じゃ下手をすれば国を相手取るかもしれない。
国相手に個人の力がどの程度通じるのか……昔の魔王とやらは山一つ作ったというが、それでも国家相手じゃ蟷螂の斧ってやつだろう。
いっそのこと国に売り込むか? いや、ダメだな。馬車馬よりもひどい扱いになる予感しかしない。一番の理想は水戸のご老公みたいに、国からの後ろ盾をもらって自由に生きることだけど、印籠もらえる当てがない。まぁひっそりと暮らすしかないか。たまにドライブ感覚で飛空艇に乗るのもいいかもしれない。
「試しに聞いてみるけど、シャーロットは国の後ろ盾がもらえそうな方法って思いつく?」
「はぁ? 国の後ろ盾? あぁそういうことか。ふーむ……すまないが、今の私では力になれそうにないな」
「ん? 今の? まぁ聞いてみただけだから、気にしないでくれ。飛空艇はなるべくコッソリと使うことにするよ。まだ死にたくもないし」
「そうだな。私も風呂は一日置きに使うとしよう」
「……そうだな」
こいつ毎日入る気だったのか。まぁ風呂人だから仕方ないか。




