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第605話 発症の原因

「はー、我が家にもお風呂はありますが、こちらのお風呂は広くて開放感が気持ちいいですね」


 ダンデライオン号が誇る大浴場は、誰だろうとその魅力に取りつかせる機能でもあるのだろうか。

 ふとそんな事を考えてしまう。

 いや正しくは、そんな事を考えていないと、平常心を維持できないというべきか。


 今いる場所は当然の事だが大浴場。

 入浴しているメンバーは、俺、シャーロット、そしてセーレさん。

 そう、セーレさんも一緒に入っているのである。


 手術後の経過観察等はあったが、その辺は助手兼使用人の人達に任せてあり、セーレさん本人は割とフリーだったのも幸いした。

 そこでシャーロットが、急に押しかけたお詫びと労い代わりとして、大浴場に誘ったのだ。


 もちろん、大浴場に自由に入れる権利を持つシャーロットさんといえど、俺がバックドアを呼び出さなくては、それもままならない。

 そして二人との混浴のチャンスを俺が諦める筈もない。


 かくして俺、シャーロット、セーレさんの混浴シーンとなったわけである。

 あるいは俺が無理矢理紛れ込んだとも言う。


 いや、だってクイーンスライム様との混浴だよ?

 ちゃんと本体……もといセーレさんにも一緒に入っていいか聞いてみたら、「いいわよー」と軽い感じでOKも貰えた訳だし、そんなチャンスを逃す理由なんか、どこにもないよな?


 ただ俺はクイーンスライム様を舐めていた。

 これまでシャーロットの褐色スライムさんにシュリのロケットさんと、強大なスライムさんと対峙してきた俺だ。

 いかにクイーンスライム様といえど、平常心を保つ事など容易いと思っていたのだ。


 無駄だった。

 クイーンスライム様がお湯に浮く光景を見せられて、平常心を保ちきれなかった。

 褐色スライムさんやロケットさんがお湯に浮いている姿も見ているのに、だ。

 ひょっとしたら大浴場に人を虜にする隠し機能みたいなのがあるように、クイーンスライム様にも人を誘う能力でもあるのかもしれない。


 結果、初めの頃の様にお湯の壁が出来たという訳である。

 クイーンスライム様のご尊顔を賜る事が出来なくなったのは残念だが、同じ風呂に入っていられるのだから、それで満足である。


「ショータの風呂は開放感だけじゃ無いぞ。この風呂に入るようになってから、体の調子がかなりいいのだ」

「でしょうねー。これだけの魔素が含まれたお湯なんて、王城の地下にだってありませんよ」


 王城の地下にはダンジョンがある。

 これ、魔王国の常識な。

 魔王国が食糧難になったとき、地下ダンジョンのモンスターで乗り切った過去があるので、誰でも知っている事らしい。


「はー……こんな湯に浸かっていれば、先覚症にだってなるわよねー」

「そうか……アイナ婆さんの話を聞いて気になってたのだが、やはりこの湯が原因だったか……」

「は? 先覚症の原因がこの大浴場にあったって、どういう事だ?」

「ショータ……どうやらここの風呂は、妊婦にとってはあまり良くない効果があるようだ」


 前にも言ったが、胎内にいる間は母子ともに魔力パターンってのは同じなのが一般的だ。

 ところが先覚症が発症した例の一つとして、胎児が高濃度の魔素に晒されてた結果、その魔素を取り込み自身の魔力を作り始めたってパターンがある。

 今回のマデリーネさんが正にそのパターンであり、高濃度の魔素ってのがこのお湯だって事だ。


 そういや前の晩、マデリーネさんもこの風呂に入ったっけか。

 介添えしていたシャーロットの話じゃ結構長湯もしてたらしいし、前回は入らなかったジェットバスやサウナなんかも堪能していたそうだ。


 浴槽のお湯にしろサウナにしろ、元がダンジョン化したダンデライオン号によるものであれば、魔素はたっぷり含まれている。

 そんな魔素たっぷりの空間に長い事いたせいで、先覚症が発症したのではないか?

 そう、セーレさんは推察してくれた。


 え? って事は、今回の騒動の原因って、この風呂が原因って事?

 先覚症が無ければ、双子の逆子だろうとアイナ婆さんが対処出来たらしいし。


 なんでも逆子を治す方法はあるらしいんだけど、それはあくまでも普通の状態の時のみなんだとか。

 だから先覚症と逆子が一緒になった場合ってのは、もう外科的対処法ぐらいしか残されていない。

 そういった意味では、セーレさんに頼るとアッサリ決めたアイナ婆さんの判断は正しかったともいえる。


 もっとも、それは飛空艇……いやダンデライオン号のような、とんでもない速度で移動できたからこそ間に合ったそうだ。

 これがあと数時間も経っていれば、母子どちらか、あるいはその両方ともが、助からなかった可能性だってあったらしい。


 発症した原因はダンデライオン号なのかもしれないが、その命を助けたのもダンデライオン号。

 だったら差し引きはゼロ……って訳にはいかないよなぁ。

 後でガロンさんとマデリーネさんに、ちゃんと謝っておこう。


 それと妊婦の大浴場の利用禁止もだな。

 そんな危ない病気だかが発症すると分かっているなら、対策は当然のことだろう。

 俺の周辺に、マデリーネさん以外の妊婦は現在いないからいいけど、将来的には分からないからな。


 まぁ魔素がたっぷり含まれているお湯がマズいのであって、風呂そのものがダメってワケでもないからな。

 そこのところは間違えないようにしておこう。

 でないと風呂人(ふろんちゅ)が妊婦になった場合、その心労は計り知れないだろうしな。

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