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第535話 ただ馬車を積み込む。それだけの話。

「よし、この辺でいいか。シャーロット、周りの様子は?」

「こんな日没に出歩く酔狂なヤツなど居るはずもなかろう? ……我々以外はな」


 シャーロットの声に若干呆れが含まれているのは気にしない。

 どうやら馬車にバックドア呼び出しで、そこで寝ればいい事に気付かれたようだ。

 俺も出発直前に気付いたけど、モッさんともお別れした以上、今更戻るのも気まずい感じだったんで黙ってたのだ。


「……よ、夜の空を飛ぶのも、中々無い経験だろ?」

「……まぁそうだな」


 この世界には、管制塔も無ければレーダーすらない。

 暗闇を見通す魔法やスキルはあっても、所詮は個人レベル。

 月明かりだけが頼り夜に飛空艇を飛ばすなど、自殺行為にも等しい程である。

 こんな闇の中を飛ぶ飛行体など、そうそう在りはしないのだ。


 なお魔物、特にドラゴン類に関しては普通に飛んでいるので注意が必要らしい。

 そうそうが普通に存在するのも、またこの世界の常識でもあるようだ。


「とはいえ、あまり見られたいものでもないしな。サッサと乗り換えるとするか」

「こっちは準備OKっスよ」


 御者台にはシュリがスタンバイ済み。

 俺達は馬車の乗り込みのサポートの為、下車している。


「えーオホン、ではでは飛空艇を呼び出したいと思います」

「前置きはいいから、さっさと呼び出せ」

(……情緒ってもんがねぇなぁ)

「なにか言ったか?」

「いえ、何にも」


 地獄耳め。

 そこは聞こえてもスルーしろよ。


 だが、こんな所でもたついても時間の無駄か。

 今のところ周りに人影は無いとはいえ、急ぎの用事とかで、日が落ちてから出発するヤツ等がいないとも限らない。

 俺達という前例もあるしな。


「飛空艇召喚!!」


 こうして飛空艇本体を呼び出すのも数日振りである。

 最後に呼び出したのは……調査依頼の時以来になるのか。

 月明かりに照らされ銀色に輝く船体を見上げながら、そんな事を考える。


「おーい、ショータさんも手伝って欲しいッスよー」

「おっとスマン」


 ボーっとしてたら怒られたし。

 下層にある搬入口は、内側からしか開けられないからな。

 エレベーターで船内に入ると、前面の搬入口に向かう。


「オーライ、オーライ……ハイ、オッケー。馬車を固定するぞ」


 カーゴルームにある固定用フックで、馬車を固定していく。

 この馬車、使わない時はココに保管しておく予定だ。

 ガロンさんの宿でも置かせて貰えそうだが、まぁここならジャッキもあるしメンテナンスも楽だろう。


「よーしよし。ハマルもご苦労様ッスよー」


 シュリがハマルを労わっているが、この白トカゲが働いたのは、村の宿からここまでのわずかな距離だけだ。

 来た時の道のりを思えば、こんな距離など無いにも等しかろう。


「分かってないッスねー。どんな些細な事だろうと、ちゃんとやった仕事はキチンと褒めるのが良い上司ってモンッスよ」

「人生経験十七年程度の小娘に、良い上司が分かるもんかね」

「分かるッスよー。あたしが勇者してた時の上司なんか、命令だけでちっとも褒めてくれなかったッスからねー」


 勇者とはいえ、所詮は国に使われる存在ってことか。

 命懸けな仕事なうえ拒否権も碌に無かったんじゃ、勇者と書いて社畜と読みそうである。

 いや、会社の家畜で社畜なら、国家の家畜で国畜になるのか?


「お前も苦労したんだな」

「まぁ大変だったのは勇者になる前の時の方っスけどねー」


 勇者の前っていうと、チートスキルを活かして薬を作ってた頃のことか。


「まぁ訳の分からない怪しげな薬を持って来ては、『コレと同じものを作れ。期限は明日まで』とかざらだったッスよ」

「それはまた……」

「あの頃は右も左も分かんなかったッスからねぇ。寝る間も惜しんで、一生懸命作って。で、出来た薬は出来た薬で、ふんだくるように持ってかれたッス……」

「……」

「あー、あの好色大臣。あんな精力剤、どう考えても自分用だったッス。分かってれば、一生おっ勃ったままのヤツにしてたのに」


 黒い……黒いよシュリさん。

 いつもの「~ッス」が無くなってるッスよ。


「おっと、過去の事は綺麗サッパリ忘れて、これからは魔法少女シュリちゃんとして生きてくと決めたんだったッス」

「その設定、まだ残ってたのか……」

「当然ッス。女の子は誰だって魔法少女に憧れてるッス」

「左様ですか」


 ウチの姉はどうだったかな。

 古い記憶を辿れば、何か変なステッキを振り回してたような覚えもある。

 もっとも振り回す時は大抵、俺の頭を小突く時だったけどな。

 アレは魔法少女のステッキというより、ただの鈍器だった。


 ……うん。ウチの姉は魔法少女(物理のみ)だな。

 アレだ。プリなんとかいう、変身少女モノの割に結構殴る蹴るが多い、あっち系を目指してたんだな。


 チラッとシュリを見る。

 彼女が目指す魔法少女とやらは、今のところ魔法を使うタダの魔女だ。

 古い言い方をすれば、魔女っ子だろう。

 プリなんとかの前番組だった王者魔女だかがそんな方面だったっけ。

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