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第52話 寝室

初めて評価をいただきました。またブックマークしてくださってる方々も含めて、ありがとうございました。

 ビール一杯で酔っ払ったシャーロットに肩を貸し、上層左舷後部にある寝室まで苦労しつつもなんとか移動する。

 やはり人一人を肩を貸してるとはいえ移動させるには時間がかかってしまうな。決して移動する間、彼女の褐色スライムさんがムニョっと当たってるからといって、わざとゆっくり移動したわけではない。ああ、ないとも。

 ましてや、いい匂いだなぁなどと堪能してたわけでもない。そもそも同じシャンプー使ってるしな。でもほのかに香る花の匂いはなんだろうか? というか彼女はいつの間に風呂に入ったのだろう?


 至福の時間は儚くも短い。遠回りしたかったけど狭い船内だ。すぐについてしまう。


『MP3を消費し「区画:寝室」を開放しますか? MP9/18』


 食事の間にちょっとだけ回復したようだ。ムニョっとYESを押す。褐色スライムさんの感触を思い出してしまうのは、脇に当たっているせいなのだろうか。


 ドアを開け中に入ってまず目についたのは、やはりベッドだ。流石に天蓋までは付いてなかったが、結構デカい。頭が船尾側になるように置いてあった。

 一人暮らしを始めた時、ベッドを買うためにニ〇リに行ったけど、その時見たクイーンサイズよりもデカいかもしれない。クイーンの上だからキングサイズか。


 掛け布団も触った感じ、羽毛布団のようだ。キングサイズ用のこれまたデカい掛け布団だ。けど全体の重さじゃ、下手をするとアパートで使ってた掛け布団より軽いかもしれない。

 ただなぁ、枕がなぁ。フカフカそうな羽毛の枕があるんだけど、俺はソバ殻派なんだ。昨日泊まった宿みたいに硬めの枕の方が好きなんだよなぁ。


 次に目が行くのが奥の窓っていうかガラス扉だ。今まであった丸窓ではなく、住宅にあるような天井から床までガラス張りの扉になっている。そう扉だ。

 ハメ殺しではなく、ちゃんと外に出られる。外にはベランダまであるようだ。ここで布団が干せるだろう。夜なので外の景色は真っ暗だが、日中ならさぞかし絶景が広がることだろう。


 あとは小さめのローテーブルとソファーが窓際に置いてあった。この辺もホテルっぽいよな。あと何故かミニ冷蔵庫まであるし。中身は何も入ってなかったけどね。ホテルっぽいなら、缶ビールでも入れとけよ。


 とりあえずシャーロットをベッドに放り込み、右壁(船首側)のクローゼットを探してみる。毛布にタオルケット、替えのシーツ……お、あったあった。ソバ殻、低反発、超フカフカ、抱き枕、何種類か枕が出てきたが、こんなに使わないよなぁ。

 超フカフカの枕も気になったけど、ソバ殻の枕を抱えてベッドに戻る。


 戻ればシャーロットはすでにベッドのど真ん中で丸くなってた。いつの間にかパジャマっぽい服に着替えてるし。

 いつの間にかっていうか、俺が枕を探してる間か……いや、何とも思ってないよ? 振り向けば絶景が見れたのにとか思ってもいないよ? 第一ソレ以上の、さっき見たし。


 羽毛の枕を抱え幸せそうに寝てたので、抱き枕にすり替えてやる。羽毛の枕は彼女の頭の下に入れてやった。ってところで俺の寝場所を占領されていることに気が付く。さてどうしようか。


 まぁここまで来て彼女をベッドから叩き出すのは論外だろう。渋々だが、このベッドは彼女に譲るとしよう。それを踏まえて恒例の三択タイムだ。


 A案:俺のベッドだ。一緒に寝る。

 B案:俺は紳士だ。一昨日泊まった居室203で寝る。

 C案:……あとなんかあったっけ? ル〇ンダイブ?


 まぁ無難にB案だな。窓のカーテンを閉め、真っ暗にすると何も見えないだろうから、ほのかに明るい程度まで照明を落とす。これはドア付近とベッド付近にスイッチがあった。

 踵を返し部屋から出ようとしたところで、声がかかる。


「その……来ないのか?」

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