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第512話 見張りを終えて

「色々しゃべっちゃったみたいっスけど、大丈夫だったっスか?」

「んー、まぁタマキの事も知ってたみたいだし、大丈夫なんじゃないかな」


 大浴場へ向かう道すがら、シュリとそんな会話をする。


 あの後、モッさんが狼に丸かじりされるようなイベントも起きず、つつがなく次の交代要員であるシャーロットとベルのデッカイコンビへとバトンを渡すことが出来た。

 なお、モッさんは引き続き見張り番をするそうだ。

 結界具の効果も確認できてるんだし、そのまま寝ててもいいと思うんだけどな。

 まぁその辺は個人の自由だと思うことにしよう。


「タマキって、もしかしてガロンさんのタマゴノキの事っスか?」

「ん? その辺は話してなかったか?」

「大雑把な事情は来る途中に聞いたッスけど、名前の事までは教えてもらわなかったっスね」

「そうか。タマゴノキを略してタマキで、命名はマロンちゃんだ」

「安直な気がするっスけど……」


 そう言って俺を見るシュリ。

 俺の「タマゴノキだからタマコ」とどっちがマシかとか思ってんだろ?

 そんな事、オレ自身が百も承知なんだよ。


「ま、あたしも人の事言えないっスけどね」

「まぁそうだな」

「あ、やっぱりそう思ってたっスね。ヒドイッス」


 誘導尋問かよ。

 それにお前が連れてるハイドレイクのハマルの由来だって、穴やドアにはまるから「ハマル」にしたんだろうが。

 ネーミングセンスじゃ俺もお前も似たり寄ったりだろ。


「ところで……どこまで付いてくるつもりっスか?」

「どこまでって………そりゃあ最後まで?」

「……偶には一人で入ろうかなとかは……」

「思わないな」

「そうっスか……」

「まぁどうしても一人で入りたいというなら諦めてもいいが――」

「ホントっスか!?」

「そんなに喜ばれると、なにか交換条件を出したくなるな」

「えー、そこは気前よく行くっスよー」

「いや、ダメだ。あくまで俺の風呂だからな。そんな容易く一人風呂を堪能できると思うなよ?」

「ブーブー。シャーロットさんには気前よく貸してるくせにー」

「ヤツとは色々あったんだよ……色々とな」


 フッと遠い目をしてみる。

 そう、色々あって今の状態に落ち着いたのだ。


「どうせセクハラしまくった代償に決まってるっス」

「そこは気付いても黙ってて欲しかったな。……事実だけど」

「うーん……あたしもセクハラされないとダメっスかね」


 そう言ってロケットさんを強調するかのように腕を組むシュリ。

 もしかして一揉みさせてもらえるのだろうか?

 JKなりそこないのロケットさんを揉みしだく代わりに、大浴場を好きなだけ使わせる。

 向こうの世界じゃ絶対に訴えられるような案件だな。


 とはいえ、「はい、その通りです」と揉みしだく訳にもいかない。

 人目は無いとはいえ、ここは廊下。

 さすがの俺でもその程度の分別はある。

 揉むとしても大浴場に移動した後、心行くまで揉みしだくべきであろう。


「あれ? そうなるとやっぱり一人風呂は無理っぽくないか?」

「一応聞いてみるっスけど、何のことっスか?」

「いや、だから一揉みする代わりに大浴場を独り占めできる話だろ?」

「ショータさん……いえ翔太君。貴方はどこで道を間違えてしまったっスか?」

「間違える? 違うな。道なんてものは俺の後ろに出来るもんだろ」

「それは作っちゃいけない道だと思うっス」

「道なき道に道筋を作るのが人の道だろ」

「進むべき道を外したら、ただの外道っス」


 外道は言い過ぎじゃないかな?

 せめて道化ぐらいにしてもらえると嬉しいんだが。

 それもピエロではなくクラウンの方だとなおいい。


「ハァー。ショータさんの混浴好きは諦めるしか無さそうっス」

「そうだな。人間、諦めが肝心だ」

「それならショータさんが混浴を諦めれば、万事解決だと思うっス」


 そこはあれだ。

 某忍者マンガの台詞を使わせてもらおう。


「シュリ……俺が諦めるのを諦め――」

「る事を期待するのは諦めるッスよ」


 ん? どういうことだってばよ。

 諦めるのを諦めろ、で相手に諦めさせる。

 諦めるのを諦める(シュリに諦めさせる)事を期待するのを諦める、は……俺が諦めろって事か?


「で、ではそれを諦め――」

「イヤっス」


 バッサリだな、おい。

 名セリフも真っ青なバッサリ具合だ。

 あまりのバッサリ具合に、上手い返しも思いつかなかったほどだ。


「じゃ、お先っス」


 俺が上手い返しを考えているスキにシュリが湯浴み着に着替え、大浴場へと入っていく。

 くっ、出遅れたか。

 着替えるのは俺の方が圧倒的に有利な筈だったのに、なんたる不覚!

 とはいえ混浴自体は諦めきれないので、渋々ながらもシュリの後に続く。


 大浴場には既にお湯が張られている。

 誰がやったかとかは気にしない。

 せいぜい予想通りだな、程度だ。


 掛け湯してから体を洗い、湯船に浸かる。


「「ふぅー」」


 別に熱くも無い筈なのだが、ついついそんな息が漏れてしまう。

 まぁ風呂という究極のリラックス空間に身を委ねれば、気が抜けるのも道理か。


「明日はモッさんの知り合いのところっスか」

「あぁ。そこから更に苗を探すとなるから、村に戻れるのは早くてもあさって以降だな」

「寝床はともかく、食事が不安っスね」

「モッさんがいると、こっちの厨房が使えないからなぁ」

「まさかイモと丸焼きのみとは思わなかったっス」

「だな」


 まぁ明日の朝食はアレク君が準備してくれるだろうからいいとしても、昼と晩が怪しいんだよな。


「モッさんにバックドアの事だけでも教えるか」

「ショータさんがそうしたいなら止めはしないっスけど……」


 まぁバックドアまでならガロンさん達にもバラしてるしな。

 どうしても無理っぽいときには諦めるとしよう。


「そっちは割と簡単に諦めるんスね」

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