表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
510/1407

第510話 モッさんの推察

「そうか……そうと決まれば話は簡単だ。明日、夜明けと共にアイツの処へ向かうぞ」

「分かった。ところで、そのモッさんの知り合いとやらの住処へはどれぐらいかかるんだ?」

「上手くすれば半日程度でつくはずだが、オメェら次第じゃもう少しかかるかもしれん」

「了解。それともう一つ確認していいか?」

「あぁ、構わないぜ」

「その知り合いさんは、ひょっとして森の中に住んでいるのか?」


 モッさんは村へ戻るかこのまま苗を探すか、どっちがいいか聞いてきた。

 もし村にその知り合いがいるなら、村に戻る一択だった筈だ。

 となるとその人物は村には住んでおらず、おそらく森の中に生活の拠点を置いているのではないか?

 そんな疑問をモッさんにぶつけてみる。


「……まぁそんなところだな」

「森の隠者って奴か……世捨て人な性格なのかな」

「世捨て人っつーか……まぁ会えばわかるか」


 何だろう? もしかして世捨て人らしからぬヒャッハーな性格なのか?

 モヒカントゲ付き肩パットで、火炎放射器を片手にカスターニエを丸焼きにしている現場を目撃してしまったら、キチンと挨拶できるか、ちょっと自信ないな。


 あるいはパリピな人で毎晩夜通しパーティーしまくってるとか?

 知り合いさんの住居にミラーボールとかあったらどうしよう?

 つーかそんな人物が森の奥で生活できるのか?


 いや、森の奥の一軒家なら騒ぎ放題だ。

 どんなに騒ごうとご近所迷惑にはなり得ない。

 そう考えると合理的といえるのか?


「ま、そう言う事だから、明日の行程はしんどいぞ? その為にもしっかり休んどけ」

「へーい、って俺とシュリはこれから見張り番なんだけど?」

「ん? そうか。なら、それが終わったら、だな」


 そう言うモッさんは、このまま夜通し見張り番するらしい。

 俺達もいるし魔物除けの魔道具もあるから、モッさんも交代で寝てもいい筈なんだけどな。

 というか、その為に一緒に行動してたんじゃなかったか?


 だが本人が「森で野営をするときはいつもこうしている」と言い張られてしまえば、俺達は「左様ですか」と頷くしかない。

 まぁ翌日、寝不足で困るのはモッさん本人なワケだし、どうでもいいか。


 シャーロット達は天幕に消えていった。

 正確には天幕からも消えている、と言った方が正しいか。

 あの中にはバックドアを出したままなので、十中八九――これは十の内八か九という意味では無く、十の内八十九という意味、つまり890%の確率である――そっちに消えているだろう。


 残されたのは見張り番の俺とシュリ、そしてモッさんの三人である。

 正直、俺とシュリがどの程度戦力になるかは微妙なところだ。

 ぜひともモッさんには頑張っていただきたい。





 パチパチと薪の爆ぜる音が夜の森に溶け込んでいく。

 森の闇の中からは時折なにかしらの音が鳴るが、俺達から発する音はそれだけだ。


 誰も口を開かない。

 俺もシュリも、珍しい事にモッさんも。

 誰もが焚火の火を見つめたまま、ボケーっとしている。


 一応、このままでは早々に眠くなってしまうと判断した俺は、他の二人に話しかけようとはしたのだ。

 だがモッさんとは今まで特に接点もなく、例の知り合いの事以外で話す内容はあまりない。

 だったらモッさんから話しかけてもらえればいいのだが、当のモッさんはボーっとしたまま、寝てる様な起きてる様な、そんな状態だ。


 かといってシュリと話そうにも、彼女との話題といえば元の世界の事が多くなる。

 俺とシュリの二人だけならともかく、モッさんがいるたのでその手の話題はNGとなる。

 飛空艇の事もそうだが、俺達二人が迷い人だという事も隠しておかなくてはならないからな。


 ついでに言えば彼女が勇者だったなどの過去話もNGになる。

 以前、モッさんが話題にあげていた勇者と魔王がコイツ等だよ、と言ってみたい気もするがNGである。

 まぁ言ったところで鼻で笑われるだけだろうけど。


 そんな事情もあり、かくしてこのように沈黙が支配する空間が出来上がった訳だ。

 こんなんで二時間、起きていられるのだろうか?

 ちょっと不安になって来たな。


「なぁ……オメェらがバオムヴォレの若木っつーか苗を探すのはなんでだ?」


 半分寝てるかと思ってたモッさんが、突然そんな事を聞いてきた。


「なんでって……依頼だから?」

「そうじゃねぇだろ? 俺ぁ、こんな依頼、今まで見た事も聞いたこともねぇ。って事は普通の依頼じゃねぇよな? つまり指名依頼ってことだろ?」

「……」

「いや、依頼にかこつけちゃいるが、その割にはオメェらへの自由裁量がデケェ。若木だダメなら苗って、普通は一旦戻って依頼主に判断を仰ぐような事だからな。

 それをアッサリ決断できるって事は、オメェらもその辺の事情って奴を教えられているか、あるいはオメェらが言いだしっぺって事だろ?」

「……」

「つまりはオメェらは若木だか苗の使い道を知ってるって事だ」

「……それを聞いてどうする? 情報屋らしく、他のヤツ等に高く売りつけるつもりか?」

「だから俺は情報屋じゃねぇって言ってるだろ。……まぁ好奇心ってとこかな」

「モッさんの好奇心なんかどうでもいいな」

「そうか……なら、依頼の事は諦めるとするか。代わりに『つぎき』ってヤツの事を教えてもらえれば、だけどな」

「……!? どうしてそれを?」

「内緒話ならもう少し小さい声で話すんだったな。あーそれとな、聞くともなしに聞こえてきたんだから、俺は無実だぞ?」


 モッさん、知ってるか?

 無実の罪でも投獄される時もあるんだぞ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ